君は焦がれる人間を間違えた
言葉はそれだけでは終わらない。
「ぼ、僕にチヒロ姉を紹介しろって、脅してきました!こ、断ったら、教材を焼かれました!」
青山の不審なものを見る視線と、真実を晒されてうろたえる円藤の視線が顔を上げた正義を捉える。
しかし、
「で、でも、円藤くんは勘違いしてるんです!」
正義の言葉は止まなかった。
「ぼ、僕は、不和くんとは高校で初めて会った!」
少しずつ、
「不和くんに円藤くんを潰させようなんて思ってない!」
一つずつ、
「そ、それに!チ、チヒロ姉は僕にとって大事な人なんだ!」
だが確実に、
「だ、だから君みたいな、その、軽そうな人には紹介したくない!」
正義は青山に事実を、円藤に自分の行動の理由を伝えた。
だが、
「だから僕は、僕は君の言葉を拒んだんだ!だから、それで・・・」
「それがどうした?」
我慢出来なくなった青山がそう遮った。
「それがどうした?だから私は彼を排除する。自分の気に入らない人間を〔腐ったヤツ〕と呼んで暴力で潰してきた不和・良もな」
『不和、くんが、そんなことを・・・?』
明らかになった事実に正義が戸惑っていると、さらに青山が言った。
「私と君は同じだ。彼らの存在を否定する私達は」
だがその言葉に、正義は反感を覚えた。
だから、
「ち、違う!」
そう言った。だがそれは青山の苛立ちを助長する。
「何が違う?君はつい今しがた彼を否定したはずだ」
「そうです!で、でも違うんだ!」
「何が違う!?」
「つ、つまり、だから・・・!」
自分の意思をなんとか言葉にしようとする正義に、しかし鉄色の肌の長身は聞く耳を持たなかった。
「では勝手にしろ。理解不能だ」
青山はそう言うと、円藤に向き直り、
「ヒッ!?」
何の興味も見出せない瞳を無言で逸らしてその場を去った。すると彼の正面から一人の影。
それは、
「あ、セイギみっ・・・け?」
正義を見つけて嬉々とした色を浮かべたかと思うと、青山の顔を見つけて不穏な空気を感じ取ったチヒロだった。
「君は焦がれる人間を間違えた」
青山が小さくチヒロに囁いて、消えた。




