表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/33

駄女神降臨

少しズレた呑気な女神と、甘過ぎな冒険者が出会った仲間と冒険していくお話です

天界はある時から、女神が異常発生を始めてしまう。


対応に困った天界神は無条件で女神を地上派遣を決定する。

その窓口は、『冒険者ギルド』。

設置した魔法陣で女神を降臨させ、希望者全員に一人の女神を憑ける。

各自の女神からは、一つの『スキル』を付与され、ギルドで鑑定を受ける事でその能力が判明し、使用可能と成る。


この措置は大好評となり、冒険者が殺到して女神が憑いたお陰で、天界の女神達は地上へと大移動をする事になり、天界の混乱の収束は一応の目途がたった。



この物語は、一年後から始まる。








俺は冒険者に、命を救われた……。


俺の親父は、冒険者では無かったが魔物ハンターを生業としていたが。

在る魔物を追っていた日に、その魔物から反撃されて大怪我を負わされ戻ってくる。だがその魔物は、親父を追って家までやって来た。両親は殺され、俺も殺されると家の隅で動けずにブルブルと震え、ただ死を恐れ待つしかなかった。



そこへ、一人の男が突然俺の家に現れ魔物と戦い、魔物はその男に追い払われ。

俺は、ギリギリの処で失う筈の命を拾った。


翌日に成り、昨晩助けてくれた者が冒険者だと知る。

凶悪な魔物を軽々と追い払った冒険者。

その強さと優しさに憧れを抱いたのは、丁度この時からだ。




悪夢の夜から十年の時が過ぎ。

自分もあの日の強い男の姿を追い求め。

冒険者への道を選んだ!。


そして、ある日の事……。

天界の女神が、冒険者に憑いてくれるとの噂を聞いた。


女神の加護があれば、強い魔物とも戦い、弱い者や困っている人を救えると。

俺は女神の加護を受け、強く優しい冒険者になる事を決意し、故郷の村を出て街へとやって来た。








「ふぅ……、やっと魔法陣を使えるかぁ」


冒険者が女神を支給して貰う為には、魔法陣を起動しないといけない。

その魔法陣は十八に成らないと、ギルドから使用許可を貰えない。


勿論、順番も何時でもとは行かない、能力の上位の者から優先される。

俺のランクは『J』……、つまりだ、最低な訳で後回しにされてきた。

昨日、やっと通知が届き魔法陣使用の、順番が廻ってきた。


魔法陣を起動して、女神を受け取る訳だがどんな女神が来るのかは、『運』。

能力に影響されるらしいが、『運』次第で、素敵な女神が憑いてくる。


さて、どんな女神が当るか愉しみだ!。





「御待たせしました、冒険者のノベルさんですね」

「はい……」


ギルドは、本来は冒険者の登録をする場所だが、一年程前から女神の支給施設を兼ね出した。魔法陣を有するギルド施設は、大陸中に広まり冒険者の訪れを待っているのだ。


「んと……、登録は既に御済の様なので、魔法陣の起動ですね?」


「はい! 、良い女神お願いしますっ!」


「ぷっ、それは運次第ですから、私にはどうにもねぇ」


「そう……ですよねぇ……」


案内の女性に付いて行くと、

魔法陣のある部屋の前まで、順番待ちの人が並んでいる。

この長い廊下で待っている全員は、今日の女神降臨を一日千週の思いで待った。

自分にはどんな女神が憑くのかと、俺と同じく心ときめかせ自分の順番が来るのを待ち侘びている。



遂先日、強運の者がSランクの女神を連れ帰ったと耳にした。

C以上はアタリ女神とみて良い、Aだと大当たりになるがまぁ滅多に来ない。

ただし女神は一緒に戦う事で経験値を得て、ランクが上る事も有るらしい。

風の噂ではEランクの女神がたったの半年で、Aに昇格したとかしないとか。





長蛇の列が少しずつ減っていく、次々に魔法陣を起動して女神と契約を済ませた者から、長蛇の列を横目に帰って行く。彼らは、今日憑き添われた女神と一緒に冒険と戦いを歩んでいく、主の冒険者が死ぬまで、彼女達は決して離れない。 


