4.奴隷買いたいです。お幾らですか?
いつもより長いです。
ごめんなさい。
絵心ない地図を頼りに商館を目指す。
街の住民に道を聞きながらだったので、思ったよりだいぶ時間が過ぎてしまったようで日が傾き始めていた。
酒場を出た時は、まだ日がテンテンと明るかったのに今は、もう夕暮れ。
カラスもカァーカァー鳴いていてもイイ頃合だ。
戻ろうか、すこし迷ったが、ここまで来たし今後の勉強の為にも商館へ向かってみる事にした。
あくまで、勉強の為。
この世界の状況を知るのは大事な事だと思うんだよ。うん。
大通りに出たらすぐに商館を見つけた。
思ったより大きな店?いや、館に近いなこりゃ。
ちょっとしたスーパーマーケット並みに大きい。
屋敷の周りは、フェンスで覆われており、黒くて大きなワンワンが大きなお庭をウロウロしている。
門扉もとても大きく3メートルはあるんじゃなかろうか。
これ、アポ必要だったんじゃね・・・?
門扉の前でボケーと突っ立てると、庭の奥からイソイソと紳士服を着た爺さんがやってきて門扉を開けてくれた。
「いらっしゃいませ。どうぞこちらへ」
問題なく入れたので爺さんについていくことにした。
その間、ワンワンはこっちをジーとみて首だけで俺の動きを追ってくる。怖い。
門扉から歩いて曲がり角を抜けると、アンティーク調の玄関扉が見えてきた。その頃にはワンワンはどこか行ってしまっていた。
屋敷の扉を爺さんが精一杯の力で開けてくれる。
ほんと、今にも死にそうに開ける。頑張れ爺さん。
やっとの思いで開けてくれた扉の先には、数人のメイドさんが俺を待ってくれたようで、
「いらっしゃいませ。ようこそ。『グリモワール商会』へ。」
と一斉に綺麗なお辞儀をしてくれるメイドさん。
何処の高級旅館だよ。
凄い御持て成しに少し引いた。
「こちらへどうぞ。」
ショートカットの髪の上に猫耳を生やした美人のメイドさんが先導して案内してくた。
うひょー、なんだれ。何処のモデルだよ!すげーよ!すごいYO!異世界!
・・・ハッ!
口から零れかけたヨダレを腕で拭いて、キリッとした顔で答える。
「・・・宜しく頼む。」
よし。
もう大丈夫。うん。
クールになれ俺。
メイドさんのスカートはすごく短い。今にも見えてしまいそうだが中々見えない。
お尻を黙って見ながらついていくと結構広めの客間に案内された。
しばらく待つようにお尻のメイドさんに言われたので素直に待ちます。
かわいいお尻だった。
お尻のメイドさんが出ていたって、その後すぐに豚がきた・・・・。
この豚。豚の癖に金ぴかの服に首周りにはキツネとかの毛がモフモフと付いており、その腕や指には金色の貴金属がピカピカと輝いている。
太った身体がよりいっそう、成金さをかもし出している。
何、この豚は?
「いらっしゃいませ。当店は初めてでございますでしょうか?。本日はどのような商品をお探しでしょうか?」
ノシッ。と椅子に座り込むと、椅子がギィギィと悲鳴を上げた。
しかし、見物のつもりできたんだけど。まいったなぁ・・・。
ここは素直に言った方がいいか?
「あ~、実は今日は、けん、いや。品揃いを確認したくてね。」
「品揃えですね?それはもちろん、古今東西の商品を揃えております。注文にいただければ、わたしの命に代えても、揃えて見せましょう。」
なに、このやる気!最低のしている筈なのに、この豚生き生きしてるしぃ!
「あー・・・すいません。今回、手持ちないんで帰ります。実は見物しにきたんですよ。ははは、すいません。」
なんだか悪い気がしてきたので、今日はこの辺にしておこう。
席を立つ俺を豚ちゃんが呼び止めてくれた。
「まだ、話は終ってませんよ?」と。「まぁ、見るだけならタダですし。覗いていきませんか?」と!
