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ち、違うんです!この人は頭の病気で・・・!

「じゃあ明日ね?」



 円藤との一件、その翌日。

 正義はチヒロと駅から徒歩20分のアウトレットモールにやってきていた。

 その理由は単純だった。

 まず昨日の帰路でチヒロの機嫌をとろうと正義は躍起になった。

 すると彼女が「・・・買い物、行きたい。服、とか」となぜか罰が悪そうに言い出した。

 正義がそれに乗ると「私のはセイギが選んで?セイギのは私が選ぶから」と言った。

 そして正義はお出かけの本当の理由に気づいた。

 それは単なる彼女のわがままでは無い。



『僕が色々混乱してるから、気を遣って・・・』



 だから気分転換を提案した彼女に正義は言った。



「うん、いいよ」



 そして正義はランジェリーショップの試着室の前から動くことを禁じられた。

 背後のカーテンの中には、正義が選んだ下着を試着するチヒロがいる。

 そう、〔正義が選んだ下着〕を、だ。

 どうしてそんな事態になったのか、そこまでの過程を正義は思い出す。

 まずチヒロが正義をここへ連れてきた。最大で〔ステージ8〕まである〔才能の階級〕のうち、〔ステージ4〕であるチヒロの腕力に〔ステージ1〕の正義の抵抗はむなしく散った。そして色とりどり、形さまざま、仕組みもろもろ、セクシー&キューティな品々に包囲された正義は、



『赤巻紙、青巻紙、気巻紙!赤巻紙、青巻紙、気巻紙!赤い水玉、青い豹柄、黄色のスケスケうおおおおおおおおおおおおおおお!?』



 と早口言葉で状況を誤魔化そうとして失敗、錯乱しながら頭を抱えて地面に蹲った。そこへチヒロがやってきて、



「ねえ、どっちが似合うかな?」



 それぞれ黒とピンクで色彩を統一されたブラとショーツを声に振り向いた正義に掲げた。

 だから、



『いやあああああああああああああああああああああ!』



 正義は乙女のような無言の悲鳴を乙女の集う聖域で上げ、慌てて目を覆う。



「ど、どっちって!ぼ、僕に聞かないでよ!」

「え?どうして?」



 チヒロが心底からキョトンとした声と瞳で促すので、正義は当たり前のように言った。



「だ、だって僕には関係ないでしょ!チヒロ姉の下着なんて!」



 するとチヒロが鋭い目つきになった。



「関係ない?関係ないって言った?」



 チヒロが怒っている。その事実に「あ、えっと・・・」と瞬時に萎縮した正義が口籠っていると、チヒロが厳しい目つきのまま言った。



「いい?確かにこれは私が着るものよ?でも・・・」



 そして少女は言い切った。



「どうせセイギが脱がすことになるんだからちゃんと選びなさい!」

『何を言ってるんだこの人はああああああああ!?』



 正義はチヒロの爆弾発言に反応した周囲の女性客の視線を一身に受け、「ち、違うんです!この人は頭の病気で・・・!」と言い放つが、



「さあ!どっち!?」



 とチヒロに鬼も殺さんばかりの剣幕で迫られて、正義はやむなくピンクの方を指差した。という顛末であった。その上チヒロは何を思ったか正義に「そこにいてね?」と試着室の前から動くことを禁じた。これは初心な正義には苦行以外の何ものでもなく、



『み、みんながこっちを見てる!ち、違います!これは冤罪なんですうううう!』



 と、周囲の女性客が向ける『あらあら可哀想な彼氏さん』という微笑ましい眼差しを『この犯罪者予備軍っ!』という視線であると勘違いするくらいには追い詰められていた。

 そしてチヒロはどこまでも正義の行動と癖を読んでいた。正義がその視線や下着から意識をそらそうと目を瞑った途端、彼女は衣服を脱ぎ始めたのだ。

 つまり五感の一つを自ら遮断しそれを補完するため鋭敏になった正義の耳にはチヒロがわざと音を立てて脱ぎ去る衣服の音が鮮明に届く。

 つまり〔妄想癖〕のある正義は、



『見える!見えるぞ!カーテン越しにもチヒロ姉の姿が耳からの高感度情報と僕の妄想による補完によって、ってばかやろおおおおおおおおう!?』



 と、最終的に正義は目を閉じ耳を塞いで試着室の前で蹲ってしまったのだった。

 そして、



「まあああああああああああああああ!?」

「うひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」



 正義は突然近くから響いた奇声に乙女のような悲鳴を上げた。そして尻餅をついて自然とアがった視線が捉えたのは白のチュニックワンピースの裾と、その上に収まる微笑。



「にゃ~」



 そして正義の飼い猫であるはずのサンマを抱えた彼女の名は、



「あ、えっと・・・ネシン、さん?」

「あ~、それは覚えてるんだぁ?狙い通り~!」



 そう言って妖艶に笑ったのは金の光沢を持つ銀髪を揺らした不思議な紫の瞳の少女。先日正義に声をかけたネシンだった。正義は状況が掴めず、思わず聞いていた。



「あ、あの、どうしてここに?」


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