10話
主を守る絶対無双の防御をほこる騎士と、その騎士の背中を守られ、不敵に笑い続けることができる王がいる。
絶対の盾と、絶対の君臨者としての立場をわきまえた配置であるにもかかわらず、なぜか二人は隣り合って、互いに支え合いながら歩いているように見えた。
「まったく、どうしてそこから先に進めないんっすかね……」
――まぁ、どう考えてもサーシャ隊長がヘタレているからなんでしょうけど。と、後ろから、通常の軍馬にのりながら南門警備隊の護衛をしていたアルフォンスは、小さくそんな不満を漏らしながら「まったく、世話の焼ける……」と、一緒に仕事をしてきた友人たちの変わらなさすぎる関係に苦笑をうかべた。
「た、隊長……私たちは本当に大丈夫なんでしょうか?」
だが、その苦笑は彼の隣で轡を並べる、気弱そうな15歳程度の少年騎士の不安の声によってさえぎられた。
「ん? 不安なんっすか?」
「と、当然です……。私たちの魔法の腕では、まだロベルト隊長のように自分たちの魔力で作った武器で騎馬を覆うことなどできません」
そう言って怯える騎士の手には、真っ赤に燃える紅蓮の長槍が握られていた。
そのほかにも、うねり狂う流水の剣や、不可視の風の戦鎚を持つ騎士。真っ黒な岩の矢を射出する弓などを握る人間たちもいる。
だが、その体は何の魔法の保護も受けておらず、虫にたかられれば死ぬしかない絶望的なものだった。
騎獣たちに守られる生物系の形状変化を得た騎士たちとは違い、魔力を武装の形にする力を得た武装騎士たちは、魔術的防護手段を得ることはできなかった。
当然と言えば当然だろう。自分の得た武装を瞬時に隙間なく並べ、騎馬を守るシェルターにできるほど魔力の扱いに長けた人間はロベルトしかいない。いくら訓練しているとはいえ、一般騎士たちのそれ程の実力を求めるのはいささか酷というものだった。
だが、そんな彼らの虫のエサになりに行くような姿を見ても、アルフォンスはニパーッとした笑顔を浮かべ、へらへらと軽く笑う。
「いやいや、そんな気にする必要無いっすって。実際俺らが通る道は東門警備隊が虫蹴散らして作ってくれる道なんっすから、俺たちはその道を侵食してくる虫どもを遠距離からたたくだけでいいわけですし」
その言葉のとおり、無数の魔力によって作られた獣たちに蹂躙された道路には、虫一匹残っていない。いちおうその端からこちらに向かって浸食を開始している虫もいるのだが、それはロベルトたちの部隊が放つ無数の属性をもった武器たちの投擲を食らい、なかなか進行を進めることができずにいた。
だが、
「で、ですが、われわれの魔力は無限にあるわけではありません! いずれ尽きるときが来ます!!」
「なにより、投擲した武装はこちらに向かって戻ってくるわけではなく使い捨てです。一度作ったらある程度の連続使用を期待できる東門警備部隊と比べると消耗は明らかにこちらの方が激しい」
一人の騎士が放った不満の声に重ねるように、目の下にクマを作った騎士というより文官の職業が似合いそうな神経質な青年騎士が、渦巻く砂嵐によって構成されたハルバードを握りながら、淡々とした口調で事実を述べた。
この神経質そうな騎士は部隊の再編の際ロベルトの部隊から流れてきた騎士で、散々仕事をさぼりまくって東門警備隊に押し付けまくったアルフォンスに、何か思うことでもあるのか、明らかに憎々しげな視線をこちらに向けていた。
――だが残念。俺がそんな視線を向けられて興奮するのは、サーシャ隊長みたいに人をいじめるために生まれてきたようなS気質に美女だけっす!!
