『はじまり』
デザンクロ研究室にリズが加入して間も無く、それは始動した。
「おつかい...?」
一同をはじめ、首をかしげるフェルカに、カナギアは頷く。
「闇市撲滅の報酬でそこそこ潤ったのは事実だけど、いつどこでまとまったお金が必要になるか分からないだろう?それに、お金と武力だけじゃない。世の中を変えるためには、人脈も不可欠だ。早い話が、貸しは作っておくに越したことはない」
「社会貢献は、言わずもがな研究室の一目標ですしね」
カナギアの言葉に、デザンクロも補足。
「それって...具体的に、どんなことをすればいいんですか?」
アイレイのQ。そしてカナギアのA。
「本腰を入れて取り組む事件とは根本的に異なる、微笑ましいタスクだよ。人手が足りないからお店を手伝ってほしいとか、そういう類の。雑用は嫌いかい?」
「ボランティアでも、喜んで」
「お駄賃もらえるなら働くぜ」
ユリムとセインはムッ、と顔を見合わせる。
「研究室活動に利益追求は持ち込むべきでない」
「労働に見合った報酬をもらわねえの、不健全だぜ」
「まあまあ、二人とも」
リハルトが苦笑気味に宥める横で、
「リハルトはどっちの味方?」
(ほよ...!?)
リズが爆弾を投下。
青ざめるフェルカだが、リハルトのアンサーは賢いものだった。
「金銭が重要でないという点では、ユリムと同じ。
労働の見返りがほしいという点では、セインと同じかな」
「お金じゃない見返りって、なぁに?」
「僕は情報中毒者だからね。西部以外に情報網を持てるのは美味しいよ」
「それじゃあ、依頼を受け付けるので構わないね?」
カナギアの最終確認。理由は違えど、一同は承諾だ。
斯くして、デザンクロ研究室の、ちょっぴり呑気な寸劇は幕を開けた。