表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/46

花魁になる前に、私を身請けして下さるんですか?

第7回アイリスNEOファンタジー小説用に書いた小説です(*'ω'*)

既に書き終わっているので、

コンスタントに土曜日2話、日曜日2話ずつ投稿します(^^♪

ぜひブックマークして頂けたら嬉しいです!



「あらあら、まぁまぁ···」



 この妓楼「天竺牡丹」の楼主である辰男からの言葉を聞き、自分は驚嘆した。

 自分と辰男は、座敷の上で向かい合うようにして互いに正座をしていた。


「いや、こちら側としてはだな···お前さんを手放すのは惜しい訳だが···」


 目の前にいる辰男は、藍色の着物姿で腕を組む。彼は楼主として何もおかしい所はないが―――顔が、”狸”そのものだった。


 一方、自分は人間ですよ?ちゃんとした、紛れもない人間です。


「うちの馴染みの、鬼神様と、富塚稲荷の稲荷神様が、お前さんが花魁になる前に身請けしたいってんだ。無下にできるはずもねぇ―――うちをご贔屓にしている神様達だからな」


 自分―――朝雲は、彼等の顔を思い出す。

 赤い髪の鬼神、正一郎。

 金の髪のお稲荷さん、富塚。

 彼等は幾度となく会ったことがあり、親交だってある。


「水揚げ前に身請けったぁ、すっごいことなんだぞ?―――お前さん、わかってるか?吉原や島原、そしてこの神原でもありえないことだからな」

 

 呆然としている朝雲に対し、辰男はまるで自分のことのように困った顔をしている。

 

 そう――――ここは、”特別な”遊郭。

 神様や妖が集う”神原”。

 ”贄”とも呼称される遊女達が、ありがたいことに神様のお相手をする場所だ。

 

(神様に身請け···)

 

 5歳の頃にこの「天竺牡丹」に奉納された朝雲は、ぼんやりと考える。

 身請けを申し出てきてくれたのは、2人。どちらも朝雲は馴染みがある訳だが···。


「···私は、どちらの神様に見請けされるんですか?」

「そーなんだよ!それでこっちは困り果ててんだ!どっちも馴染み深いし、店側が選ぶことはしたくねぇんだ!」

「はぁ···でもそれじゃ···困っちゃうんじゃありませんか?」

「あー!本当、お前さんは源氏名通りに「雲」みたいにふわふわした口の聞き方しかしねぇな!名付けたのは俺だがな!」

 

(んー、そんなこと言っても、これが私の性格ですしねぇ~)

 

 辰男の手前、朝雲は言わなかった。

 朝雲と源氏名を名付けられる前から、いつもほわほわとしていると、母や使用人に怒られたものだ。

 朝雲という源氏名関係なく、これが自分の性格なのだろう。


「だから朝雲!お前さんが、どちらに身請けされるか、決めてくれっ!」


 びしりと指さしをされ、朝雲は目を丸めた。


「あ、あら···?まぁまぁ···?」

「お前さんが選んだってんなら、どっちかは仕方ねぇって諦めるだろ!!うちはどっちかを選んだってことにしたくねぇ!あの神様お2人は、お前さんに惚れてやがるからな!」

 

朝雲は当惑する。

あの2人が―――?正一郎も、富塚も、姉女郎の明け里の馴染み客だが···?



(私が···選ぶ?どちらかを~···?)



 朝雲は、本気でどうして良いかわからなかった。

 生まれてこの方、自分に選択権を与えられたことがなかった。

 神原に奉納された時も、振袖新造になった時も、明け里花魁の下についたことも。

 全部―――他人が決めたレールの上に乗っかっていただけだ。


『嫌いだ』

 

 朝雲は、ある人物のことを思い出し、傷ついた。

 心臓の中にガラスの破片が入っているかのように、鋭い痛みに、眉を吊り上げる。


(どうして、あの人のことなんて···)


「お前さんが考えて、決めるんだぞ!いいなっ!」

「は、はい。···困りましたねぇ~」

「困るなっ!贅沢なんだぞっ!」


 通常、花魁になる前に新造が身請けされるなんてありえない。


(···あらあらまぁまぁ···困ったなぁ~···)


 朝雲は、身請けをしてくれる神様のことと―――ある人物のことを思い出し、本気で困り果てた。

 これまでの人生で色々あった。

 まさか花魁になる前、身請け話が出るとは思っていなかった―――あの時には、全く。


主人公・朝雲は、すごくほわほわした主人公です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