恋に恋するお年頃
誕生日パーティーが終わり、一週間後――
「レミリア。ここにいたのね」
庭園で一人ぼんやりと過ごしていると、お母様に声を掛けられた。
「……お母様」
「クライズ様の事を考えていたのかしら?」
クライズ様の名前を聞いて、ドキリと心臓が跳ね上がる。
「そ、そういう訳では……」
「分かりやすいのね。クライズ様にお会いした日からレミリア、ずっと上の空よ」
クスクスと笑われ、頬が熱くなる。
わたし、そんなに分かりやすいかな?
誕生日パーティーの日、見目麗しい王子様を目の前に完全に舞い上がっていたわたしは、自分が何を話したかもろくに覚えていない。
「いつまでも子供だと思っていたのに、レミリアも恋に悩むような歳になったのね」
「お、お母様、わたしに何かご用でしょうか?」
気恥ずかしくて、話題を変えようとそう言うと……
「レミリアの姿が見えないとかで、マーシャが泣きながらあなたを探していたわ」
「ええ……」
つい、げんなりとした声が出てしまい、お母様に苦笑される。
そういえば、一人になりたくてマーシャに何も言わずにここに来たんだった。
誕生日の日以来、わたしの身の回りの世話はマーシャがしていた。彼女はわたしの一挙一動にビクビクとして、何というか……落ち着きがない。
今朝も紅茶を淹れてくれたまではいいものの、手を滑らせ、ティーカップの中身をわたしのドレスのスカートにぶちまけてきたし……
ミームには避けられているのか、ここ一週間挨拶以外、会話らしい会話をしていない。
ルイスに相談しようとも思ったが最近、やけに忙しそうにしていて屋敷にいない事も多く、中々つかまらなかった。
「もしかして……だけれども。レミリアの元気がないのはミームの事もあるのかしら?」
「……」
口ごもるわたしの態度を肯定と取ったのか、お母様は言葉を続ける。
「新しい侍女が来週には来るとルイスが言っていたわ」
「そうなの?」
「ええ、マーシャは不器用な子だけど……ミームも今日で屋敷を出て行ってしまうし、少しの間我慢してね?」
「……え?」
ミームが……今日で屋敷を出て行く?