そうそう僕はピンクのヤツをコノヤローっ!ってね!?
確かにチヒロは怒っている。だがそれだけではない、何か〔固さ〕のようなものを、正義は感じた。
『どうして・・・?』
そう疑問を巡らせた正義に、
「え~?や~だっ!」
ネシンがさらに身体を寄せてきた。
そのため正義は『チヒロ姉とは違う匂いと柔らかさだなヒヒッ!って去れ色欲うううううううう!』というデビル正義とエンジェル正義の戦いを勃発させた。実際は身を強張らせて冷や汗をかき、若干顔を青くしているだけの哀れな高校男子でもあった。そんな彼をさらに追い詰めるように、
「セイギは私と買い物にきたのよ?」
「試着室の前に放置してたのぉ、だ~れだぁ~?」
「あれはセイギの選んだのを着てハアハアさせるためよ!」
『やっぱりアレはそういうアレだったのかああああああああ!?』
正義がツッコむと同時、チヒロが見せ付けるように眼前にグイっと右手を突き出して、
『試着してたピンクのヤツを突きつけないでなんか恥ずかしいいいいいいいい!』
正義がガタガタ震えだしている間にネシンが笑う。
「え~?でもセイギくんは黒のほうが好きなんだよぉ~?」
『ちょっと待って!?それどこ発信の情報なのネシンさん!?』
「どういうことセイギ?」
ギシっという音を伴ってチヒロが正義を凝視し、
『目からビーム出そうだよチヒロ姉ええ!?僕もわかんないよおおおお!?』
「だって一昨日私のスカートの中、じっくり見たもんね~?」
『そうそう確かに黒でしたね、ってそういうことかあああああああああ!?』
さらに怒るチヒロと震え上がる正義をまたネシンが笑う。
「どうせ得意の嘘でしょ?」
少し冷静を取り戻したチヒロがそう言って、
『おおおおやっぱりチヒロ姉は僕の味方に・・・』
「だってセイギは私の着たピンクを脱がすって言ったもん!」
『そうそう僕はピンクのヤツをコノヤロー!ってね!?うおおおいそんなこと言ってませんけどおおおおお!?今この場で嘘ついたのはチヒロ姉のほうだよおおおおおおおお!?』
正義は期待した自分が馬鹿だったことを悟る。
「私の黒は剥ぎ取るって言ってたけどぉ~?ご、う、い、ん、に~」
『ちょっと待ってこっちも嘘つき出したよおおおおおおおおおお!?』
さらに混沌としてきた状況に打つ手はなく。
「私のほうが人並み以上に柔らかいもんっ!」
「私のほうが神がかり的に気持ちイイよぉ~」
2人の女子は正義を挟んで睨み合った。
そして、
「2人ともっ!」
正義がついに動いた。
少し強い調子の声と高速の動きに、チヒロとネシンが目を見張る。
それは、
「なんでもするからやめて下さいお願いしますうううう!」
耐えられなくなった正義必殺の土下座だった。しかし叫びに応じたのは沈黙であり、
『またすべったみたいになったああああああ!?』
と正義が顎をガクガク言わせて汗を流していると、
「・・・アハハハハハハハハ!」
顔を上げた少年の前で、ネシンが涙を滲ませて笑っていた。『そういえば前も僕の土下座で笑ってた。ツボなのかな?』と正義が気づく。
そして、
「まあいっかぁ~。面白かったしぃ~、今日は引き下がってあげよぅ。だって〔偶然〕会っただけだし、ね~?」
ネシンがそう言って正義の身体からスッと離れた。しかしなおもチヒロの烈火のごとき眼光がゆるむことはなく。
「人間をおもちゃにしないで」
『チヒロ、姉・・・?』
正義が疑問を抱くほど強い意志をこめた言葉を放った。しかし、
「や~だよぉ~」
ネシンは微笑を称えて余裕のままその場を去った。
そして正義は、
「チヒロ姉!?」
突然その場にへたりこんでしまったチヒロに大いに慌てた。




