104.賢者たちの時代
104.
賢者たちの時代
オレたちのパーティーは、オレの知らない間に荷物持ちがいるようになった。
おかげで、楽ちんだな。
オレはかねがね疑問に思っていたことを、ミサキに聞いてみた。
幽霊使いなのだから知っているかもしれないと、思ったからだ。
「ミサキ、この世界で死んだらどうなるのだ? 死後の世界で死んだら」
「簡単よ。生の世界に戻るのよ」
なんだと!
「この世界と生の世界は表と裏。死を通して行き来しているの。だけれど、肉体は生まれ変わっても、魂は消耗していくので、やがて無くなるわ」
「魂が無くなるのか?」
「ええ、魂は消耗品なので、やがてすり切れたように無くなるわ。だから、消耗した魂は、タフな肉体には入っていないと思うわ。
それと、魂は誰が作っているかは、知らないわ」
「では、何故、この世界に魔物や魔人がいるんだ?」
「別の“生の世界”の住人よ」
「別の世界?」
「ええ、元々は、この世界は賢者たちの保養地というか休養地だったのだけど、魔人が来るようになって、まあ、言うなれば取り合いね。賢者は人間を呼び、魔人は魔物を呼び、勢力争いをしたわけ」
「それでどうなった?」
「どちらも引いたわ。だって、人間と魔物が増えすぎて保養地にならなくなったのですもの」
それを聞いて、オレは大笑いした。
「それは傑作だ」
「なので、何故、イフリートが、今、ここに来たのか。知りたいわね」
「魔人が来ているのなら、賢者側も着ていても、良いのじゃないのか?」
すると、魔物の討伐をしていたミスター・タンクマンとハンターたちとが戻ってきたようだ。
「これで、魔物は入り口からここまでいないはずだ」
「おつかれさま」
いよいよ、リートとの対決だ。
オレたちは、Sランク二人とSSランクを一人、SSランクの手下を(家来に)従えて、最後の広間に向け進行することになった。
オレ、蒼井隼人。
ドワーフで武器商人の毒堀出井。武器を売るためにハンターをしている。
ナイフ使いのビリー。
ウルフの横綱。
それに、幽霊使いのミサキ。Sランクのハンターだ。
タンク業界のカリスマ、ミスター・タンクマン。
おまけで入れてやった、西の英雄ことヤマモト。SSランクのハンターだ。
そのヤマモトの手下のAランクハンター。
魔法使いと剣士にナイフ使い、合計5人が付いてくるようだ。
その他もろもろの地元のハンターたちは、ここで留守番をしてもらう。
兵站の衛生兵にもここに居てもらう。
もし勝っても、手当が受けれないといけないからな。
最後の広間は、リードとブラッドリーはいるだろうが、他の戦力はいるのだろうか?
まあ、いたら逃げるけどな。
すると、
「おい、先から同じ道を進んでいないか?」と、ヤマモトが叫んだ。
しまった!
魔人との決戦の事を考えていたら、奴らの罠に既にはまっていたようだ。
そうなのだ。
律儀に広間で待たなくとも、奴らから仕掛けてくることも、まだ、魔人やコマンダーたちがいることもあるのだ。
時田という、ラスボスの前のナンバーツーの強敵を倒したので、次はラスボス戦と決めつけていたのだ。
「誰か、解決策はあるか?」と、聞いてみたが、誰も首を横に振るだけだった。
「ミサキ、これはどういう魔法かわかるか?」
「おそらく、幻影魔法だと思うわ。別の道があるのに壁と認識して、誘導したのでしょう」
「では、どこが道と壁の幻惑をしているのかは、わかるのか?」
「ええ、幻影は物理ではないので、叩けば素通りするわ。なので、すべての壁を叩きながら、進むしかないわ」
ハンターたちから嘆息が漏れる。
そりゃそうだ。叩くべき壁はどれだけあるんだ。
「そして、その幻影の向こうには敵がいるでしょうね」
「なら、横綱! お前の出番だ」
「ワォーン」
***
アニーは地上の医療施設に運ばれた。
アニーが医療施設嫌いなのは言うまでもない。
声は出せないが、顔が引きつっている。
危うく、妹と二人、ゾンビ実験の被検体にさせられそうになった過去を思い出したからだ。
あの診療所を抜け出せて、良かったのである。
しかし、あの親子が作っていたゾンビが、この死後世界に来たばかりのハヤトを襲ったゾンビだとは、誰も知らない。
いや、ひょっとしたら、ウルフの横綱の本体は知っていたかもしれないが。
次回の空手家は、幻影魔人を倒すぞ!
最終回まで、あと少し。
最後まで、よろしくねぇ!