17.アニーの火炎魔法
17.アニーの火炎魔法
『しまった!』という表情のアニー。
火がくすぶっている木剣は、ファイヤーシューターの追尾機能を誘導してしまったようだ。
それを好機と捉えたオレは、間合いを詰めるが、木剣を蹴り、二人の間に位置することを怠らなかった。
アニーは、「小賢しい!」と“バースト”で木剣を吹き飛ばし、ファイヤーボールを発した。
「ファイヤーボール、五連発ッ」とアニーが叫ぶと、<シュパッ、シュパッ、シュパッ、シュパッ、シュパッ>と音を発し、ファイヤーボールが、オレを目がけて飛んできた。
しかし、アニー目がけ走り出していた蒼井が、ファイヤーボール五発を交わせるとは、誰も思っていなかった。
だが、しかし。
オレは、空手三段位である。
正拳突きの連打をファイヤーボールに打ち込んだ!
正拳突きの連打を食らうと、ファイヤーボールは削られるように霧散していった。
「このまま、アニーのところまで駆け抜ける」と、言わんばかりに走るが、次の瞬間、アニーの身体は変態していた。
なんと、全身を炎の鎧で武装していたのだ。
当然、掴むところなどありえない。
ローブや衣服が燃えないのは、耐熱魔法でも使っているのだろう。
本人も熱そうな素振りは見せていない。酸素不足でもなさそうだ。
そして、魔法使いが接近戦が出来ないというのは、このアニーには当てはまらない。
アニーのロッドから、“ファイヤー”が放たれる。
その“ファイヤー”も避けにくいよう、横に振り払うよう放たれた。
射程範囲と威力は落ちるも、避けにくい撃ち方だ。
『こいつ、戦闘馴れをしているな。だが、しかし!』
オレは、アニーの炎の鎧が護っていない部分、足首めがけて足払いを放った。
オレのブーツは、アニーの踝の上にヒットし、アニーは豪快に崩れた。
そして、アニーの眼前には蒼井の拳が止まっていた。
「そこまで!」と試験は終了を告げられた。
蒼井とアニーの目線が合い、しばらく見つめ合う形になるも、蒼井からサッと身を引いた。
***
オレは、ざわめく会場を後に、控室に戻った。
そして、先ほど作り置きしておいた緑茶を飲む。
冷めて常温になっていて、飲みやすい。
麦茶以外で冷やすなら、緑茶だろう。ほうじ茶は冷やすと、なんだかほっこり感がなくなる。
紅茶にはアイスティーというものがあるが、アイスティーにはアイスティーの作り方があり、ホットの紅茶が冷めたから、アイスティーではない。ミルクティーもしかりだ!
それ専用の入れ方があるのだ。
その点、緑茶の守備範囲は広い。高温から低温まで、バッチリとうま味を確保して、飲みやすい。
まあ、オレがそんなことを考えているうちに、休憩時間は、アッという間に過ぎ去って行くのであった。
次のオレの相手は、誰だ?