表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は夏のインベーダー  作者: まおりん
3/9

我詰まる、ゆえに

 私は本来なら重力のことが嫌いだ。重力が存在しているせいで私はこのつまらない地球で生きていることを否が応でも体じゅうで感じさせられる。


 しかし今重力を欲している。なぜか。浮いている。私の体は浮いているのだ。ないものねだりとはよく言ったもので、重力があったら重力がないことを欲するくせに、逆に本当に重力が無くなってしまったら重力が恋しくなる。人間は面倒な生き物だ。私だけか。知らん。


 私は、洞窟の中で、体が洞窟の突起に、不可思議でミステリアスでファンタジーな感じに詰まってしまったらしい。しかも、おかしなことに、体は痛くないうえ、一緒に来たはずの仲間が突然消えたのである。


 私達は5人で名前の分からない洞窟に計画的に潜った。前に2人、後ろに二人(全員男)いる状況だった。名前の分かる洞窟とこの洞窟とでは、一つだけ決定的に異なる所があった。暗いし、狭いのは他の洞窟とは全く異なるのだが、ここは空気がおかしかった。別に、私がしょうもないギャグを連発したせいではない。別にそれはどこでもやっている。


 空気の化学的物理的質感が変なのである。目に見える空気は、真夏のコンクリートの上のようにゆらゆら揺らめき、淀んでいるのであるが、温度は高くはないのである。また、今までの他の洞窟のように冷たくなく、自宅で残業がはかどっている時のように、温度を意識しないレベルの適温であった。


 そして、私が詰まってしまっている(らしい)場所はどういうところかと言うと、(以下、解説上、そのポイントをAとする)Aの前までは斜め上の方向に登ってきて、Aから上はほんの少しだけ登り、そこから直角に曲がり水平になる(らしい。前のやつの動きを見た限り。しかし前のやつ(山田だった気がする)は奥に行ったきりである。前からも後ろからも音は全くしない。)感じである。ポイントAには障害となる突起はない。


 これがおかしいのである。普通に考えてポイントAには物理的に詰まる要因がないのだ。とりあえず私はポイントAと一体化している。しかし個人的に考えられる要因がひとつだけある。このポイントAにある部分のなんらかの物質(Xとする)と私の体内にあるなんらかの物質(Y)がほぼ運命的な化学反応を起こして惹きつけあっているというものだ。たぶんこれだ。いや絶対これだろ。これでいいこれでいいから。もお何でもええわクソが。


 そのとき、肘に異様な感覚を覚えた。熱さと冷たさがひっきりなしに肘の血管を流れた。出血したらしい。そして次の瞬間は足に懐かしい感覚を覚えた。空気の圧力と地球本体の地盤にサンドイッチされている感覚。足が地に着いたらしい。しかし視界は相変わらず変わらない。目の前にある堅い壁と、私とその壁の間で揺らめく密度の濃い空気。



 そして、ヘッドライトが消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