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右肘についたコンプレックス

 縁之下・正義の住む世界には〔神さん〕と呼ばれる存在がいる。

 そして彼女に〔才能〕を貸し与えられた少年少女は、ある場所に集まる。

 それは日本の首都、小春日和の東京。

 塀に沿って植えられた、今まさに満開の桜。

 正面グラウンドの先に聳える真っ白な校舎。

 日本だけでも数校存在する〔才能保持者〕の集う学び舎の一つ。

 無事に中学校を卒業した正義少年は、そんな〔才覚高校〕に初登校した。

 左手に鞄、右腕を骨折時に使う三角巾と包帯で覆った姿で。

 その理由は至極単純なもので、



「うわ~、みのりはサラマンダー貰ったの?カワイイ~」

「ホラ、ここがギミックになっててさ。俺の手に合体するとビームが出るんだぜ?」



 周囲を登校してくる真新しいブレザータイプの白い制服姿。見知らぬ少年少女達が楽しそうに自分の〔才能〕を語る光景に正義は、



『僕のも見なよ?右肘にロケットブースターがついてるんだ。凄いでしょ?』



と言う自分を想像、グラウンドの隅の方へと走っていってしゃがみこみ、



『言えるかああああああああああ!』



 と、頭を抱えて自分の境遇にツッコんだ。

 これこそが〔神のきまぐれ〕。

 どんな高級接待や莫大な金銭を貢いでも、与えられる〔才能〕は〔神さん〕の独断と偏見によってのみ決められるという掟の結果だった。

 そして正義は幼い頃からテレビやネットを通じて様々な〔ヒーロー〕や、その対極の存在である私利私欲に〔才能〕を行使する〔ヴィラン〕を見てきた。

だからこそ、



『僕のは絶対に〔残念系〕じゃないかああああああ!』



 と自分の不遇を嘆いた。

 正義が思った〔残念系〕とは、言うなれば〔才能〕の中でもハズレだ。

 もちろん貸し与えられたばかりの〔才能〕は、最高で〔ステージ8〕まである〔才能の階級〕の中で〔ステージ1〕と呼ばれる最も微力な状態であり、努力や工夫で多様な変化を遂げるということは少年も理解していた。それを扱える配慮として、本人の持つ基礎的な身体能力が常人よりわずかに強化されていることも。そう、理解はしていたのだが、上京したてでこちらに知り合いは一人しかいない正義にとってこの状況で自分の〔才能〕を見せるということは、



『絶対友達出来ないだろ!?普通誰も近づかないだろおおおお!?』



 という発想に至らせた。

 さらに悪いことに、正義の制服の右肘部分にはわざわざロケットブースターを露出させる穴が開いていた。つまり普通に制服を着るとまずそれに気づかれてしまう。そのためにこうして包帯と三角巾の登場とあいなったのだ。

 それでも、



『・・・もしかしたらって思ったのに』



 正義は思っていたのだ。



『友達が出来るかもしれない』



 そして、



『〔ヒーロー〕になれるかもしれない』



 と。

 そんな半泣きの彼を慰めるかのように、



「にゃ~」



 愛猫の黒猫、サンマが正義の頬に擦り寄った。



「お前・・・」



 本来の予定ではサンマは実家においていくつもりだった。だが正義が家を出る際にどうしても側を離れず、学生寮がペット可だと確認の上、一緒に連れてきたのだ。



「にゃ~」



 なおも伺うような視線でサンマが正義を見つめる。猫がもたらした情けない過去を思い出し、チクリと正義の胸が痛む。そして同時に彼は思った。



『そうだ。僕は変わるんだ。もう無能じゃない。何でも上手に出来る〔ヒーロー〕になるんだ』



 決意を新たにした正義がサンマの頭に左手をやって撫でてやると猫はゴロゴロと喉を鳴らす。

猫を撫でる少しだけ右腕より太くなった左腕。手先に目立つ真新しい火傷の痕が記憶を呼び起こし、少年に少しだけ勇気を与える。

 そして、



「か~わいいねぇ~?」



 頭上から甘ったるく間延びした声がかかった。

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