3.居酒屋で情報収集
西部劇に出てきそうな木製のドアを押して居酒屋に入る。
中に入った途端、むわぁっと立ち込める酒の匂いで鼻がやられ、足元がグラつく。
そのまま、ヨロヨロと千鳥足でバーカウンターへ。
ウロウロしていたウェイトレスを捕まえて、強くない酒を一杯とおつまみを頼む。
ウェイトレスさんは結構なお歳だったのでスルー。
特に話し相手もいないので酒とおつまみが来るまで、居酒屋の様子を監査して待ってみる事にした。
出入り口に一番近い席が、このカウンター。今は俺しか座っていない。
キッチンはこのバーカウンター席の奥になり、バーカウンターとは反対側に6人位が座れそうなテーブル席が20ほどある。
テーブル席のほうには結構人がいて、半分位の10席は埋まっている感じだ。
テーブル席に座っている連中も、ゲームに出て来る勇者とか戦士、魔法使いの格好している。
コスプレ大会かよ。と思わせるがコレがこの世界の常識的格好なのかなぁ。と思わせる。
そうこうしている間に酒とおつまみがやってきた。
木製の大ジョッキには黄色い液体が並々に注がれている。
おつまみは・・・トカゲ?の丸焼き見たいのが3匹。
トカゲを食べる趣味はないので皿を端に追いやる。
トカゲの件もあるので先ずは、ジョッキに口を近づけて先ずは味見。
うー・・・ん。色はビールに近いが、味はマッコリ?に近い。
まずくも無く。旨くもない感じ。アルコール分もそんなに強くないと思う。
チビチビと飲んでいたら、ジー・・・と見られている視線に気がついた。
見渡した時には気がつかなかったが、壁側、柱の影に隠れるようにボロボロの服着た女の子と同じくボロボロの服着た男の人が2人で立っていた。
まぁ・・・スーツ姿なんて目立つしなぁ。
気にせず、チビチビやり始める。
オーナーみたいなガタイの良い髭面のおっさんを見つけて、当初の目的どおり、娼婦はいるか確認を取る。
結果。
居るにはいるが、皆寝ているらしく、開店は夜から、その上、俺から比べると年齢はかなり上との事。
値段は、そんなに高くない。
少し悩んでみるが、異世界の物もどうなのか知りたいので、夜まで待ってみる事にした。
おっさんにタイプを伝えて、近くの宿の手配もお願いした。
前金で少々取られたが、支障はない。
うん。問題ない。
「時間になると町全体に鐘が鳴り響くから、そのときにココに来てくれれば案内するよ。」
とニコニコ笑顔で言われたので従う事に。
時間まで暇だし、街の事や世界情勢をおっさんに聞いてみた。
また、追加料金取られた。
まぁ・・・そんなに高くないので素直に払おう。
イイカモにされてるのかもなぁ。
色々教えてもらった。
この国の事。
この街の事。
周りの情勢。
街の住民の事。
さっきから騒いでいるコスプレ集団の事。
など。
正直・・・ふーんって感じ。
近所のペットが失踪したとかそんな事まで親切に教えてくれたが、・・・心底、どうでもいい。
まぁ・・・知って良かった事は、この世界の仕事について。
ギルドなる職安があって、定職に付かない人たちはそこで登録を行い、与えられた仕事をしてその場しのぎのお金を貰うらしい。
職安と言うよりは派遣社員だな。
この世界にもそういうシステムがある事に驚いた。
今は、まだ厄介になる事はないだろうが、近いうちに登録だけでもしておくのはありかもしれない。
しかし、斬った貼ったとかは無理!モンスター討伐も無理!!良くてお使い程度なら出きるんでそれで!
話していると、また、視線に気がついた。
さっきの男女がまだこっち見てる。
だんだん、気味が悪くなってきた。こいつら闇討ちとかしてくる強盗の類じゃね?
それとなく、おっさんへ相談。
笑うおっさん。
なんとこいつら、あのコスプレグループの奴隷らしい。
「主人が命令したのならまだしも、勝手に強盗・殺人とかの犯罪は出来ないようになっているんだよ」
ハハハハハっと大声で笑うおっさん。
へー。
奴隷制度があるんだ。
・・・ふむ。欲しいな。
所持金もある事だし、少し詳しく聞いてみるか。
知ってて損は無いはず!ハハ!
大まかに別けて、
労働奴隷・性奴隷・戦闘奴隷
3つがこの世界の奴隷の種類らしい。
殆どが、犯罪者・前の戦の捕虜・売られた者。
中には捕まった者も居るが、そこは暗黙の了解らしく、公にしていない。
あまりよくない事らしい。
買うには市民登録が必要。市役所の戸籍登録みたいなもんか?
価格はピンからキリまであるので詳しくはわからないとの事。
気になるなら見てくればいい。と近くの商館の地図を書いてくれた。
絵心ないなぁ。汚い絵が気になるがそこは、分かればいいだろう。
大分たった。
時間をおっさんに聞くが、まだまだ掛かるそうです。
暇なので、絵心ない地図を宛にして商館で奴隷でも見に行く事にした。
トカゲは結局食べなかったので、さっきからこっち見てる奴隷二人にあげた。
皿ごとそっちにおくと、きょとんとした顔をしてた。
ジェスチャーで「食べてOK」とやったら通じたのかものすごい勢いで食べ始めた。
食べ終わったのを確認後、皿をテーブルに戻し、ウェイトレスにお金渡して商館へ向った。
木製のドアを開けて出ようとした瞬間。
微かに「ありがとう」と聞こえたような気がした。