105.幻影魔人
105.
幻影魔人
オレは、横綱に先導してもらった。
もし、幻影の壁の向こうに魔人や魔物がいるなら、ニオイでわかるはずだ。
すると、横綱が反応した。
「この壁が怪しい」と、言っているように見えた。
オレは左手を上げ、目配せをした。
「敵だ」と。
皆、それぞれの武器を取り、息を潜めた。
壁に向けて、横綱が特大のトルネードを放った!
トルネードは壁をすり抜けると、大勢の悲鳴が聞こえた。
すると、幻影が消え、広間が現れた。
豕喙人にミノタウロス、それも人語を話している。
コマンダーか!
横綱のトルネードで真っ逆さまに堕ちた魔物は首が折れていた。
死ぬのは時間の問題だろう。
その奥に、この幻影を作った魔人らしき女がいた。
ハンターの一斉の攻撃だ!
弓、投擲、魔法が襲う!
それを桁外れな業火が相殺する。
ブラッドリーだ!
その後ろには、サングラスを掛けたブルース・リーのような男、リードがいた。
ついに、ボスのお出ましだ。
しかし、後ろにもリードが!
こいつはリードではない。
「幻影だ。気をつけろ!」と、オレは叫んだ。
***
ヤマモトの“元”パーティーに水魔法を使う魔法使いがいる。
この男は、Aランクになったら、元々いたパーティーを辞めたようだ。
それは、ヤマモトのパーティーの受験資格を得たからだ。
この男は、Aランクに昇格すると、すぐに辞めるつもりだったが、噂で聞いたのだ。
ヤマモトは、Aランクになってからの実績も見ていると。
だから、一年間我慢した。
そして、晴れてヤマモトのパーティーの一員になったにも関わらずだ。
なんと、ハンターになって数か月の男が、ここを仕切っているとは!
***
ラスボス魔人をボコすことしか、頭になかったオレには、後ろにこんな奴がいるとは、思いもしなかった。
幻影と火炎の攻撃が、他の思考をさせてくれる程、甘くはなかったからだ。
「幻影! 破れたり」と、オレはリードに向けて、ナイフの投擲を行った。
すると、リードでなく、小柄な女タイプの魔人が現れた。
ナイフが、喉に刺さっている。
「何故、ここに居ると分かったのだ」
「教えてやろう。お前のお友達が、盛大に火炎を放つから、影が出来るものと出来ないものが、ハッキリと見分けがついたからだ。バカめ!」
「クッ……」と言うと、幻影魔人はブラッドリーを睨みながら倒れた。
仲間を殺したブラッドリーよ!
お前、どうするんだ?
この責任を!
次回の空手家は、リード様、怒る。
リード様が、直々にハンターを狩ります。
次回もよろしくねぇ!