わかってない
「ホ、ホントに俺・・・ごめんなさい!」
不和が稼いでくれた時間で校舎裏にまで回りこみ、座らせたチヒロを介抱していた正義に円藤はそう言った。
「お、俺、脅されて!あの風紀委員に!だから、不和さんと縁之下くんを利用して、虹村さんを潰せって・・・」
言葉は尻すぼみになり、しかしそれは正義の予想が当たっていたことを明らかにした。
だから正義は言った。
「僕は君を許せない」
「は、はい」
正直に、自分の気持ちを。
「だけど今は逃げて」
どこまでも優しい言葉を。
「でも・・・」
「いいから、行って!」
押し殺した大声で円藤が怯む。後ずさりし、闇に消える。
そして2人は向き合った。
互いになんと言っていいのかわからず、少しの沈黙が空気を支配する。
そして、
「僕は、戻る」
正義が立ち上がり、不和の下へ戻ろうとする。
だから、
「駄目だよ」
チヒロが言った。
「行っちゃ、駄目だよ。セイギは関わらなくていいの・・・」
「・・・どう、して?」
背中を向けた正義が疑問を返す。堰が壊れたようにチヒロの想いが溢れ出る。
「わかってるでしょ!?私が間違ってたって!〔結果〕が大事なんだって、いつも偉そうにセイギを叱って、追い詰めて、〔否定〕して!1年ぶりに会ったら、いきなり手のひら返したような態度とって!こんな〔結果〕を招いて!私、私は・・・」
口からは怒声、瞳からは涙が出ていた。
「セイギにとって・・・害なんだよ」
正義に言ってきたこと、正義が信じてきただろうこと、それら全てを〔否定〕する言葉。
〔否定〕してきたことを〔否定〕する言葉。
そして少しの時間が過ぎて、
「もう、私に巻き込まれないでいいの」
チヒロが苦渋の言葉を吐いた。
そして、正義は応えた。
「わかってないよ、チヒロ姉は」




