ネシンとチッヒー
するとなぜかネシンは苦笑。
「え~っとぉ、セイギくん?」
「は、はい?」
「ここどこだかわかって言ってるぅ~?」
言われて正義は周囲を見回し、
『見るべきではなかったああああああああああああ!』
と耳まで真っ赤にして何度も首を縦に振った。
そして、
「つ、つまり、お、お買い物、ですか?」
「うん。この子にお礼もしたかったしねぇ~」
「お、礼?」
「うん!レッドデスティニーロープってヤツぅ~?」
ネシンはそう言うと、抱いたサンマを一撫でしてから彼を床に降ろした。普通こういった施設に猫を連れてくることは許されないが、〔なぜか〕彼女の行いにも、勝手に去っていくサンマにも誰も注意を促さない。
『おか、しいな?』
「あ、そうだ!」
正義はネシンが何か思いついた表情を浮かべたことで嫌な予感に捉われ、そのことについて考えることを中断した。案の定。
「セイギくん、選んでくれない?」
『さっきと同じ展開いいいいいい!?』
正義がこれ以上周囲からの興味の視線に耐えれるわけもなく。
「あ、そ、僕は・・・」
となんとか断ろうとした。しかし、
「え~。いいじゃんっ!チッヒーのは選んでるんでしょぉ~?」
『よ、よくないいい!って、チッヒー?それってチヒロ姉のこと・・・?』
考えている間に正義はネシンに身体を引っ張り上げられた拍子に腕を組まれ、
『着やせするタイプですかああああああ!?もうここで死ねよマサヨシいいいいい!』
悲しい男の本能によってネシンが当ててくる胸のサイズを左腕側面で感知した自分を呪った。
「あ、えっと、その・・・!」
裏返りかける声で正義がモゴモゴ言っていると、ネシンの口が疑問を口にする。
「ねぇ、セイギくんってさぁ~?」
「ひゃ、ひゃい?」
「どうしてチッヒーの腰巾着やってるのぉ?」
言葉に、正義の意識が少し冷静になった。
『腰、ぎんちゃく?チッヒーって、チヒロ姉のこと、だよね?』
「だってさぁ~?いっつも怒られてるんでしょぉ~?嫌じゃないのぉ?手下と親分みたいでぇ~。正直ぃ・・・?」
ネシンはそこで間を置き、少しの微笑を含んで言った。
「うざったいでしょぉ?」
『うざ、ったい?』
ネシンの言葉がチヒロとの数々の思い出、そして〔運命〕となったあの日を想起する。
「だってぇ、怖いから言うこと聞いてるんでしょぉ?」
ネシンの言っていることが、正義にもよくわかった。
少年とチヒロの間には、そのような客観的事実も確かにあったからだ。
だから正義は、
「僕、は・・・」
ネシンに答えを返そうとした。
しかし、
「セイギから離れて、ネシン」
1人の少女が2人の前に立ち塞がった。それは騒ぎを聞いても服を脱いでいたためすぐには出て来れなかったチヒロだった。慌てて出てきたようで、髪も服も乱れている。そして今度は2人が知り合いなのだとハッキリと気づいた正義は、怒っているらしいチヒロを見て、
『チヒロ姉が、緊張してる?』
正義はチヒロの表情を見てそう感じた。




