103.実は!
103.
実は!
実は、もう人類に打つ手なしだ!
人類最強の男の一人、ヤマモトが魔人に歯が立たなかったのだ。
もう、皆殺しだろうが、仕方が無いというものだ。
英雄のヤマモトの『必殺技の超電磁な竜巻き』の拘束が魔人の気合一発ではじけ飛んだのだから、誰が何をしてもダメだろう。
「オレたちはよくやった」
「そうじゃのぉ」
「うん、魔人もコマンダーたちも倒したしね」
「帰ろ!」
「帰ろうぜ」
「帰って寝たいわ」
と、オレたちは広間から撤収することにした。
「おい、お前ら、まだ、英雄様は闘っているのだぞ」と、ヤマモトのパーティーメンバーの下働きが大きな声で、オレたちを呼び止めた。
「お前、バカか。時間の問題だろうが!」
「そうじゃ、お前ら三下が英雄に変わって勝てるのか?」
まあ、三下とよばれているハンターは、実はオレたちCランクより上のAランクのハンターなんだけどな。
しかし、英雄パーティーは、遊撃手の女兵士が殺され、タンクと弓手は、一瞬で気を失い。
さらに、オレが、軽装歩兵をボコしたので、もう、ヤマモト以外に一軍はいないのだ。
そして、オレたち五人が、とっとと広間から出ようとすると、一人困った人物がいた。
それは、時田だ!
おそらく、時田は、リードからオレを「早く連れてこい」と言われていたのだろう。
「アッ、蒼井隼人殿! このまま帰ってしまって良いのですか? ここにいるハンターは皆殺し。そして、このプリンスオブホワイトの街も、街道のすべての街も皆殺しになりますぞ」
なんと、先ほどまで、無敵を誇っていた、それも余裕で、SやSSハンターの相手をしていたはずの魔人:時田が焦っている。
何とも滑稽なことだ。
オレは言ってやったのだ。
「もう魔人の時代だ。英雄は、間もなく死ぬ。そうすれば、誰もお前には勝てない。おそらく、東の勇者も似たようなものだろう。お前たちの時代だ。人類は滅亡だ」と。
普通に考えたら、もう誰も手も足も出ないのだが、今は極限状態なのだ。
誰も冷静に判断が出来ない様だ。
「おい、蒼井隼人。何言ってるんだ。CランクハンターならSSランクのヤマモト様を助けるのが通りというものだろう!」と、英雄パーティーの荷物持ちが叫んでいる。
こいつは何を言っているのだ。笑うしかない。
Aランクのお前が何もできないのに、Cランクハンターのオレに何を期待しているのだ。
笑い飛ばしてやった。
しかし!
冷静な判断が出来ないのは、強者である魔人もそうであった。
「待ってもらいますぞ。蒼井殿!」と、時田がオレに向かって走り出した。
魔人の脚力による猛烈なダッシュに、荷物持ちたちは飛ばされた。
つまり、隙が出来たわけだな。
時田は、荷物持ちのハンターを飛ばしたために、左右に動きにくくなったわけだ。
この時、縮小化していた横綱が、オレの足元から一気に大きくなりトルネードを!
そして、時田に追い越される形となったヤマモトもトルネードを!
「し、しまった」
今まで全くダメージを与えることが出来なかった時田を、トルネードのサンドイッチ攻撃が襲った。
時田は、盛大に血を吐いた。
「ミサキッ!」
「分かっているわ」と言うと、ミサキは幽霊を飛ばした。
時田を拘束できるだけの幽霊などいない。だから、何十体も飛ばし、幽霊たちは手足にしがみ付いた。
その間にオレたちは、盾を背負い、横綱のトルネードで飛ばしてもらった。
まずは、ビリーがククリで攻撃、毒堀のハンマー、最後にオレの「烈風、高速上段突き」が血を吐いている時田にヒットした。
「ジェットストリーム攻撃だ!」
最後は、ミサキの幽霊が手足を引きちぎった。
「これで死ななきゃ、どうしようもないわい」と、毒堀が言うも、時田はまだ意識があった。
「無念、無念」
実は、オレは気になっていた。
「何故、時田だけ、サングラスやゴーグルをしていないのか? 火炎魔法を使わないのか?」
こいつは、イフリートとは違う魔人ではないのか?
「ふふふ、さすがあなたは面白いですね。
その通りです。私は火炎魔法は使わない魔人族。肉体を強化し、戦闘に特化した魔人。アスラの民のアモス……」と言うと、時田は人間離れした恐ろしい顔になり、息を引き取った。
「これが、本当の顔なのか」
さて、魔人も一人減ったようだ。
オレは、水筒を取り出し、緑茶を飲むことにした。
今日のお茶は、この世界の通販業者の“ドバシ ドット混む”で取り寄せた、丹波笹山の新茶だ。
安くて香りが良いので手軽に飲める緑茶だ。
すると、ヤマモトが近寄ってきた。
「もう、パーティーメンバーがいない。これでは闘えない」
なんと、荷物持ちをしているAランクの連中は眼中にないということか!?
「なので、蒼井よ……」
「パーティーメンバーがいない? そうか、では、ヤマモトよ。お前がうちに来るか? 入れてやらんでもないぞ。荷物持ちだ」と言い放つと、毒堀が盛大に笑いだした。
そして、ミサキもビリーも笑い出した。
「うちに来るなら、英雄の看板は下ろすのだな」と言うと、何故だか知らんが、ヤマモトは顔を赤くしていた。
怒っているのか?
いや、こんな実力で『英雄』を名乗っていたので、恥ずかしくなったのだろう。
そうに違いない。
次回の空手家は、賢者たちの時代です。
あと少しで最終回です。
最後まで、応援、よろしくお願いします(/・ω・)/