迷子の迷子のなんとかさん!
「風つえー、てかここどこだよ緑ばっかりじゃないか」
「まさに自然って感じだねぇー」
真っ赤な太陽に照らされ見渡すと辺り一面は全て緑一色の草原だ、遠くを見れば褐色の山が無数にあり人の気配は俺達以外では全然ない。
「・・・うん」
少し嫌な予感がしている、割とこういう時のカンってやつは必然的に当たるのが冒険の常識だ。
・・・まぁこのカンは初めての体験だけどもな。
「マッチョ先生が転移する場所間違えたって端末で来ていたけどここはどこだろうね」
出発する前に渡された端末を弄っているジョニーは真顔でそう言った。
なんだそれは開始そうそう迷子か、やべぇトイレしてきたほうが良かったかもしれない、緊張がピークになるとトイレが近くなる体質なのです。
「しかたないよぉいっぱい人いたからねぇ、先生も間違う事もあるかもねぇ」
楽観的なまるが羨ましい、無口さんは微動だにしていないさすが無口さん頼りになるのかもしれない。
そして一番頼れるジョニーはと言うと・・・
「フーム、ここは異世界で迷子で僕達4人しかいないわけだ、ここは回収を待つか少し探検するかの二択があるね、皆はどっちがいいかい?多数決でもクジでも何にでもかまわないよ!」
・・・俺だってなんでもいいよ、リーダーっぽいジョニーに任せてついていこうそうしよう、そっちのが安全安心だ、そんな考えをしていたらまるが大きな声で言った。
「探検したいよぉーせっかくここに来たのにここでジッと待つのも退屈だよぉー」
アクティブ思考のまるにつられ無口さんもジョニーを見て頷いている、もうみんなの中では完全にリーダーのジョニーが俺に顔を向けてくる。
すかさず今したい事を言ってみた、優しい皆の事だ、恥ずかしいが背に腹はかえられないとかなんとか。
「トイレしたいです、多分小さいほう、まずはそれからだ」
・
・
・
いえ、すいません、人一倍緊張するタイプなのです。
超高速で溜まりつつある尿意を我慢しつつ股間を抑える俺
もう少し持ってくれよ俺のマイサン・・・漏らすのは幼稚園までだって誰かが言ってたよぉ・・・それに恥ずかしいのを我慢してるんだよぉ・・・
「ふふふっ・・・異世界きてすぐにもよおすのは君くらいなものだね、ついでに僕も一緒に行ってもいいかな」
ジョニーめ、お前もホントは行きたかったクセに俺の後に言いやがって・・・あとで覚えてろよ?
「よし、二人ともちょっと行ってくるからここで待っててくれよな」
二人の目を交互に見ながらジョニーと一緒に便所しにいく俺、心なしか二人の顔が赤くなっている気がしているが錠剤飲んだのか?それとも効果がまだ出てないのか?まぁ気にしないでおこう。
それよりまる達に見られないように少し離れて行くのが今の俺に出来る最善で紳士な行いだと思う、やったね!これで紳士度が上昇するよ!さぁ小便は急げだ!
「HAHAHA、これがジャパニーズ連れションってやつだね!初めての経験さ!」
「いや、そんな初体験思い出にしたくないだろう・・・」
たまーに面白?発言が飛び出すが、これを嬉しがって言うジョニーの興味を示すものが段々分かってきたような気がするなぁ。
そんなやりとりをしつつ目を瞑り集中する、周囲の音が少しずつだが小さくなっていく。
段々と徐々に小さくなっていく。
・
・
・
・
・
・
・
「・・・?んん?んんん??」
さっきから周囲がおかしい、あれだけ風が吹いた音やそれを受けていた感覚が聞こえない・・・
その代わりに光が広がっていく、まだ緊張が解けないのかと思った俺は直後に目の前が大量の光つつまれた。
真っ白になる。
「まぶしっ・・・なんだ・・・?」
それは懐中電灯二つを両目に当たられたような感覚で、すぐさま片手で目を覆う。
一瞬だが自分の立っている場所が上か下かはたまた横かわからなくなり平衡感覚って奴がなくなるのを感じる。
これがジョニー曰くジャパニーズ平衡感覚失った!って奴か、いや、日本じゃないから異世界平衡感覚だな。
そんなアホな考えをやめて恐る恐る目を開けた。
俺は混乱しているようだ、わけがわからなくなっている、ここはどこだ?
太陽輝く緑の草原が突然、うす暗く道もなく、嫌な気持ちになる森の中だったら俺でも驚く、驚かない奴っていないよな?大丈夫だよな?
「まじかよ・・・ワープしたぞ、ジョニー大丈夫か?」
・・・うーん、返事がない、ただの独り言のようだ。
「まじか、まじか、ジョニーいなくなった!てか二人もいねぇ!!」
「まさかのまさかで今の俺って、もしかしなくても迷子の迷子?やべぇ!!あっ・・・けど自然の中での小便って気持ちがいいなぁ」
迷子の迷子とはもう迷子なのか迷子じゃないかわからなくなってきた、焦っていると良いように進まないのは世の常だ。
とりあえず全部出し切ってからでも遅くはないな。
「ふぅ・・・」
だんだんと冷静になってくる、出すもの出したし体調はカンペキ、武器も防具もある。
カバンの中には最低限の圧縮食料と水もある。
何も怖いことはない、逆に何か出てきても大丈夫な状況だ。
それに人間は適応力が肝心だって親父も言ってたしな、カバンの中の親父から渡されたMAを手に持つ。
懐かしくもない親父の顔を思い出す俺は案外ファザコン気質があるのかもしれないとチャックを閉めてこれからの事を考える。
「うーん、うーん、まず森を抜けるか?抜けられるのか?それともここで皆を待つか?」
色々な考えが浮かびは消えていった。
カバンの中の黒い色をしたヌマホの形の端末を弄っても場所がエラーを出してるようだ、電波的な物が来ていない。
「かなり珍しい事だが故障かもしれないなぁ、けどもCMで『このタイプは壊れにくい事を前提で作られてますっ!これならどこでも使えますっ!!』言ってたから買ったのになぁ」
・・・ん?まてよ?もしかしたらこの地域は端末と相性が悪いのかもしれない。
時間だけが過ぎていくのがわかる、とりあえずだが森を抜けよう、開けたところなら端末も使えるはず。
「はぁ・・・前途多難だなぁ・・・」
俺は暗い森を迷子の迷子な状況で歩き出した。