地元では有名な〔熊殺しの不和〕
「あ」
正義は写していた黒板の文字を書き損じた。自然な動きで、これまた愛らしい黄色い熊の形をした消しゴムへと手を伸ばし、
「「あ・・・」」
同じく手を出していた不和の手と正義の手が触れ合った。
見詰め合う2人、手に残った温もりが少年達の頬に伝わり赤みを帯びる。
数瞬の沈黙。
そして、
「・・・ゴ、ゴメン」
「お、おう」
さらにわずかばかりの間を経て、
「「あ・・・」」
全く同時に2人が互いを見て、目を逸らす。
つまり、
『『甘酸っぱい恋の予感かああああああああああああ!?』』
2人はすぐに自分の反応が気持ち悪いものだと気づき、お互いに気づかぬまま奇跡の内心シンクロを果たした。先に正義が持ち直し、おずおずと言う。
「ふ、不和、さんのだし。さ、先にどうぞ」
「い、いや、お前使えよ」
「い、いや、でも」
やはり恐怖に押されて先に手が伸ばせない正義が言いよどんでいると。
「・・・仕方、ねえな」
と、不和が先に消しゴムに手を伸ばして、
『嘘、だろ・・・?』
熊の首の部分と胴体の部分を両手でひねり出した。
『や、やめろおおおおおおおおおおおおお!?』
正義が内心で悲鳴を上げている間に、不和の手で愛らしい笑顔の熊が無抵抗のまま歪んでいく。そして、ミチっ、というゴムの切れる音と共に首と胴体が永遠に別れた。
『地元では有名な〔熊殺しの不和〕ああああああ!?』
正義がブルブル震えている間に、不和が仕留めた熊の首を差し出す。
「コイツを、〔デス・ペナルティ〕を大事に・・・してやってくれ」
「あ・・・う、うん」
『君が〔デス・ペナルティ〕を〔死刑〕にしたんですよおおおお!?』
ツッコミつつ恐る恐るそれを受け取った正義は不和に顔を上げた。
そして彼の瞳と鼻に光るものを見つけ、
『涙目じゃないかあああああああ!そして芯が刺さった鼻から赤いのがああああああああ!』
こっそりツッコミながら放課後になるまで不和と一緒に授業を受けるハメになった。




