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おあいこ

「私が間違っている、だと?」



 目の前で怪訝に目を細め、青山は拘束していた不和を蹴り飛ばして正義に向き直る。青山の発する圧力に気圧されそうになりながら、それでも正義は立ち上がって言った。



「は、い。アナタの言ってることは、お、おかしいと、僕はそう思う」

「何がおかしいというのだ?それにどうして、私にそれを向けている?」



 青山が向けられた噴射口を見た。だから正義はまずそれに答える。



「僕は、ア、アナタを疑っているからです」

「疑っている・・・?」



 怪訝な色の瞳。だが正義は迷い無く言った。



「質問に、答えてください」



 明らかな疑惑の意思をもったその言葉に眼光を強める青山。しかし正義は一つずつ言った。



「どうして僕の過去を、無視されてた事実を円藤くんが知っていたと思います?」

「そんなこと私が知るわけがない」



 即座に言葉を返す青山。しかし正義は問いかけをやめない。



「違う。アナタが教えたんだ。アナタは風紀委員だ。僕ら新入生の個人情報を持ってる」

「だから円藤ではなく私が犯人か?そんなことで・・・」

「それだけじゃない!僕には手を出さない、悪いのはチヒロ姉だと言っておいて、円藤くんはどうしてチヒロ姉の弱点が僕だと思った?」

「そんなこと・・・」

「おかしいんです。チヒロ姉が本当に僕を自分の引き立て役くらいに思っていたのなら、僕が人質になっててもチヒロ姉は戦ったはずだ!円藤くんは自分の口で僕がチヒロ姉にとって大した価値がないって言ったのに、どうしてそれを利用できるんだ!?アナタだけが自分に都合のいい〔結果〕を手にしてる!」



 正義は大きく息を吸い込み、叫んだ。



「そして・・・」



 正義はあの混乱の中、無意識が〔拾った〕違和感を突きつける。



「チヒロ姉の話すアナタは、親切で優しい人だった!毎日花壇に水遣りをして、トイレの掃除も進んでやる人だった!それなのに・・・」



 正義はツッコんだ。



「チヒロ姉を追い詰めて有頂天になってるアナタは、まるで悪役だ!」

「セイ、ギ」



 チヒロが今にも泣きそうな痛々しい瞳で、自分の言ったことを仔細に記憶していた正義を見る。



「・・・君も愚かだな。感情と論理がごちゃ混ぜになって、何の的も得ていない」



 青山が納得していない返しを寄越す。だが正義は黙らない。



「そう、でしょうね。僕の考えは、ただこの場で見て、チヒロ姉から聞いた話を自分なりに整理しただけだから。で、も・・・」



 正義は彼を振り返る。



「一人だけ真実を知ってる、人がいる」

「あ・・・」



 そこには円藤の姿があった。拒否するように後ずさる彼に正義は言葉を投げる。



「円藤くん」

「ち、違う。俺は・・・」

「このままじゃあ、君はこの学校から追い出される。この人が、君を見逃すわけがない」

「あ・・・」

「でも、この人だって間違った。だったらおあいこだ。今ならまだ・・・」



 正義が円藤を促す言葉を放とうとした、瞬間。



「おあいこ、だと?」



 正義は言葉を中断し、彼を見た。



「私と円藤が、おあいこだと?」



 そこにはたぎる瞳をもった青山がいた。

 それは我慢ならない言葉に、怒りの炎を燃やす。

 そして、



「私とそんなヤツを、同列にするな!」



 ゴワ!



 音と同時、青山を中心に風が起きる。



「や、やめて下さい!」



 正義がそう叫ぶも、青山の目はもう正義を見ていない。



「〔刈り〕の時間だ」



 その足がまっすぐ彼女へと向かう。彼女を〔悪〕だと断罪した彼が何をしようとしているのか正義にはわかった。

 だから、



「駄目だ!」



 正義は満身創痍のチヒロの前に立った。

 だが、



「邪魔だ」



 制止する正義を青山の右腕、すでに鉄色を宿した肌が一撃でなぎ払う。チヒロの前に立ち、



「これで私の正しさは証明される」



 青山が振り上げた腕を叩きつけようとした時、



「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 金の三つ編みを靡かせる巨体が体当たりで青山を吹き飛ばした。


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