不和
「逃げろ!縁之下!」
そう言った不和を見上げて、正義は目を白黒させる。動かない正義を見かねて、不和がさらに叫ぶ。
「俺は利用された!短気起こして、お前らにヒドイことしちまった!だからアイツは俺が止める!」
それは断片的で不器用な言葉だったが、彼の罪滅ぼしの意思を明確に正義に伝えた。
だが、
「そんなの、駄目だよ!」
正義はそれを鵜呑みにすることが出来なかった。
しかし、
「痛いのは慣れてる。それにお前、言ったよな?〔無視〕はしないってよ?だったらその姉ちゃんは〔無視〕していいのかよ?」
「あ・・・」
正義はチヒロを見た。向き合うことを恐れるような、心の痛みに耐えるような瞳が正義を見る。青山の言葉で正義とチヒロの関係に何かを察したらしい不和に、正義は思わず問いかける。
「どうして、僕のために?」
「・・・俺は〔腐ったヤツ〕が大嫌いだ。仲間を傷つけるヤツ、大事な誇りを傷つけるヤツがな。だから俺の大事なものの代わりを買ってやるって言ったお前が許せなかった」
「あ・・・」
「だけどお前を潰そうと思ったら、そこにばあさんを手助けする良い奴がいた。根気強くばあさんの話を聞く良い奴がいた。俺が短気だったんだとわかった。だから・・・」
フワリと巨漢の長い三つ編みの先端で赤いリボンが揺れる。
そして、正義がそれでも反駁する言葉を紡ぐ前に、
「円藤!コイツら連れてけ!丁重に扱えよ!?俺から逃げなかった、大事なヤツだからな!」
「は、はいい!」
不和がそう言って円藤が応じ、
「逃がすと思うか?」
持ち直した青山に立ち塞がる。
だから正義はチヒロに肩を貸して走り出す円藤の後を追いながら、不和に言った。
「すぐ戻る!」




