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「好きでもない人とつきあうなんて、疲れるだけじゃない」

「つきあってるうちに、好きになるかもよ?」

「うん、だから、とりあえず普通に友達で、って答えた。どうせ委員会でも顔合わせるんだし、わざわざ時間作って一緒にいるほどでもないかな、って思って。それより」

 さりげなくきついことを言いながら、にっこりと早紀が笑う。


「考えておいてくれた? バイトのこと」

 歩き出した早紀につられて、私も隣で歩き出す。

「一緒にやろうってこと?」

「ね、お願い。本当言うと、奏子と一緒だからってお母さんに了解してもらったんだ」

「え? そういうことは本人に確認してから言ってよね」

 うふふ、と笑った早紀に、一応、口をとがらせてみる。

 本当言うと、誘われた時からやる気にはなっていた。だって、クラブやってた時はほかのことやる暇なんて、全然なかったんだもん。やっぱり花の女子高生。いろいろやってみたいじゃない?

「しょうがないなあ。じゃあ、付き合ってあげよう」

「ふふ、嬉しい。学校終わったら行ってみようね」

「おっけー。それより、今日の三時間目の……」

 気持いい朝の風が吹く中を、私たちは駅に向かって歩いて行った。


  ☆


「ここ?」

「そ。ね、素敵なお店でしょ?」

 その日の帰り。早紀の言う喫茶店は、うちの最寄駅の反対口にあった。近いと言えば近いので、通いやすいかもしれない。


 その店は、大通りからはちょっと入ったところにあって、道路に広く面してはいるものの、通りすがりには見落としそうな位置にあった。

 白壁に大小いくつかあるステンドグラスのはまった窓のまわりには、蔦の葉がからませてある。深い緑の屋根と壁に沿うように植えられた植物が、街中なのに森の中のような雰囲気をかもしだしていた。店の向こうには、大きく茂った緑の木が喫茶店を覆うように生えて影をおとしている。

 なんとなくその店の周りだけ、重厚な空気が漂っているようだった。でも、全然近寄り難い感じはしなくて、むしろ、懐かしい雰囲気のする居心地よさそうな店だった。


「うん、素敵。よくこんなとこ見つけたわね」

「こないだの日曜にたまたまここら辺で迷っちゃって。その時に見つけてひとめぼれしちゃったの。ほら、結構いい条件でしょ?」

 早紀が指さした先に、小さく店員募集の紙がはってあった。それを見て、しばし無言になる。

「……これ、いい条件っていうか、さ」

 やる気あるの? この喫茶店。


 営業時間午後4時~8時。休日、不定。

アルバイト募集 若干名。時給1000円。委細面談。


「ここ、なんかまずいお店なんじゃないの? おかしいでしょ、この条件……って、ちょっと、このメニュー?!」

 私は、ドアの前に小さく置かれたメニューに目をむいた。

 コーヒー一杯千……!

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