108.猛攻
108.
猛攻
ブラッドリーの右肩は、相当にダメージを受けたようだ。
なので、ここでブラッドリーは、起死回生の大技を使うつもりだ。
「地獄の炎ッ」と、言う前にリードが止めさせた。
いつの間にか、ブラッドリーの横に来ていたリードが、ブラッドリーの左手を抑えて止めさせていたのだ。
「リード様、何故?」
「味方まで焼く気か?」
ふん、つまり、「儂を焼いたら殺す」ということなのか?
魔物など、いくらでも召喚出来るのだろうから。
そして、二人の魔人が並んだこの隙に、オレたちは、一斉に二人の魔人の顔目掛けて、黒いオイルを投げつけた。
目を白黒させているのは、ヤマモトとその部下の魔法使いだ。
この薄暗いところでも、ゴーグルにサングラスを外さない。
その訳は、やはり、強烈な火炎は自分達にもダメージがあるのだ!
特に視力に!
当然、顔を真っ黒にされ、怒りの魔人である。
ブラッドリーはゴーグルを外し、舌打ちした。
「リード様ッ」
「好きにしろ」
それを聞いて、ゾッとしたのは魔物たちだ!
一斉に逃げ始めた。
この大広間に混乱が生じた!
「うぉー、喰らえ」
「喰らうのはお前だ。毒堀の敵」
オレは横綱の風魔法に乗り、
「烈風、高速上段突き!」を放った。
ブラッドリーは、右肩を負傷し右腕は使えない。
左腕は高く上げていたので、突きの連打を受け切ることが出来なかった。
ブラッドリーの喉元に高速上段突きが突き刺さる。
だが、ブラッドリーは、ふっ飛ばされだが、まだ生きている。
「しぶとい」
そこに割って入ったのが、リードだ!
サングラスを取った顔は、流石に魔人のエライさんだ。
鬼より恐ろしい顔だ。
オレは、サッと立ち退き、残心を取った。
また、それがリードを苛立だたせたようだ。
そして、リードが軽く指を弾くと、猛烈なファイヤーが襲ってきた。
だが、今回もオレは無事だ!
「耐熱ヌンチャク!」と言うと、ヌンチャクを回転させ、ファイヤーを無効化していた。
おそらく、見えていないが、ミサキの幽霊もオレを冷やしてくれているんだろう。
ビリーは耐熱ナイフの投擲で、横綱は風魔法で支援している。
毒堀のトンデモ武器が欲しいところだが、トドメはオレ一人でやるしかない。
「行くぞ! これがオレの奥の手だ。ツバメ返し」
そう!
ツバメ返しと言うと、佐々木小次郎の物干し竿と呼ばれる刀からの一撃をイメージするが、ここはヌンチャクの回転技の名前なのだ。
回転させているヌンチャクを、頭上と足元の二箇所に分散させた。
リードの足元へヒットした。
すると、リードを大きく後退させることに成功したのだ
イケるかもしれない。
あのヴィーナスの丘を火事にした火炎を出す前に始末しないと!
***
蒼井め!
このままでは、俺の十年の苦労が、水の泡だ。
そんな事を考えていたのは、ヤマモトの部下の魔法使いだ。
ヤマモト様が、ここで勝利して、「さすが英雄」という称賛を受けないと、ここまでの俺の苦労が……
しかし、ヤマモトは右肘から下は、もう無い。闘えるとは思えない。
だが、ヤマモトは「左手だけでも風魔法は使える」と、言い立ち上がった。
「お、お供します」
***
ミサキは、焦っていた。
いくら幽霊たちが、リードを捕まえやうとしても、パワー負けしてしまう。
それに、ファイヤーを放たなくても、すごい熱を発している。
「ウルフちゃんが、風で冷却していても汗が止まらないわ」
そこに、意外なハンターが突っ込んできた。
重装歩兵だ!
フルプレートのジョニー以上に、重装備なハンターだ!
ガシャンガシャン、ガシャンガシャンと、音を立て突っ込んできた。
なんだ?
ファイヤーを、まともに食らっているが、大丈夫なのか?
おい!
次回の空手家は、蒼井隼人、死す!