おお!!!
意外と話せる豚である。こいつとならいい酒が飲めるはず!
ここは見栄を張らず、そのお言葉に甘えて、自分が求める娘を要望した。
好みを一部始終相談すると豚ちゃんが、うーんと頭を捻りる。
「申し訳ありませんが、当店ではそこまでの娘は扱ってはおりません。」
ええー。ショックはでかい。
「ですが、ここまで来て頂けたのですから手ぶらと言うわけにはいきません。ですので一度、他の娘も見てみるのはどうでしょうか?」
おお!さすが豚ちゃん!ステキ!!
二言返事で「イエス!」と答えて、豚ちゃんと二人で客室を出る。
客室からそう遠くない、女の子が居る部屋まで案内してくれた。
扉を開けて部屋に入ると大きな鉄格子があり、その中に数人の女の子がいる。まるで動物園のようだった。
しかし、檻の中の部屋はきちんとされており、ベットから家具・化粧台まで何でもある、一級ホテルの一室のような感じだった。
おかしいのは部屋の前に設置された鉄格子。すこし、違和感を感じながらも見ていると、豚が勝手に解説を始めた。
「こちらへ。まずはこの娘から紹介させていただきましょう。」
一番近くの鉄格子の部屋に案内された。
鉄格子の中にはいると奥から薄い下着しか着ていない美少女がやってくる。
あ。やばい。鼻血でちゃう・・・
「種族は人間族になります。年齢は16歳。出身はコヒラ王国。文字の書き読みや礼儀作法も完璧です。」
「・・・宜しくお願い致します。」
丁重にお辞儀をしてくる美少女。
釣られてこちらもお辞儀してしまった。
「加えて、この美貌です。うちで紹介できる中では最高級品に近いです。」
ニッコリ笑う美少女。
身体に張付けになる変態な俺。
説明に勤しむ豚ちゃん。
「・・・です。価格は金貨2枚でサービスしています。どうでしょうか?」
「・・・おっ!おう・・いいね。うん。すごい。」
「そうですね。現金でお持ちでないのでしたら、当店では、魔術協会関係者様のみの分割払いも可能で御座います。」
あー。さっきの道具屋の娘もそうだけど、この人も俺のことを魔法使いとかだと思ってたのね。
真相言うとまずそうだなぁー。
でも、あの娘、もったいねぇぇぇ・・・はぁぁぁ。
でもなぁー・・・
・・・うっし。
買えるか判らんが最低金額言っておこう。
「うーん。今は止めとくよ。そうだね。今は銀貨20枚以下で買える娘いない?」
「銀貨・・・20枚・・ですかぁ・・・」
急にテンションダウンする豚ちゃん。
豚ちゃんと一緒にトボトボと部屋出てさっきの客間に移動した。
その間、考え込むようにずーと黙ってた豚ちゃんが急に元気になった。
「ああ!なにか実験用ですね!それならそうと申してくれればよかったのに!どうぞこちらです!」
え・・あ?実験?
張り切る豚ちゃんは客間を出て廊下を進む。
そのまま階段を下り地下へ地下へ。
地下2階のほど進むと石造りのいかにも、薄暗い幽霊が出そうな通路に出る。
明かりは通路の壁にある設置してある松明だけで、あまり明るくはない。
気持ち空気もジメジメしているように感じる。
どうぞこの部屋です。と豚ちゃんに続いて部屋に入る。
その部屋も同じように前面には鉄格子が付いていたがさっきとは違い、牢屋のようになっていた。
石造りの壁や床になっているだけで、ベットとかタンスとかそういうものは一切ない。
部屋の奥に進むと、人間のしゃべり声と明かりが見えてきた。
鎧をきた兵士さんが立ち上がり豚に敬礼を行う。
俺にもしてくれた。
「どうぞこちらです。」
鉄格子を潜るとまだ先があり、奥に続く。
暗い中。数分間、歩いていくと木製の扉が見えてきた。
豚が扉の鍵を開けるとそこには、数十人の男女が鎖で壁につながれていた。
繋がれた男女達が豚を見た瞬間、一斉に声をあげた。
その中でも多かったのが罵倒と懇願。
豚が腰につけていたベルを鳴らすと、急に周りが静かになった。
「さぁ。着きました。どうぞお選びください。この商品でしたら1つ銀貨10枚で販売させていただいております。」
え?