俺の前の人が、魔法陣を起動しているのが目に入って来た。

次は、いよいよ俺へ魔法陣を起動する順番が巡ってくる。


今あそこに居る人は、ドキドキわくわくしながら、女神の降臨を待っている。

心待ちにする心境は、その期待に満ちた表情からはっきり見て取れる。


  お……、女神が出て来る! 。



魔法陣から女神が現れ、係官がチェックを始めた。


「うおおっ! 、おめでとう御座います!」


  良い女神がでたのかな……。


「ランクSしかも戦女神(ヴァルキリー)さんですっ!」


「おおおおおおっ、やったぁぁ!」


うおっ、良いなぁ……、戦女神(ヴァルキリー)だぁ


俺の前者は、憑いた戦女神を引き連れて、廊下を得意気な顔で戻っていく。

今の人は、戦女神が憑いた時点で、Sランクの魔物とも戦える力を手に入れた。

Sランクの賞金とも成ると、一度の討伐で一年遊んで暮らせる金額が貰える。


  運の良い人だなあ…………。


だが、良い事ばかりでも無い。

女神は強くても、主がSランクの魔物に即死される事故は後を絶たないとも聞く。

女神に頼るばかりでは、生きて行けない時代。





「はい……、ノベルさん次は貴方です。魔法陣の前へ」

「は、は、はいっ!」



赤い髪の係官に呼ばれ、俺の番が来た。

いざ魔法陣の前へ立つと、心臓がドキドキと激しく波打つのがハッキリと自覚できる。今から待ちに待った女神が俺に憑く、どんな女神なのか期待と不安で足までが震えてきた。さっきの人の様に、Sランクの戦女神とまでは言わないから、せめて五本指に入る女神が来て欲しい!。



「では、いっきまぁーす!」


係官の合図で、魔法陣が淡い光を放ち始め、ゆっくりと回転を始める。

光は徐々に強さを増し、回転速度も上昇して行き、天空へと光の柱が延びた。

光の柱が地上へと再び下りて、光が消えると『女神』が現れる。


  Eランク以上が来てくれっ! 



光が消えた…………! 、俺の女神がきたっ! 。


「こんにちは! 、ディーネと申します」


長い黒髪に、スタイルも良い、見た目も美女系だっ!。

声も、明るく透き通るような綺麗な声だっ。


「これは……、期待して良いですよねぇ」


さあランクは幾つだ?。

期待に胸膨らませ、赤い髪の係官を見詰める。


「え━━━━っと、ノベルさん……規則は知ってますよね?」


「はいぃ?、規則とは……?」


「えっとですねぇ、彼女は………」


「はいっ!、あのぉ自己紹介させてくださいっ!」


係官の人が何かを言い掛けた時に女神ディーネは、突然自己紹介を願い出た。


  女神の自己紹介?、そんなのやってたかな?

  この女神だけの気がするけど


「ま、まぁ良いですけど。ではどうぞディーネさん」




女神ディーネは一礼した後に、紹介を始めたが。

これが、女神の自己紹介とは思えない様な内容を語り始めた。


「えっと、私は掃除に洗濯、家事一般何でもできます。他の女神はそんな事は絶対にやりません。私ってとてもお得で便利ですよぉ」



 はて?、この方は女神のはずなんだが?

 



一応、係官さんに尋ねてみる事にした。


「えっと、この方は女神様ですよね?」


「はい、正真正銘のランク『J』の女神様ですよ」


「ええええっ!」


「ひいっー!」


「うわっ、しかも『Jランク』の女神は天界に一人だけって……、ノベルさん貴方ある意味で凄い引きですね!」



俺の悲鳴と同時に、女神まで悲鳴を上げている。

そして……、そんなところで強い引きが現れて欲しくなかったぁ


「んと規則で、女神を却下して次回再挑戦も、一度だけ可能ですが?」


んー実におしい……。

 

  美人なのになぁ俺と同じJかぁ、これは駄目だろう

  俺が弱いから、せめて女神は俺より上位を、最低でも希望したい処

  いくら美女でもJではなぁ……。



「ごめんなさい、チェンジで……!」





残念だが仕方ない、次の順番は何時に成るんだろ?。


  今回の順番は半年待ちだったけど、二回目となると

  最低でも半年以上だよなぁ、長いなぁ……



赤髪の係官に、再挑戦を伝えた俺は肩を落とし、トボトボ帰ろうとした。


「そうですよねっ 、ではディーネさん、又の機会と言う事で……


「まってくださぁぁぁい! お願いしますっ! 捨てないでぇ!」


  うわあっ!


