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やはり私は間違っていなかった



 ズドーン!!!



 チヒロは朦朧とする意識の中でその聞き覚えのある音に気づいた。ぼやける視界で見やれば、見えない炎を持っていた優男が間近で巻き起こった黒煙と爆音に驚いて尻餅をついていた。

 そして、



「うおおおおお!?」



 声。

 それはチヒロの間近、不和が上げた叫びだった。

 つい先ほどまで彼女のそばにいた不和が、一瞬で数メートルも吹き飛んでいたのだ。

 そして、



「セイギ・・・?」



 千切れたパジャマの袖をなびかせ、右肘からもうもうと黒い爆煙を上げた少年がそこに立っていた。少年の手が口に巻かれた猿轡を剥ぎ取り、チヒロが毎日聞いている声を発する。

 しかし、



「・・・許さない・・・許さない」



 チヒロはそんな声を聞いたことがなかった。

 チヒロはそこに濁った瞳の正義を見た。



『え・・・?』



 彼はチヒロに一瞥もくれず、再びロケットブースターが火を噴いた。一直線に不和へと〔駆動(ダッシュ)〕する彼を、



「邪魔するな!お前はあの女に騙されてんだよ!」



 体勢を立て直した不和が正義にそう叫んだ。。

 しかし、



「〔飛翔(ジャンプ)〕」



 正義がそう呟くと同時、彼の姿が消えた。

 ドン!ドン!ドン!と連続して三度爆音と炎が閃き、不和が正義の姿を見失う。

 そして、



「セイ、ギ・・・?」

「〔逆噴射(リバース)〕」



 大男の背後、頭上に現れた正義のロケットブースターが不和を凶炎で吹き飛ばした。




「許さない許さない許さない許さない許さない」



 正義の身体が地面に着地、衝撃を殺しきれずに無様に転がる。しかし呪詛のような言葉を放ちながら正義はロケットブースターの轟炎で吹き飛ばした不和に再度の〔駆動(ダッシュ)〕。背中を焼かれてもまだ立ち上がった彼に突進する。



『絶対に許さない』



 正義の意識は一色に染まっていた。

 黒い感情。

 チヒロを脅かす者への敵意と殺意。

 しかし、



「がああああああああああああ!」



 正義の攻撃で短気な不和の怒りは頂点に達していた。

 ギリギリまで正義を引き付けた不和がその突進をかわし、代わりに右ひざを正義の腹へと叩き込んだ。とてつもない衝撃がみぞおちをつきぬけ、しかしロケットブースターの推進力を殺しきれなかった正義が地面に跳ね飛ばされていく。ようやく動きが止まったところで呼吸が戻るも、あまりの激痛が少年の動きを完全に止めた。

 だが、



「許さ、ない!」



 正義の右ひじがさらに火を噴いた。使用者本人の状態に関係なく噴射が出来るそれは正義の身体をおまけのように引きずってその右拳を不意を打たれた不和の胸へと激突させた。よろけた不和がしかしそれでも正義の右拳を掴む。



「うらああああああああああ!」



 不和が左の拳を正義に放つ。のけぞって意識を失いかける正義を、掴まれた右腕によって引き戻される。もう一度打たれたら気を失う。

 だが、



『チヒロ、姉・・・』



 視界の端に、軽い脳震盪を起こしてよろけ、それでも動こうとするチヒロが見えた。



『僕は・・・何も守れないのか』



 正義がそう思った瞬間。



「もう十分だ」



 掲げられた不和の拳を、鉄色の肌の五指が掴んだ。

 どこかで見たことがある光景に正義が目を見張ったとき、不和の手が右腕から離れた。



「う、がああああああああ!」



 背後から両腕を掴まれた不和が鉄色の五指がもたらす握力に膝を折る。そして、



「やはり私は間違っていなかった」



 鉄色の肌を首筋にまで顕現させた長身、青山が言葉を放った。


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