「お選び頂きましたら、ここの長より商品のご説明もさせて頂きます。」
身長が1メートルもない小男が豚の後ろから現れて、お辞儀をした。
選べといわれてもなぁ・・・
正直、女性だけでいいんだけど。
「・・・失礼ですが、ご要望があればお受け賜りますが・・・」
とても似合わない低い声で小男が聞いてきたので第一要望として女性を希望している。と伝えた。
小男は奥にいた数人の男に命令を行った後、男数人が女の鎖をはずしていく。
時間がかかるそうなので、近くの木製の椅子で休んでいるように言われた。
俺が椅子に座ると豚ちゃんは次の仕事があるそうで、部屋を後にした。
しばらくすると、小男が女だけを連れてきた。
「・・・ご要望どおり女を集めました。全部で12匹になります。」
匹って。もはや人間扱いじゃないんだね。
それはそうと、連れてきた女の人を一人づつ観察させてもらう。
さっき豚ちゃんに見せてもらった女の子に比べるとやっぱり物足りない。
歳もバラバラだし、あんまり可愛い娘もいない。
表情もずっと起こってこっち睨んでる女もいれば、俯いて涙目になってる奴もいる。
服装に至っても全員バラバラ。布しか纏ってない子のいれば、さっき街で見た女の人の格好とよく似た服を着た人もいる。
中には鎧みたいのも着た人もいた。
「うーん。ねぇ。この人たちってどういう基準で、ここにいるわけ?」
小男についでなので聞いてみる。
「・・・元犯罪者や3度以上の返品・5年以上買い手が付かなかった者でございます。」
へぇ・・・いわくつきって奴ね。合点がいった。
通りでみんな、顔色が悪い。あんまりいい物の食べていないんだろ。
そんなことを考えていると、女達の一番奥で隠れるようにしている娘が気になった。
「ああ。アレでございますね。・・・おい。連れて来い。」
小男が俺の視線に気がついたのか、周りにいた男に指示を出し、その隠れている娘を引っ張り出してくる。
いや!っとか行ってたけど、最終的には俺の前に連れてこさせられた。
あ。
この子可愛いかも。
連れてこられたのは、ポニーテールの女の子。顔は結構整っている。
しかし、残念なことに右頬に大きな傷がある。
そのせいで、売れ残ったのかな?
「・・・この娘も10?」
「はい。・・・ご説明致しましょうか?」
「頼む。」
小男が語り始める。
・・・・
・・・
・・
・
長いので要約すると、『この娘はあまり従順ではないらしく、5回売れたが全て3日以内で返品された問題児。この娘の場合は返却なしで銀貨10枚でオネガイシマス。しかしプラス要素もあり、いまだ処女であるのは確認済みです。』
らしい。
あとよくわかんない地域の事いわれたが判んなくても問題ないだろ。
そかぁ・・・従順じゃないのかぁ・・・
難しいかな・・・
腕置くんで考え込んでいるとポニーテールの娘がこっちを睨みながら
「あんた・・・わたしを性奴隷にするつもりでしょ?ならあきらめなさい。絶対ムリだから!」
「・・・いえいえ。この方は儀式か、実験で使われるそうですよ?」
小男が余計なことをポニーテールに耳打ちした。
何じゃそれは・・・俺は悪魔か。
それを聞いたポニーテールは『死ね!』『偽善者』『呪われろ!!』とか叫んで暴れる。暴れる。
周りの男が取り押さえてるのでこっちに被害はないが、コレは酷い。
このまま、俺の印象が悪いままになってしまうのも嫌なので、小男にお前達の勘違いだと伝えた。
ほほーそれは失礼致しました。と小男が一礼して謝罪した。
