夢はありません!安定志向です!
「これは夢か、多分夢だ間違いない」
頭の中がふわふわしている、意識が覚醒しそうでしないこの感覚。
これは夢だと自分の中で理解が出来ると同時にゆっくりと周囲が認識出来始める、暗く切り立った崖のような場所は底がなく空も見えない一本道が永遠と続く場所だった。多分ここは・・・
「まるでラスボス前の準備ステージのような場所だ」
あるはずのないセーブポイントを探してしまう俺は毒され始めているのかもしれないなと感じ
ながらも道の先を目で追った。
「なんだろう、奥で光ったり消えたりしてる」
その光へと意識が引き付けられていく、足が勝手に進みながら踏み出す足の感覚が曖昧すぎて
自分の足ではないような不思議な体験をしている気分になった。
光の元へと辿りつく、朽ち果てた台の上に置かれている緑色に光るキューブ状の石に目が離せない。
「綺麗だなーまるにやりてぇなー」
あいつは綺麗な石とか集める趣味があるってのは小さい頃から知っている、いつも川や海へ行くと
水の中に入るより石を探している時間の方が長いくらいには綺麗な石が好きらしい。
前にザッ!石コレクションッ!と言うお高いお菓子の箱の中を改造した自慢の一品達が眠るあいつだけの
お宝を見せてもらった事がある。
あまり興味はなかったが嬉しそうに一つ一つ解説していくまるの
姿が微笑ましくうつり自分も何か集めてみようと思ったくらいだ。
台座の上の石を手に取りそんな昔の事を思い出しながら段々と頭がふらつき意識が混濁していく、これは夢から覚める予兆だろうと考た。
大抵こういう場合ではお約束って出来事だろう、感覚がなくなっていく。
俺はそれに委ねていった。
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「おぉーい!そろそろ起きないと遅刻するぞ!」
「・・・うぇーい、起きるってば」
寝起きは弱く最悪だ、目の前にちょっとガタイのいい渋い系親父が目の前にいたからだと
思う、葉巻が似合うが喫煙者ではない。
そんな事よりもだ、夢を見ていた気がするがその内容よりも目覚まし時計が気になる。
「8時過ぎ・・・・・・うわあああああ起こしてくれよおおおおお」
「3度も起こせば十分だろ、お前は本当に起きないな全く誰に似たのやら」
「親父の息子だから親父だろ!」
急いで制服とカバンを掴み洗面所で顔を洗う、ここはリビングの近くにありテレビの音が耳に入ってくる。
『・・・また新しく見つかった世界は比較的気候が穏やかで友好的な獣人種が見つかった模様です』
こんどは獣人種か、この間はなんだったっけな翼人種だったような。
異世界はやはりと言うか当たり前と思うかもしれないが多種多様な生き物や人が生息している。
その中でも好戦的な種族だったり友好的な種族だったりするわけだ。
「親父ー靴下どこだっけ」
「箪笥の一番下に畳んであるぞ、あと今日は試験だろ?高校入学初のクエストだ緊張してるか?」
親父のニヤニヤ顔が少しムカつくが親父は異世界で治安を守る正義の部隊長をやっていると聞いた。
部隊名は『アンプ』かだったか『アウプ』だったか、まぁ治安を守っているんだろう不真面目にな。
「するわけないだろー中学でも大してトキメキもなく驚きもなくフツーに遠足気分で終わったって」
親父は一応偉い人らしいので尊敬とかしてやらないでもない、将来目指すのは安定だ!適度に仕事をして適度に遊ぶ!
この素晴らしき未来設計に思いを馳せながらも学校への準備が進んでいく。
「ふむ、この親父がかわいい息子の高校初クエストデビューにいい物をやろう」
ほぼ準備が終わり、親父が拳銃に似た形の物とそのマガジンだと思う物3本を投げてきた。
この形状はかなり前に流行ったなぁと思い出した。
年季がある黒色の武骨なデザインの拳銃で照準の良さ・メンテナンスのし易さ・扱いやすさの
三拍子そろったいわゆるマジックアームズ通称MAと呼ばれる武器だ。
この地球では魔力が皆無な為に見た目以外に武器の意味がない代物だが異世界では強力な武器
ではあるし心強い味方でもある。
使うつもりはないと思うが一応カバンに詰め込んで出発だ。
「あんがと!んじゃ頑張って試験受けてくる!」
「おう!いってらっしゃい!」
俺は軽い足取りで家を出ながらも、昨日まで勉強した試験範囲を思い出しつつ学校へ向かっていく。