2.ひとりの山小屋
第2話
ひとりの山小屋
思い出せ!
オレは病室で寝ていたはずだ。
白い光に包まれ、気を失って目が覚めたら、何故か、この小屋だった。
ここは、どこだ?
誰もいないのか?
この小屋の所有者がいるばすだ。
そして、オレは、これから、どうすれば良いのか?
そう、オレは、今朝まで病院のベッドで寝ていたはずだ。
オレが入院する羽目になったのは、あの出張が原因だった。
***
オレの名前は、蒼井隼人だ。
日本の企業で、普通のサラリーマンをしている。
営業マンだ。
先月、営業でC国のB市にある営業所に立ち寄った際、今、全世界でパンデミックを起こしている感染症に罹患したようだ。
そして、高熱のため、入院することになった。
この感染症は、日本でも有名人が罹患し、死亡した人もおり、連日、ニュースの話題になっていた。
そんな中、オレも、この数日、高温に苦しんでいたが、ついに意識を保てなくなってきたのだった。
だが、その日の朝は、いつもと違っていた。
毎日、高温と肺炎に苦しめられていたが、この日は、かなり楽に感じられた。
そして、蛍光灯の白い光が全身を覆い視覚を失うと、白い光は一層強くなり、オレは意識を失って行くのだった。
しばらくして目を覚ますと、見知らぬベッドで、オレは寝ていた。
「ここは、どこなんだ?」
周りを見渡すと、病院のベッドでなく、ログハウス風の山小屋だった。
窓の外には小屋の前から、どこかに続くであろう道が見えた。
さらに、数メートル先の少し小高い丘の上には、犬の様な四足動物がこちらを覗いていたが、暫くして、去ってしまった。
「野犬だろうか?
野犬にしては、随分と大柄だったよな。日本狼は絶滅しているから、狼ではないよな」と考えていたが、この数日間、高熱にうなされていた自身の身体が、楽なのに気がついた。
「どういうことだ?」と思わず声を出してしまった。
そうなのだ。
オレが感染症に罹患したことも、たまたま、その現地に出張したことも!
全ては理不尽なのだ。
次回の空手家は、山小屋から脱出します。
男なら不合理に抗え!