ポニーテールが奥の部屋に連れて行かれたので、新たに違う可愛い娘を探す事にした。
今度は従順な~25歳位の女の子!要望を出した。
最初から要望はきちんと出したほうがいい。
そう気づかされた。
しかし12人もいた女が次々と奥の部屋に連れて行かれて・・・虚しいかな。残ったのは3人だけだった。
1人目、ロングヘアーに小さな角が2本生えた幼女。そう幼女。
しかも、コレは10歳以下だ。さすがに可愛いがベクトルが違う。
成長まで待てないし。
小男が説明しようと入った来たが、即却下した。
男に手を引かれて奥の部屋へ。
お父さんと娘みたいな・・・。
なんか少し微笑ましい後ろ姿だった。
2人目、同じくロングヘアーの少女。顔は整っている。磨けば確実に光るだろう。
しかし問題あり。
言葉が通じない。
そもそも『あうあうあー』しか言わない。
惜しいが、却下。
この娘も男に手を引かれて奥の部屋へ退場。
3人目、ツインテールのの猫耳。身長が140センチ位の小さい娘だった。
明らかに10代前半だが顔がとても可愛い。胸も出る所は若干ではあるが出ているようだが・・・えーい!腕が邪魔で確認できん!!
スカートの後ろでは白い尻尾が右左に隠れながら揺れている。
恒例の小男くんの説明時間が始った。わーい
「出身は『帝国テージ』。種族は猫人族と人間族との間に生まれた半猫人。年齢は13歳です。元犯罪者です。従順ではありますが多少口調に難があり、それで過去2回返品されております。読み書きは完璧です。」
犯罪者か。
「どんな犯・・・」
「殺人です。」
即答かよ・・・こえぇ。こんな可愛い顔して殺っちゃったんかよ。
「殺害した相手は両親になります。」
「ち、ちが!私がやったわけじゃ・・・」
「黙りなさい。私が説明中は口を挟まないでいただこう。それにわたしは事実しか言っていない。経緯がどうあろうが結果が全てだ。」
「ぐッ・・・」
少女が血が出るんじゃないくらい下唇を噛み締めて、小男を睨む。
ちょっと・・事情あり気な感じ?
「こほん。失礼致しました。あと信憑性はかけますが、本人の申告では処女ということになっております。」
「ほうほう。」
「以上がこの娘の説明になりますが、なにかご質問がありますでしょうか?」
いや・・・特にないなぁ・・・この子でいいんだけど。
13歳かぁ・・・まだ少女だしなぁ・・・
せめてあと3年後には会えたらよかったんだけどなぁ・・・
でもほかにいないしなぁ・・・
「かなりお悩みのようで・・・それでしたらどうでしょうか?先ほどの娘を一緒に買われていただけるのでしたら本来、銀貨20枚必要な所を銀貨10枚でご販売いたします。その代わり返品はお受けできなくなりますが・・・・。どうでしょうか?」
なにまじか?!そのまえにさっきのってどれ?!ポニテの娘か!あいつなのか!
案の定、連れてこられたのはポニーテール。
しかし、先ほどとは打って変って随分大人しくなって帰ってきた。
「この娘でございます。残念ながらご希望の性奴隷には向きませんが、労働奴隷やうまくいけば戦闘奴隷として使うことも可能です。」
ほうほう。そうか。そうだよな。
ここは異世界だし。俺が襲われる事だってあるんだよな。
盾は必ずしも必要か・・・。
「この娘、戦えるの?」
「ええ。先ほどご説明いたしましたが、かなり薄まっていますが竜人族の血を受け継いでおります。今はさほどただの街娘と変わりませんが、しかる後、訓練を行えば必ずや成長するはずです。」
将来に期待か・・・。
よし!