本人に聞かれたらいい笑顔で真っ赤な雷に焼き尽くされそうなことを考えながらも、やはりアルフォンスは笑みを崩さなかった。
「大丈夫大丈夫。今回俺が本気出しているから大じょーぶっす」
「まったく安心できませんね」
「ちょ!?」
根拠のないアルフォンスの自信あふれるセリフを、神経質騎士が切り捨て、少年騎士があわてる。
だが、アルフォンスはそんな彼らの暴言すらも笑って受け流しながら、
「ところで、なんで俺が君ら魔力を武装に変換する隊員たちの隊長になったんだとおもうっすか?」
「? 部隊のバランスをとるため……ですか?」
「ぶっぶ~。違いま~す」
――意外といい線ではあるっすけど……。と、さすがにロベルトの部下と言わんばかりの鋭い答えを出してくる神経質騎士に舌を巻きながら、アルフォンスは答えを示した。
「ロベルトが獣型の変換資質騎士の隊長に選ばれたのは単純明快。この数週間の演習でわかったことなんっすけど、すべての戦闘が生み出した獣たちによる間接攻撃で終わってしまう獣型の変換資質騎士――便宜上《使役騎士》と呼ばれる魔法使いたちは、その強壮無比な護衛のせいで、実は自分の近辺の警戒を怠りやすくなることが分かったっす。優秀な護衛をつけている貴族が油断しまくっているようにね。だからこそ、そういった細かい隙に気付いてフォローができ、なおかつ魔力運用のスペシャリストであるがゆえに、非常に魔力の燃費が良く長期戦でも活躍できるロベルトが隊長に選ばれたっす」
いわば、隊長が部下を守りフォローする形の正しい意味での上司配置。だが、アルフォンスはかなり特殊かつ圧倒的ではあるが、一応使役騎士に分類される男だった。
「だからこそ、俺にも使役騎士の弱点は適用される。近接では非常に無防備かつ、隙が多い。だからこそ、近接戦闘での対応力が高い君たち――魔力の形状変換が武器である人たち――便宜上《魔装騎士》と呼ばれている君たちに、俺の護衛についてもらう形状になったッす」
「それは……」
つまり彼らは、本当は戦力として期待されていない。アルフォンスの護衛として期待されている騎士なのだ。
「ふざけるなっ! 我々とて騎士だ!! 暴れまわり仲間を攻撃する敵を眼前にしながら、自分たちだけ大人しく、碌に仕事もしていない貴様を守るだけの職に就くなどできるわけがないだろっ!!」
「ちょ、バシリーさん落ち着いて!!」
「離せっ! メルヒオル!! わたしはいますぐあの虫どもに突撃し……戦士として汚名返上を!!」
その言葉を聞き激怒する神経質騎士――バシリー。彼が激怒した様子で騎馬の機首を返すのを見て、少年騎士――メルヒオルは慌ててその行動を抑える。
だが、そんな彼らの騒ぎをしり目にアルフォンスは肩をすくめた。
「何勘違いしてんすか?」
「なに?」
「俺が仕事してないって?」
「当然だ! 貴様がサボった分の仕事が一体いくつ私のもとへと回ってきたと思っている!! どうせ城壁壊したらあとはほかの部隊に任せて昼寝しようとか考えているんだろっ!!」
そんな一切自分を信用していないバシリーの罵声に、アルフォンスは「弱ったな~」とまったく言葉通りではないゆるい笑みを浮かべながら、頭をかいた。
「そりゃたしかに俺は仕事がめんどくさくて、仕事したくないからさぼっている面もあるっすけど……」
「……」
「あ、アルフォンス隊長!! こういう時ぐらい包み紙に……事実をオブラートに包んでください!!」
無言のまま突撃をしようとするバシリーを必死に抑えながら、メルヒオルがアルフォンスに怒声を上げた。
「それ以外の理由もあるんっすよ?」
「なに?」
アルフォンスがそう言った瞬間、彼らの背後にいた部隊から悲鳴が上がった。
「た、隊長!! 第一班が虫たちの侵攻妨害に失敗! 虫の津波がこちらに向かっています!!」
その言葉を聞いた瞬間、バシリーとメルヒオルがその声が聞こえた方をふり返る。
そして彼らは、一直線にこちらに向かってくる漆黒の大河を視界に入れ、小さく舌打ちを漏らした。
「ちぃっ! こんな時に面倒な……!!」
「他の班の攻撃をあの川の迎撃に回します!!」
「いやいいっす」
だが、メルヒオルの提案はアルフォンスの平然とした声音で棄却された。
「他の班もギリギリで虫の侵攻を抑えている状態っす。ここであの突破してきた虫たちに攻撃を裂いたら、今度こそ戦線維持が不可能になるっす」
「で、ですがこのままではっ!!」
虫に食われてしまいます!! そんなメルヒオルの悲鳴を、アルフォンスは笑って聞いていた。
――安心するっすよ。と言わんばかりに。
「さて、俺がどうして普段さぼりまくっているか……もう一つの理由についてでしたね」
