なろう主人公
男は人生が嫌になった。
現実はつまらない。
結局は両親で人生は決定する。
家が金持ちなら、その財産で生きてはいける。
庶民の生まれでも、才能の有無によって差は出来る。
才能が無くても努力さえできれば上達するが、自分はその努力する能力すらないのだ。
日がな一日ぼんやりして過ごす。
趣味は二次元のエロ画像の収集である。
男は周囲が子供の成長に一喜一憂するなか、独身どころ女性と付き合ったこともなく、いまだ童貞であった。
商売女で経験する勇気もなく、ただ持て余した精力をエロ画像にぶつけていた。
ある日、ある絵に目を奪わる。
恐ろしい怪物に美少女が今にも襲われる瞬間であり、その美少女の顔は恐怖で歪んでいた。
男は絵の中の少女に恋をした。
絵の中に入って、怪物を倒し、彼女を救ってあげたい。
英雄的自分が大活躍し、俺に惚れた彼女だけでなく、ほかの絵にもいた少女たちも俺に恋をするのだ。
男の妄想は日が経つにつれ肥大していき、いよいよ起きている時間のほとんどが妄想の中の世界に埋没していた。
妄想世界の中に集中している間は幸福であったが、ふとした瞬間現実世界に戻る。
その時こそが男にとって地獄だった。
先ほどまでは美しい世界で美しい女たちに囲まれ、魑魅魍魎どもを蹴散らし、世の権力者たちも自分にひれ伏せていたのに、実際は汚い部屋に、ぽつんと一人でいるのである。外を出歩くものなら、気味悪がられるか、意地の悪い男どもに難癖付けられるのである。
男はいよいよ人生が嫌になった。
なぜ自分はこんな不条理な世界に生まれてきたのか。
なぜ、絵の中のような素晴らしい世界に生れ落ちなかったのか。
男は神に祈った。
何日も何日も祈り続けた。
俺を絵の中の世界に転生させたまえ。生まれ変わらせたまえと。
そして幾日か後、哀れんだ神によって、男の願いは叶えられた。
男の目の前に、七色に光る世界が広がっていた。
男は特別な能力によって、何でもできた。
化け物を一撃のもとに倒し、幾万の敵をとんでもない策略で退け、奴隷の少女を何人も飼い、まさにやりたい放題であった。
ある日はわざと能力を隠し、一緒に行動していた仲間からわざと愛想を尽かされた後、見返す。
ある時は何も知らない住民たちに、知識を見せびらかし、感謝される。
民衆は男の超人的な能力に驚愕し、恐れ、敬い、憧れた。
男はようやく幸福を手に入れた---
国立美術館の日本画担当の職員が、眉をひそめた。
その浮世絵には、物の怪と侍を踏みつけながら、裸体の女を何人もはべらせた男の顔が、あまりにも醜悪であったからだ。
(春画だとはいえ、品が無さすぎる)
職員はその浮世絵を見るのが嫌になり、いったん休憩することにした。
スマホを取り出し、エッチな絵を眺める。
数分後、何かの視線を感じてあたりを見渡す。
先ほどの浮世絵の男が、スマホのエロ画像をうらやましそうに見つめていた。




