神さん
そして、昼時の現在。〔偶然〕の邂逅。
「あ~ぁ。意外とすんなりイッちゃったねぇ?」
病院の廊下で、ワンピース姿のネシンは緊張した面持ちで制服のスカートを揺らすチヒロにそう言った。
だから、
「やっぱりアナタが全部?」
チヒロは不満そうな彼女に問いかけた。
すると、
「せいかぁ~い」
ネシンが笑った。
「不和くんとセイギくんを揉めさせたのもぉ、サンマちゃんに催眠かけた私の仕業ぁ。青山くんがチッヒーとセイギくんに何か仕掛けるように今年から生徒の個人情報流したのも私だしぃ、モールで鉄骨落としたのも私ぃ~」
「・・・」
「あとはなんだっけ?去年チッヒーについた嘘は知ってるんだっけ?セイギくんに自信を取り戻して欲しいから、彼に〔才能〕をあげてって言ったチッヒーに、わかったぁ、って言ったんだよねぇ~?」
「その時には、セイギはもう条件をクリアしてた。条件の内容まで、後で勝手に白状した」
「あ、もう言ってたかぁ!なぁんだ~、もっと上手くやればよかったかなぁ?だって必死なチッヒーも可愛いしぃ」
「悪趣味ね、〔神さん〕は」
「それは言わない約束でしょぉ?でないとぉ・・・」
チヒロにネシンが近づく。
「セイギくん、殺しちゃうぞぉ?またモールで会った時みたいにぃ、人質にしちゃうぞぉ?」
ネシンは笑っていた。
何の害意もなく、ただ楽しさから笑っていた。
〔神〕を睨み、〔神〕に目をつけられたチヒロは、しかし一歩も引かなかった。
そして、
「う~ん!その顔見れたから、セイギくんのお見舞いはもういいやぁ~!」
ネシンはそう言って踵を返す。
だからチヒロは聞いた。
「どうしてこんなことを?」
ネシンはそれに振り返りもせず答えた。
「〔神〕だからぁ?」
「・・・」
「あぁ、でもでもぉ、セイギくんはいつか私を〔無視〕するかもねぇ?」
「どう、いう?」
そこでネシンが振り返った。
そして、
「だってそのほうが面白いじゃぁん!?もっと歪んでくれたほうがぁ」
「セイギが歪んでるっていうの?」
「だって、ねぇ?〔死前界〕には、直線って存在しないのよぉ?だったらセイギくんのあのまっすぐさってぇ、摂理を曲げたぁ、歪んだものでしょぉ?」
チヒロは狂気の笑みを見た。
だから、
「そんなことにはならないよ」
「ええぇ?そうかなぁ?」
チヒロは応えた。
「セイギはどんな悪質なボケでも、面倒なボケでも・・・」
「・・・」
「絶対に、ツッコむから!」
「あ、そう。まあ、仲良くやってねぇ~?」
興味を失ったネシンの姿が掻き消えた。