「い、今そんな話をしている場合では!」
「ちっ。もういいメルヒオル。やはりこの男はただの昼行燈だった! 役立たずは役立たずらしくそこで雑談でもして……」
いろ……。と言いかけたバシリーは、まるで信じられないものを見たといわんばかりの顔で、アルフォンスを見ていた。
――そんなに驚くことでもないでしょう? と、内心でバシリーの反応を意外に思いながら、アルフォンスは右手をふるった。
さきほど巨人を作った魔力と比べても遜色がない、莫大な魔力が圧縮された右手を。
「俺は《魔力飽和体質》っていう特殊な体質でしてね……。莫大な魔力に、それを瞬時にリチャージする魔力回復力を持つっす。ただ、その体質にはリスクがありまして……魔力制御技術が極端に甘くなるんっすよ。一度魔力放出を使うと、その、なんといいますが……災害級の魔法しか使えないんっす」
そのせいで、平時で彼が力をふるっていい時などなかった。振るえば町一つが消し飛び、城壁は崩壊し、王都では難民が続出していただろう。
だが、今は違う。
町一つ犠牲にしても構わないといわれたアルフォンスが、気を遣わなければならない要素はどこにもなかった。
「だから、いったでしょう? 大丈夫だって」
瞬間、彼の手から放たれた圧縮された魔法は、瞬時のその圧縮が紐解かれ、爆破するように虫の大河に向かって嵐の力を解き放った。
「っ!?」
目を見開くバシリーの目には、爆風、散弾のように飛来する雨、縦横無尽に地上をかける龍が如く雷が、瞬く間に虫たちを蹂躙し、先ほどの防衛線決壊などなかったかのように……いや、それどころか、その大河のさらに先にあった虫の群体すら綺麗に消し去っていくという、でたらめな光景が焼きつけられた。
「俺がいる限り、この部隊には指一本触れさせはしないっすよ」
「……」
「だから君たちも、俺に虫が触れないように頑張ってほしいっす」
「……ちっ!!」
そんなアルフォンスの言葉に帰ってきたのは、盛大にして憎々しげなバシリーの舌打ち。そして、
「ひし形防衛方陣を展開します。訓練はしていますね?」
「俺が仕事さぼる分副官が優秀ですから」
「わ、わかっているなら、もっと普段から仕事してくださいっ!! 戦闘できなくても書類仕事ぐらいできますよねっ!?」
そんなメルヒオレの懇願を聞きながら、バシリーは周りの隊員に命令を伝達していき、防衛線を維持しつつも、見る見るうちに部隊の並びを作り変え、アルフォンスを中心に置いて守るためのひし形の陣形を作り出した。
「上々!」
そんな不満を漏らしながらも優秀な仕事をしてくれる部下に喜びながら、アルフォンスは再び魔力を放ちその直線状にいる虫の群体を一掃する。
そして、
「では……仕事しますかっ!」
そう言った瞬間、再び込められた魔力が膨れ上がり、二体目の嵐の巨人が貴族街で立ち上がる。
「さて、蹂躙するっすよ? ヨトゥン」
ふたたび生み出された巨人は、けたたましい産声と共に爆風と洪水、そして落雷の雨を地上に降り注がせた!!
…†…†…………†…†…
――派手にやっていますね……。
後方から降り注いでくる、弾丸のような雨や、爆風のような風、雨のような雷を眺めながらロベルトは自分の部隊にハンドシグナルで指示を出す。
「アルフォンス隊長の支援攻撃を確認。陣形を攻撃陣形に変更。一分一秒でもいい……できるだけ早く旦那の部隊を王城に届けます!!」
「「「「Yes sir!!」」」」
鋭い命令受諾の声と共に、周囲にいたロベルト直属の部下たちが、いまのっている騎獣より一回り小柄な獣を作り出し、部隊の伝達として周囲に飛ばす。
そしてその数秒後、ロベルトを先頭に突撃を続けていた部隊はまるで生き物のようにその陣形をかえ、矢じりのような形となり進軍速度を速めた。
戦闘に立つロベルトが作り出した水のフィールドは、一本一本が高速で流動する水の針で構成されている。
本来なら術式なりなんなりを使って制御すべき超高難易度魔力制御。だが、その術式とやらをヴァイルに学ぶ時間がなかったロベルトは、自分の直観とたぐいまれなる魔力制御のセンスを駆使し、無理やりこの光景を作り出していた。
――私には、これくらいしかほかの二人に誇れることはないから。と、ロベルトは内心で悔しそうにつぶやいた。
そう。ロベルトにはこれといった特別な才能はない。ヴァイルのような圧倒的な近接戦闘用の魔法も、アルフォンスのよう生まれながらに持つすべてを打ち砕く魔法を作れる莫大な魔力も存在しない。
平民街に生まれ、平民として商家で育ち、騎士に憧れ試験を受け、ヴァイルとは違いただ単純に実力が足りずに落とされてしまった……そんな平凡な人生を送ってきた男。それが、ロベルト・マッケンディーの本当の姿だった。
