黒とはけしからん!
声のするほうへ自然と正義が顔を向ける。そこには、細い足と、ヒラリと春風に舞うスカート。さらに顔を上げた正義は、
「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
スカートから一瞬垣間見えた声の主の下着に目を奪われた。
「ぁ・・・」
そんな声を上げて声の主が白い手でスカートの裾を押さえる。瞬時に顔を逸らす正義。
『やばいこれ完全に軽蔑される流れだしかし黒とはけしからん勝負下着を・・・って途中何を考えてるんだ僕はあああ!?』と、やや錯乱した〔妄想癖〕を展開した正義が恐る恐る顔を上げる。
細身の肢体を覆う〔才覚高校〕指定の白いブレザーとチェックのスカート。
陽光を照り返して金の艶を見せるまっすぐな白銀の長髪。
切れ長でイタズラっぽい瞳に宿る色は紫水晶。
可愛いというより、美しいという形容がピッタリな相貌。
そして三日月のような弧を描く唇から、少し長い八重歯が覗き。
「見た?」
少し楽しげに、内緒話でもするかのように少女が正義に問いかけた。
だから、
「見て見て見てませ・・・!」
「ネシンさん、嘘は嫌いなんだけどなぁ~?」
「見ましたええ黒でしたすみませんんんんんんん!」
正義は勝手にうろたえてネシンと名乗った余裕の少女に渾身の土下座をかました。
すると、
「アハッ!早い!そして角度も正確だねぇ~?」
正義の姿がツボだったのか、からかうような微笑を浮かべた少女が身を屈める。
そして、
「うん。思った以上にぃ、君は面白そうだねぇ~?」
「あ・・・」
少女が正義の頭を優しく撫でた。
普段の正義なら大いにうろたえ赤面し後ずさりで高速移動しているはずだった。だがまるで魅了されたかのように、正義は彼女の紫水晶の瞳から目を離せなくなっていた。
しかし、
「だからもっと面白くなるようにぃ、イジリ倒したくなっちゃうんだよねぇ~」
「え?」
正義の疑問の声には応えず、少女の手が離れ、側にいたサンマに伸びて撫でる。
「あ、あの・・・?」
正義が意味のわからぬ言葉の真意を確かめようとするが、
「じゃぁまたねぇ~、セイギくぅ~ん」
あっさりと、そして幻のように少女はその場を去った。一人取り残され呆然としている正義だったが、
「にゃ~」
愛猫の声に今度こそハッキリと意識を引き戻され、少年は少女に撫でられた頭に手をやった。
「あの人、一体・・・?」
そして正義は2つだけ気づいた。
『あの声・・・どこかで』
自分をセイギと呼ぶ人物を正義は一人しか思いつかない。だというのに、初対面の人間の声に聞き覚えがあるとはどういうことなのか。
しかしそれ以上は〔なぜか〕思考にモヤがかかって何かを掴むことは出来ず。
「にゃ~」
「あ、うん」
いつまで考えていても答えは出ない。そう結論付けて正義は自分を励ましてくれた相手、撫でてくれと擦り寄ってくるサンマに優しく手を伸ばして撫でてやった。しばらくそうしているとサンマは満足したようにその場を走り去っていった。
「ありがと」
小さくそう言って、『でもこれ見られたくないしなあ』と自分の〔才能〕の扱いを正義が再び苦慮していると。
「きゃあああ!?何ぃぃぃ!?」
「にゃ~!」
そんな声が聞こえた。




