107.ヌンチャク
107.
ヌンチャク
このヌンチャクが、オレの対火炎魔人対策だ!
しかも、このヌンチャクは玉鋼で作られている。
玉鋼は、耐熱魔法との相性がよく、染み渡るように織り込んでいる。
「毒堀、あんたが作ってくれたこのヌンチャクで、あいつをボコす」
そして、オレはヌンチャクで“中段山構え”を取った。
ヌンチャクと言うと、後ろの脇に挟み、アチョーでも言っていると思うかもしれない。
実戦では、そんな事はしない。
中段だから、胸の前。
山構えだから、八の字に構える。
形で言えば、“慈恩”や“五十四歩”の掻き分け受けだ!
持ち方も、アクションみたいに、真ん中のつなぎ目に近いところでなく、端から指ニか三本のところを持つ。
「アハハ、そんな、棒切れで何が出来るのだ?」と、ブラッドリーが笑っている。
「その割には余裕が無さそうに見えるなッ」と、またまた、安い挑発をしてやった。だが、オレの内心は、怒りに燃えている。
世話になり放しの毒堀に、何の礼もせず、他界されてしまった。
「許すまじ」
すると、ブラッドリーの火炎がオレを包んだ。
だが、オレは何事も無かったように、火炎の中から現れた!
その時、ヌンチャクはニ倍になっていた。
オレは、両手で二本のヌンチャクを握っている。
「なに?」
「ビビってんじゃねぇ」
「横綱ッ! ビリー!」と、オレは“オレのパーティーメンバー”に声をかけた。
「ワォーン」
「ハヤト」
「何でワタシにも、声を掛けてくれないのよ」と、ミサキがボヤいている。
ミスター・タンクマンは、軽く笑っていた。
ブラッドリーの猛烈な火炎も、超耐熱魔法でコーティングしたヌンチャクを8の字で回されると、オレにはホンの僅かしか届かなかった。
勿論、オレ自身にも、防具にも耐熱魔法は掛かっている。
そして、ブラッドリーが火炎の力を収束して、ヌンチャクの防御を突破しようとすると、ヌンチャクがあらぬ方向からの攻撃が飛んでくる。
なんと、魔人の幹部が苦戦している。
しかし、オレも、いつまでもヌンチャクを回し続けられない。
ヌンチャクの端を持つということは、腕への負担は、真ん中を持つアクション持ちの数倍なのだ。
それを、察したのか、横綱とミサキが前に詰めてきた。
ミサキは、ブラッドリーの頭上から幽霊を、降下爆弾の様に突っ込ませている。。
それを逃げれない様に、横綱の鎌鼬が飛び交う。
さらに、それを避ければ、ヌンチャクが襲う。
ついに、ブラッドリーの右肩にヌンチャクが炸裂した。
「折れたか? いや、不十分か?」
その瞬間、後方で大爆発が起こった。
リードだ!
何と、ヤマモトの右腕が焼け焦げている。
まるで、魚を焼いたように、黒焦げだ。
単に黒く焦げたのではない。
中の肉も焼かれたのだ。
ニオイが違う。
炭になったのだ!
背筋に悪寒が走る。
肘から下は、人では無い黒い何かになったと言うべきだろうか。
「耐熱魔法をせずに、ここに来たんだな。バカめ」
この状況を、「マズイ」と思ったのは、オレたちだけで無かった。
ブラッドリーもだ。
「魔力最大ッ、地獄の炎で焼かれるが良い。人間ども」と、ブラッドリーが叫ぶと、最大火力で来るらしいぞ。
次回の空手家は、おい! ブラッドリーよ。お前、アホだろう?
110話の最終回まで、あと少し!