「きめた!この二人にするよ」
ポニテがとても嫌そうな顔をして、猫耳ツインは目すら合わせてくれない。
二人はそのまま、さっきとは反対側の部屋に連れて行かれた。
それではわたし達も手続きを致しましょう。と小男に連れて行かれて部屋を後にした。
一番最初にお尻のメイドさんから案内された客間で待たされること30分。
茶菓子を食べつくしてケータイゲームで麻雀していると、コンコンとドアが叩かれ豚ちゃんがポニテと猫耳ツインを連れて現れた。
気づかれる前に携帯をポケットにしまう。
ニコニコ顔の豚ちゃんが席に座り、また椅子が悲鳴を上げた。
「それではお手続きをさせて頂きます。銀貨のほうは現金でよろしいでしょうか?」
用意していた袋から銀貨10枚を机の上に並べて豚ちゃんへ渡す。
それを受け取ると豚ちゃんは一枚の厚紙を机の上に出して、ここにサインするようにと求められた。
日本語でもOKだよね?
日本語で名前を書くと、豚ちゃんが声を上げて大げさに驚く。
「おおお!さすが魔術師様、原ナイ文字を普段からご利用になられおられているのですね!さすがでございます!」
なんか知らんが褒められた。
書き終えた厚紙用紙を豚ちゃんが受け取り読み上げていく。
特に興味ないのでスルーで。
「・・・あ。市民登録はされてないのですね。いいでしょう。コレも何かの縁!この際、私で処理やらせて頂きます。ええ!任せてください。」
ニヤニヤしている豚ちゃんが出すぎた腹を叩いて自己アピールしてくるとても気持ち悪い。
いろいろ行ってたがやっぱり、興味ないんでスルー。
最後に呪文みたいなもん唱えて首輪をポニテと猫耳ツインに着けさせた。
「以上でございます。長い時間、お付き合いいただき誠にありがとうございました。」
豚ちゃんが丁重にお辞儀をしてくる。
「どうぞこちらをお受け取りください。」
渡されたのはポニテと猫耳ツインが着けていた首輪と同じ形の指輪だった。、
コレを主人が着けると魔法の効果が発動して、きちんと専属奴隷としてこの二人を迎えられるとの事。
早速装備。
何事もない。
お出口はあちらです。と言わんばかりに出口まで案内された。
俺の後ろにはポニテと猫耳ツインが黙って付いて来る。
ポニテの機嫌がすっごく悪そうです。
商館の門扉まで来て、メイドさんと豚ちゃんが一斉に勢ぞろいして「またごひいきに~」と送ってくれた。
とっくに日は暮れており、周りは真っ暗。
街頭なんてないので、豚ちゃんが渡してくれたランプを頼りに道を進む。
しっかし、この帰り道。まったく会話がない。
先頭を歩くは俺。後ろにポニテと猫耳ツインというのはまったく変わらない。
いやーな雰囲気の沈黙。
耐えられない。
・・・そうだ!こういう時は自己紹介だ!うん、それがいい!
ヘルスでも、初めての娘の時は、まず自己紹介が先だったもんね☆
ちょうど、近くに座れそうな岩があったのでそこで自己紹介を始めた。
相変わらず、機嫌が悪いポニテは、愚痴を言うだけ言った後、最後に名前を教えてくれた。
名前は【リリナ】というらしい。
問題は猫耳ツインだった。
最初は、従順って話も猫被っていると思ったよ。猫だけに!
しかし問題はそこではなかった。小男から『口調に難あり』と言ってたわ。
そう。とんでもない。とんだジョーカーだわ・・・この猫ちゃん。
まぁ。話を聞いてくれ。
「よし。君の名前はなんて言うんだい?」
さわやか笑顔で、猫耳ツインが怖がらないように話しかける。
「・・・なに?その溝鼠のような笑顔は。」
は、い?
「そうね。私の事は、『リーネ様』と御呼びなさい。」
猫耳ツイン改め『リーネ様』答える。
「おいおい。オマエ何考えてんの?俺、ご主人様。お前、奴隷。分かる?」
「いい度胸ね豚。私と豚では元々の格が違うのよ?貴方の方こそ、理解出来る?あ、残念。豚ではムリね。」
い、意味ワカンネーし。なんだこいつ。
質問してんの俺だろ?
