否定とありがとう
河川敷。夏の夕日。土手沿いの通学路。
川で助けた少年が、〔否定〕した少女に言った。
「あり、がとう」
『あり、がとう?』
言葉の意味がわからなかった。
自分の言葉に少年が反論してくると思っていた少女は、戸惑った。
「どう、して?」
「え?」
「何も、言わないの?助けたからって、ここまで言われて、何も言わないの?」
少女は少年が不可解だった。
だが、
「だって、僕をみつけてくれたから」
少年はそう言った。
『何よ、コイツ。私が、私が理解できないなんて・・・』
少女はだから、イラついた。
「名前は?」
だから聞いていた。
「え?」
少女はすぐに少年の名札に気づいた。
「セイギね」
「あ、その、僕、マサヨシ・・・」
しかし、
「セ、セイギでいいの!」
「あ・・・うん」
少女は間違いを認めない。
春。中学校。卒業式。
「わ、私、浅間くんのこと・・・」
そう言おうとした少女を、同級生の少年が、
「・・・」
〔無視〕した。
「何やってるのよ!?」
夕方。中学校。卒業式。
少女の前に、殴られ、ボロボロになったメガネの少年がいた。
「だ、って」
「何なの、よ。セイギには・・・」
「あの人、だって、チヒロ姉を〔無視〕して・・・僕は、だから・・・」
少年の言いたいことが少女にはわかった。
だから、
「馬鹿!」
彼女は泣きながら彼を抱きしめた。
「馬鹿!馬鹿!」
「ゴメン・・・ゴメンなさい」
謝る少年に、少女の胸が痛んだ。




