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第3話

「あらあら、いかにも『そんな馬鹿な⁉』って感じの、お顔をなされていますけど、まさに今現在目の前にある『この世界が、誰かが見ている夢でしかない』可能性を否定することなぞ、なんぴとであろうと、けしてできないのではありませんの?」




 ──うぐっ⁉




「……確かに、そんなこと否定のしようがないけど、可能性はあくまでも可能性に過ぎないのであって、例えば俺自身が、今すぐショゴスそのままに、自分の好きなように変身できるわけでは無いだろうが⁉」


「そりゃそうですよ、世界のすべての物質は量子でできているとはいえ、その全部が全部ショゴスそのままに、変幻自在な性質ちからを好き勝手に行使し始めたら、この世は『クトゥルフ神話』そのものになってしまうではありませんか?」


「……じゃあどうして、おまえのような軍艦擬人化少女や魔法少女やチート転生勇者は、ショゴスそのままの力を有しているんだよ?」


「もちろんそれぞれ、ショゴスとなってしまう、『切っ掛け』があったからですよ」


「切っ掛けって……」




わたくしたち軍艦擬人化少女の場合は、先程も申しましたように、海底におけるショゴスとの融合を果たした時ですし、魔法少女の場合は、まさにショゴスのあるじであられる『コズミックホラー』な方々──つまりは、『宇宙人』と契約して魔法少女となった時に、チート転生勇者の場合は、トラックにはねられたりして命を失ったあとに、女神様等と何らかの契約を結んで、異世界に転生した時こそが、該当いたしますね」




「──ちょっと、それって⁉」




「ええ、白い宇宙陰獣と契約した魔法少女が『ゾンビ』になってしまうと言う、『例のやつ』は、実のところでは『ショゴス』になっていたのであり、同じようにチート転生勇者においても、異世界転生をするとともにショゴスになったからこそ、絶大なるチートスキルを使えるようになっていたのでございます」




「……それはつまり、チート転生勇者が、実は魔法少女と同じようなものだと、言っているわけか?」


「むしろ逆です、魔法少女のほうが、転生勇者みたいなものなのですよ」


「はあ?」


「……あなたご自身がおっしゃったのではないですか? 確かにショゴスになれば、理論上魔法やチートスキル等の超常現象は実現可能となりますが、可能性はあくまでも可能性に過ぎず、例えば提督さんが今すぐ魔法少女や勇者になってしまって、魔法やチートスキルを使い放題になるなんて、ほとんど100%あり得ないでしょう?」


 うん、勇者もそうだけど、俺が魔法『少女』になるなんて、100%ご遠慮申し上げたいよな。




「よって実は、魔法少女や勇者になった途端、()()()()()()わけなのですよ。──魔法やチートスキル等が当たり前に使える、『異世界』に」




 なっ⁉


「……もしかしてそれって、魔法少女アニメの類いが、すべて『なろう系』そのままな、異世界転生作品だと、言っているわけか?」




「ですから、むしろそうで無かったら、根本的に実現不可能になってしまうのですよ。特に例の『ゾンビになっちゃう』超傑作魔法少女アニメなんて、『同じ一ヶ月を繰り返したい』とか『医者も匙を投げてしまった怪我を治したい』とか言った、どう考えても実現できっこないことを実現するには、『すでに願いが叶った異世界』に、転生させる以外は、あり得ないのですよ」




 ──うおっ⁉ た、確かに!


「多世界解釈量子論的には、あらゆる可能性の世界が実在し得るのだから、この現実世界においては絶対に実現不可能と思われることであっても、すでに実現している『別の可能性の世界』は存在し得るのであって、そこに異世界転生することさえできれば、どんな願い事だって叶えられるってわけか⁉」


「しかも先程も申したように、異世界転生とかタイムトラベルとか魔法少女化とかいった、超常現象の類いであろうとも、この現実世界のほうが夢だと言うことになってしまう、いわゆる『夢と現実の逆転現象』によって、普通に日常的に実現可能ですので、何も問題は無いのです」


「……おそらくは、ありとあらゆる創作物中で、最悪クラスの無茶ぶりとも言える、『僕と契約して魔法少女になってくれたら、どんな願いでも叶えてあげるし、「時間遡行」等のどんな固有魔法でも使えるようにしてあげるよ☆』なんてことは、異世界転生でもしなければ、実現できっこないと言うことか」


