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「そう。あれ」
嫌とはいわせない。ある意味、アルにはぴったりよ。ふふふ。
「当然、奏子も乗るんだろ?」
え?
そ、それは考えてなかった。どれだったらアルをぎゃふんといわせてやれるか、そればっかり考えてたから。
自分が乗ることを考えたら、あれはちょっと……
「えと、私は……」
「なら、乗ってもいい。行くぞ」
「ええええええええ」
反撃は虚しく、どう考えても自爆……
この歳で乗るメリーゴーランドは、さすがに恥ずかしかった。
けれど、堂々と白馬にまたがるアルに、一緒にメリーゴーランドに乗っていた幼い女の子たちが一様にぽーっとなっていたのが印象的だった。
散々間違った楽しみ方をした遊園地を出るころには、もう日が傾きかけていた。
でも。
「楽しかったー」
こんなに笑ったの久しぶり。アルと一緒、って最初は緊張したけど、マスターの仮面がはがれたアルは、意外におちゃめだった。
「そうだな、思ったより。それとも、奏子と一緒だったからかな?」
涼しげに微笑むアルの視線をうっかり受け止めてしまって、あわてて視線を逸らす。
間がうまいなあ。うっかり、いい気になっちゃいそうよ。
「すみませーん」
その時、足元にボールがひとつ転がってきた。バスケットボール?
見れば、レクリエーションゾーンの一画、バスケットコートのあたりで小学生くらいの子供達が何人かバスケットをやっていた。
アルは、足元に転がってきたそれをひょいと持ち上げると、2、3度狙いを定めて見事にゴールを決めてみせた。
「ひゃー、にーちゃんすげえな」
「ふふん、俺にボールを持たせたら、もう止められないぜ、ぼうず」
悦にいったアルが胸を張る。……子供相手に、なにいばってるんだか。
「アル、バスケなんてできるの?」
何気なく言った言葉に、むっとして振り返るアル。
「失礼な。できないわけないだろう」
「だって、カウンターでふんぞり返っている姿しか見たことないから」
運動しているアルって、そういえば見たことない。というか、想像できない。
「見てろよ」
そういうと、脱いだジャケットを私に放り投げる。
「アル?」
「俺のプレイ見たら惚れ直すぜ、奏子」
「直すも何も、誰が惚れてるのよ」
あきれたような私の返答に、アルは笑いながら子供に混ざってボールを追い始めた。
アルが子供好きとは知らなかった。
一人になった私は、そばにあったベンチに腰掛けて、バスケに興じるアルを眺めることにした。
子供たちの中にいると、一人だけずば抜けて背が高い。ボールをとってとられて、楽しそうにアルが笑う。
大人用のコートは子供にはなかなかゴールは難しいらしく、ダンクを決めるアルに歓声があがる。かと思えば、団子になった子供達に押されて、子供と一緒にコートに転がってみんなで大笑いしているし。
ぼーっと見ていて、ふと気付いた。
ちゃんとパスも出すし、トラベリングもしない。シュートを決めた子の頭をぐりぐりとなでて大げさに褒めている。
子供だから、遊びだからって、ばかにしてない。つか、本気で遊んでいるの?
ふーん。
なんだか……。




