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いつか記憶の降りつもる  作者: 和泉 利依
プロローグ
1/96

 ぱしゃん。



 小さな水音で、唐突に意識が覚める。肌に感じるのは、ひんやりとした空気。


 ここ、どこ?


 ぼんやりと辺りを見回す。そんな動作すら、ひどく億劫だった。

 あたりは一面、夜明け前の朝もやのような白い霧。

 足元を見て、気がついた。


 ああ。水の上、なんだ。

 次第に景色がはっきりとしてくる。

 見渡す限りの水面の上に、霧の立ち込める乳白色の世界。

 私は湖の真ん中にいた。


 立てるはずもない場所にいるのに、不思議と不安は感じない。

 めぐらしていた視線を背後に向けると、黒く繁った森がかすんで見える。

 くずおれるようにその場へとひざまずくと、水にむかって手をのばしてみた。肩から、はらりと長い髪が水の中にすべり落ちる。足元にわだかまって浮かぶ、銀色の、髪。

 硬いかに思えた水面は、抵抗なく私の指を受け入れた。続いてその腕も。

 いつのまにか、ひざまずいていた足さえも水中に沈み始めていた。重さを感じさせない髪が水面に静かに広がっていく。


 穏やかな心地好さ……


 そのまま沈んでいこうとして、ふと、顔をあげた。ゆっくりと、後ろを振り返る。

 黒い森の影。


 霧の向こうに、何かが、いる。




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