「しかもその異世界においては、魔法少女は『ゾンビ』ならぬ『ショゴス』となっているから、自分の身体を肉体強化的に変形させるのを始め、周囲のあらゆる物質を変化メタモルフォーゼさせることすらも可能だから、事実上世界そのものを改変可能なレベルの、大魔法に至るまで実行できるようになるのです」


「……ショゴスだから、自分の肉体を改造できるのはわかるけど、魔法とかはどうやって実現するんだよ?」




「実は異世界転生とともに、自分自身の意思において自由自在に、ありとあらゆる情報が集まってくるとされている、ユング心理学において高名な『集合的無意識』とアクセスして、ありとあらゆる世界のありとあらゆる存在についての情報をダウンロードできるようになるので、すでに肉体がショゴス化している時点で、特定の物質の『形態情報』を自分自身にダウンロードすれば、何にでも変化メタモルフォーゼできるようになるし、例えば我々のような軍艦擬人化少女だったら、周囲の空気に軍艦の主砲等の形態情報等をダウンロードすれば、いつでもどこでも本格的艦隊戦が可能となるし、周囲の空気に炎や氷雪の形態情報をダウンロードすれば、魔法少女等として、火炎魔法や氷雪魔法が使えるようになるって次第なんですよ」




「──それって言うなれば、自分自身や周りの物質を、ショゴスそのままに変化メタモルフォーゼさせることで、魔法等の超常現象を実現するわけか⁉」


 す、すげえ。


 ショゴスって、すげえ!


「……たかが、次の万博のシンボルマークに採用される程度の雑魚かと思っていたけど、ショゴスって、本当にすごいんだな」




「ええ、だからこそあなたは、街中に貼られている万博のPRポスターをたまたま目にしたところ、そのものすごい『狂気』に当てられることによって、『知ってはならない真実』に、目覚めてしまわれました。──もう、後戻りできませんよ?」




 ……え。


 突然の意味深なる台詞に、思わず振り向けば、提督である自分にとって忠実なるしもべであるはずの少女が、これまでに無く昏い笑みを浮かべていた。


「……ま、まさか、『知ってはならぬ秘密』を知ってしまった俺のことを、消すつもりなのか⁉」


「それこそ、まさかですよ。わたくしたち軍艦擬人化少女には、けして己の提督に危害を加えることのできない、『リミッター』が組み込まれておりますので」


「おお、そうだ、そうだったな!」




「その代わり、そちらの『海底の魔女(ヘクセンナハト)』さんのほうは、始末させていただきますけどね☆」




 へ?


「な、何でだよ? この子は俺が勝手に連れ出しただけで、何の罪も無いだろうが?」


「それでは伺いますが、どうして提督は、わたくしたちから逃げるに際して、その子を道連れにしたのですの?」


 ──うっ。


 そ、それは、




「うふふ、隠す必要なぞ無いですよ? おそらくは、これまでは普通の女の子のはずだったわたくしたち軍艦擬人化少女が、化物そのもののショゴスに見え始めたのと裏腹に、これまでは化物である『海底の魔女(ヘクセンナハト)』だったその子のことが、世にも美しい『人魚姫』にでも見え始めたのではないですか?」




「……やはり、おまえたちは、知っていたのか?」


 そうなのである。


 まさしく『クトゥルフ』そのままに、鱗と鰭だらけの『半魚人』そのものだった『海底の魔女(ヘクセンナハト)』であったが、例の『万博のシンボルマーク』を見て以来、その本性と思われる『人魚』そのままの、上半身は一糸まとわぬ美少女で、下半身は大きな魚の尾びれといった、可憐な姿に見えるようになったのだ。


「それはそうですわ、何せ彼女たちは、『わたくしたち自身』なのですから」


「え?」


 何ソレ?


 例の『劇場版』における『驚愕の事実』的に、『艦む○』と『深海○艦』とが、実は『同一個体』に過ぎず、両方の立場をぐるぐると、入れ替わり続けているだけでしかないってやつか?




「先ほど申しましたでしょう、軍艦の化身であるわたくしたちには、『リミッター』が組み込まれていると。言わばこれぞ軍艦擬人化少女の『少女』の部分なのであり、まさしくあなた方人類との『インターフェース』でもあるのですが、実はこれこそは、いわゆる『人魚姫の魂』そのものなのです」

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