女神が俺の脚にすがり、捨てないでと嘆願してきた……。


「私、これで千回目なんですっ、これ以上は廃棄処分されちゃいます」


「そんな事言われても……」


千回……、ある意味凄い女神に一瞬見えてくるが。

しかし……、一度契約したらキャンセルは効かない決まりだ。

もっと強くて優しい人なら、彼女を断らないかも知れない。

変に同情して俺に憑かれても、お互い良い事はない、やはり断った方が彼女の為でもある。


女神を再度見ると、涙を浮かべて哀願を繰り返すばかりで、埒があかない。


「お願いしますう、廃棄は嫌です! 、捨てないでぇ!」


 

  その捨てないでぇ、って奴が俺の心を突き刺すんですが

  いかにも、俺が彼女に酷い事をしてる様にしか見えない




しかしどうにも気に掛かる言葉が、俺を戸惑わせていた。


「あのぉ、廃棄処分って女神を首にでも成るの?」


俺の質問に彼女は、立ち上がって涙を拭った後に、真っ赤な目をして答えた。


「千回断られると……、駄女神の烙印押され、消滅されるんですよぉ!」


「なにぃっ! つまり、殺される?」


彼女は、黙ってコクコクと頷きながら、再び泣き始める。


  はぁ、俺が断ったら彼女は死刑宣告される訳か

  そりゃ捨てないでぇって言いたくも成るな



「お願いします……、一生懸命に尽くしますからぁ、捨てないでぇ」


「だぁ……、分かったから捨てないでは、もう言うなっ!」


「えっ、私が憑いて良いですか?、嘘じゃないですよね?」


「ノベルさん……、本当によろしいんですか?」


「うん、彼女にするよ」


駄目だなぁ、捨てないでって言葉に負けた。

しかも殺されるのが分かってたら、

彼女が死ぬのを知っていて、それでも平気で断る残酷な死刑宣告を。

俺に言える筈も無く、まあこれも何かの縁と思って彼女に憑いて貰おう。




「では、ディーネさん。契約の祝詞を」


「はいっ!」


  我、女神ディーネは 汝、ノベルの命尽きるまで 

  その身を守護する事を誓わん!


「はい、契約成立です。お疲れ様でした」


「きゃああ! よかったぁ、感謝しますご主人様!、私頑張ります!」


彼女は命拾いして、本当に嬉しいそう!。


人助け成らぬ、神助け?なんか反対の気もするが、綺麗な女が死ぬのは忍びない、兎にも角にも、これで女神憑きに成れた訳で、一応は冒険者と胸を張れる。それにしても、御主人様はどうにもコソバユイ、それだけは彼女に言うのを止めて貰うとしよう。



「あ! 、スキルの付与を!」


肝心な物を忘れていた……!。

女神憑きに成ると、彼女達からスキルを一つ貰える決まりに成っている。

勿論、どんなスキルかは貰って鑑定されるまで、分からない。


「ノベル様、こちらへ……」


彼女の目の前に立つと、ディーネは片手を胸に当て、片手を俺の額に当てた。何だか、額がこそばゆくなり、彼女の掌がパッと光り輝くと、俺の頭の中へ光の玉が吸収された。


「これで終ったの……?、ディーネだったかな?」


俺から名前を呼ばれた事が、よほど嬉しかったのか、満面の笑顔を魅せる。

最低ランクだけど、なんか彼女を選んでよかった気がしてきた。


「これで終わりです。ノベル様!」


スキルの付与は終了して、次は係官に鑑定して貰えば、スキルが使用可能になる。

ディーネと一緒に係官の所へ、移動する。





「鑑定お願いします!」


今日の仕事は俺で最後の雰囲気、赤髪の係官は手にした書類に、気を取られて気が付かない様子だ。


「すいません! 、鑑定を……」


「あ、はいはい、では……ちょっと待ってね」


彼女は、バックから何やら道具を取り出して、俺の頭へと当てた。


「これで読み取った情報が、魔法陣の空間に投影されますからね」



少し待って居ると、魔法陣が光を放ち始めた。

しかし、今回は光るだけで回転は起きていない、一際強く輝いて文字が浮かぶ。


  《スキル鑑定結果》    【進化】


「進化……?、はあ……何ですこれ」


「ちょっと……待って……、説明が出ませんね……はははは、分かりません!」


「ちょっ、分からないって……、進化、退化の進化?」


「さあ……、多分そうじゃないかとぉ……」


どんな効果なのか確かめないと、使え無いじゃないか……。

ディーネに聞いてみよう!。


「えっとぉ、ディーネさん……、どんな効果?」


彼女に問い質して、効果を確かめ様と聞いて見た。

両脚の間に両手を挟み、もじもじと恥かしそうな態度を見せた後。


突然、ガバっと頭を下げた。



「御免なさいっ! 、私も知りませんっ━━━!」



困った事に成った。

スキルの効果が判明しない……、これでは使え無い!。

いや、使え無い以前に分からないとか有りなのか?。


  

  さ、さすが999回断られただけの事はあるなぁ




有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