「ああ。だめ。餓鬼に弄られんの我慢ならん!お仕置きの時間だな・・・」
そう・・・私はご主人様。どんなことしても許されます。
そうどんな事でも。
来いよ!○グ○ス!!
俺のゴットハンドが猫耳ツイン改め『リーネ様』に近づく。
そう!まさに触手の様に!!
・・・・が。
「【下がれ。豚!】」
猫耳ツイン改め『リーネ様』と俺の間に風が吹いたとおもったら瞬間、大きく俺が吹き飛ばされる。
あ・・れ?
かなりの勢いで後ろの壁にぶつかった。
いたい。
なんだよ・・・いったい。
ゆっくりと立ち上がる俺。
その時にリリナの顔が目に入った。
さっきまで、あんなに怒ってた顔が、驚いた顔になっていた。
口なんてパクパクしてる
「ゼロアクションなんて・・・あ、あんた【加護】持ちだった・・・の?」
加護?なんじゃそりゃー。
リーネがリリナに答える。
「そうよ。雌豚。私はお前達とは根本的に違うのよ?理解出来た?」
リリナ。お前も雌豚決定なんだ・・・。
「おいおい。リリナ、なんだよ。【加護】って」
「気安く話しかけないで頂戴よ!・・・魔法や魔術とは別系統の力だよ。別名、神様の贈り物ってほど珍しい能力で持っているやつ、王族とか英雄とかそんなのだけって聞いたよ。てっ!あんた、魔術師の癖にそんなことも知らないの!?」
あーしらない。しらないね!
土で汚れた服を払いながらリリナにもう一度たずねる。
「対処法ある?」
「そんなの知るわけないだろ?!私だってはじめて見たんだ!」
なし・・・か。
「あら、まだ諦めないのかしら?意外と根性はあるようね、この豚は。」
リーネは腕を組んで俺を睨めつける。
あ~だめだ。だめだぜ・・・一発引っぱたいてやらないと、この手の奴は調子乗るんだ。我慢ならない。
そのまま歩いて、リーネに近寄る。
リーネの力で吹き飛ばされる。
また近づく、吹き飛ばされる。
「ちょ・・・あんた。もう止めときなよ。大怪我しちゃうよ?」
倒れた俺を心配してリリナが肩を貸してくれる。
意外と根は素直なのかもしれない。今度はゆっくり話してみよう。
だけど、まずは目の前の問題をなんとかしなくちゃ。
節々が痛い。筋肉痛の痛さにいている。
でもなんだか分かってきた。
リーネは磁石みたいに反発作用を利用してるんだ。
最初は風で吹き飛ばされているかと思ったけど、飛んでる最中。周りには風が吹いていない。
隣にいたリリナのポニテが風で揺れないのがいい証拠だ。
という事は反発作用で飛ばせる対象はひとつだけ。
大気か俺か。前者はないだろう。となると俺か。
そのままリーネに近づく。
「懲りない豚ね。いい加減にして欲しいわ。」
また、リーネと俺の間に風が吹く。
瞬間、手に持った石を目の前に放した。
今度は石だけが後ろに飛んでいく。
「あ!」
もう遅い。
俺はリーネの頬に一発平手打ちをした。
いい音が夜の街に響く。
リリナも開いた口が塞がらない。
リーネも打たれた頬を両手で押さえながら、しゃがみこんでいる。
「・・・いたい。」
「これが、大人を馬鹿にした結果だ!これからは豚とか言っちゃだめ!俺の命令は絶対だからな!」
スペシャル笑顔で俺がかっこよく答えた。
「いたい。いたい。いたい。いたい!!!」
リーネとの間で風が吹き、空高く舞い上がる俺。
高く高く天まで届けと・・・。
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最後に記憶しているのは涙目で怒っているリーネと慌てふためいているリリナの顔だった。
もちろん。上空からの映像です。