セイギの味方
〔蓄積噴射〕の欠点は3つ。
一つは噴射するまでに10秒の時間が必要なこと。
一つは〔通常噴射〕の数倍の出力を出し、最後の一つは一度噴射すると言って時間が過ぎるまで任意での〔OFF〕が不可能になること。
つまり噴射を支えきれない正義の〔大怪我〕が確定するということだった。
しかしそれは、
「絶対離しちゃ嫌だよ不和君んんんんんんん!?」
「離さねぇ!俺はお前の友達だ!だから絶対離さなぐおおおおおおおお!」
吹っ飛んでいきそうな正義の足を、半ば地中に埋まった不和が掴むことでギリギリ防がれていた。
つまり、
「うおおおおおお!回る!回るぞセイギ熱い熱い熱いいいいいい!」
「ゴメンね!?ゴメンにぇ不和きゅんんんんんん!?」
正義は足を固定されているため、不和が軸になった逆さのコンパスのようにロケットブースターに振り回される。さらに軸となってしまった不和は正義の足に引っ張られて180度をグルグルと回転する。そんな光景が展開されていた。さらに噴射炎と煙が2人に降り注ぐという惨劇が起きた。
そうして2人が満身創痍の上に満身創痍を重ねたところでやっとロケットブースターは止まり、
「この程度か?」
目を回している2人の側に、鉄の男が立った。
肌には無数のヒビが入っていたが、彼の足取りにそれ以上のダメージは見られない。もちろん、周囲を取り囲む青山の手下は無傷だ。
それを見て持ち直した正義は、言った。
「僕らの負けです」
「・・・何?」
あっさりとそう認めた正義に青山が怪訝な顔をする。すると正義がゆっくり身を起こし、そして、
「なぜ、その男を守る?」
地面に埋まって動けない不和の前に立った。正義ははにかんで答えた。
「友達、だし」
そう言ってちらりと不和を見る。
「守る力もないのにか?力で敗北したのにか?」
「確かに僕は弱い。だからアナタに負けた。力では、アナタのほうが上だ」
だけど、と正義は続け、
「守る力があるかどうか・・・それは」
背後に彼女の気配を感じて、正義は自信を持って言った。
「「関係ない」」
チヒロが正義の左手に右手を重ねた。
「出来る力があるかどうかじゃない。そして・・・」
それは純粋な意思の発露。
そして、
「僕は誰も〔無視〕しない」
正義の究極の卑屈が生んだ意思であった。
「そんな、もの・・・!」
チヒロには、青山が揺らぐのがわかった。
だから、
「私がアナタじゃなく〔セイギの味方〕になった理由、わかってもらえたかな?」
チヒロが青山にそう言い、
「だからもしこれ以上やろうっていうのなら、私を許してくれたセイギを、時間をくれた不和くんを、痛めつけようっていうのなら」
空いた左手をふわりと空中に泳がせる。同時にチヒロが声を発する。
「疾く走れ、〔白寅〕!」
バガアアアアアアアアアン!
「かどわかせ、〔朝切〕!」
バガアアアアアアアアアン!
「迸れ、〔雷遠〕!」
バガアアアアアアアアアン!
「嘲れ、〔紅髪〕!」
しつこくバガアアアアアアアアアアアアアン!
轟音と共に、四つの威容が空から落ちた。
それは正義と不和が稼いだ時間がもたらした彼女の完全復活。
そして、
「剣道2段の太刀筋を知ることになるわよ!?」
刃の幅だけで3メートル、全長で30メートル。万全でなければ逆に支配される4本の妖刀、白と桜、黄金と真紅の刀身が〔ステージ4〕の〔才能〕の威容を夜空へと示した。彼に、力の論理に支配された青山に、より強い力をもって退く理由を与えるために。
そして、
『〔強大〕っていうか〔巨大〕な〔才能〕だったああああああああ!』
正義はこっそり大きく内心でリアクションをとり、不和と共に愕然とそれを見上げた。
そんな2人に気づくはずもなく、
「私は・・・間違っていない」
青山はグラウンドを後にした。