だが、そんな彼を「もっと自信をもて。お前は、あの二人と同じくらい頼りになる」と拾ってくれ、ここまでの地位につけてくれたのがサーシャであった。
こんなどこにでもいる、一山いくらで売っていそうな人間を、彼女は買ってくれたのだ。
そんな彼女の期待に応えるために、ロベルトは勤勉に学び続けた。
部隊運営のための基礎知識。人心掌握をするための仕草と礼儀作法。城壁警備隊運営のための書類処理の仕方。
そして、自分の平凡な魔力を使いヴァイルやアルフォンスに並ぶ成果を得るために、針の穴に糸を通すがごとく正確さをもった、緻密な魔力制御の方法を。
才能に並ぶためには努力をするしかない。それが誰よりもわかっていたがゆえに、ロベルトは今まで学ぶことを止めなかった。その成果が、
「射ぬきなさい……《ウォーター・ニードル》!!」
この戦場にて証明される。
告げると同時に自分の体から魔力が抜けていく感覚がロベルトを襲う。だが、その量は極めて最小限。文字通り針の先ほどにも満たない微々たるものが断続的に抜けている。
それによって彼の眼前に作り出されたのは、糸のような細さをもった、透明な水の針たち。
当然そんなもの幾ら突き刺しても敵は痛くもかゆくもないだろう。
だが、その水はロベルトの魔力制御によってその小さな針の中を高速で回転し続けている。
早く動く水は鋼よりも固い硬度を持つ。ヴァイルの教えを忠実に守り作り上げられたその針は、瞬く間に数を増やし作られると同時にロベルトの前方を塞ぐ虫たちに飛来。そのすべてが、小さな虫たちの頭を的確に射抜き地面に縫い止める!
「流石隊長!」
「うわっ……改めてみるとちょっと引くくらいの精密さですね」
――その感想はひどくないでしょうか? と、後ろから聞こえてくる部下の騎士たち――風の鷹にのり飛翔する巌のようなゴツイ体をもつ歴戦の城壁警備隊アルヴィ・ヴィルヘルムスと、水の軍馬にのってこちらに追従してくる軽い雰囲気の軽装女戦士マリアンナ・ジリアクスにロベルトは苦笑を浮かべる。
「まだまだ、これからですよ」
そして、そんな二人に自分の魔法が終わっていないのだと一応教えておいた。
その瞬間、虫の頭を射抜いた水の針が見る見るうちに形を壊し流水へと変貌。虫の体の中を無茶苦茶にかき回した後、小さな水の流れとなってロベルトが作る水のシェルターに飛来し、その中へと溶け込んだ。
「なっ!?」
そんな光景を見て、マリアンナは思わず顔をひきつらせ、いったい何をしたといわんばかりの顔でロベルトを見つめる。
当然だ。放った魔力は戻ってこない。世界に溶けて消えるだけ。現在魔法の常識を、ロベルトのその術式はたやすく覆してしまったのだから。
「いったい、なにを!?」
「なにをって、撃った後も魔力制御を続けていただけですよ? そうすれば魔力は常に自分の支配下におけますから、ある程度制御もききますし。まぁといっても、どれだけうまくやっても自分の体から切り離した魔力は、すぐに世界に溶けてしまいますから、継続時間はせいぜい30秒が限界だし、戻ってくる魔力も五割を切りますが」
――他の隊長と比べて魔力が少ないですからね。こんな小細工でもして切り詰めていかないと。と、愚痴路漏らすロベルトを、マリアンナはあんぐりとした視線で見つめ続けた。
そして、そんな彼女に向かい苦笑交じりに空を飛んでいたアルヴィは言った。
「どうだ? うちの隊長もアルフォンス隊長に負けてないだろ?」
「う、うるさいわね!! うちの隊長が一番強いのには違いないでしょ!!」
――あぁ、そういえばマリアンナさんはアルフォンスのところからの再編入組でしたか。と、いまさらながらその事実を思い出したロベルトは、肩をすくめて苦笑を浮かべる。
「すいませんね。アルフォンスよりも頼りなくて」
ロベルトの一歩間違えば嫌味にしか聞こえないその言葉。だがしかし、そこに込められている感情には、本当に申し訳なさそうな色しかうかがえず、それを悟ったマリアンナは恥じ入るように顔を赤くしながら、ぼそぼそと謝罪をしてきた。
「あ、うぅ……い、いえ。頼りにはなりますけど」
「ですがマリアンナさん。一つだけ言わせてもらってもいいですか?」
「はい?」
「城壁警備隊最強の人は……私でもアルフォンスでもなく、ヴァイル隊長ですよ」
そんなアルフォンスの言葉に、マリアンナは不思議そうな顔をしながら首をかしげた。
「そこなんですよね。アルフォンス隊長もあの人のことを《大将》って言って慕っているみたいでしたし……。あの人そんなに強いんですか?」
――一般隊員の中での旦那の認識は、まぁこの程度なんでしょうね。と、そんなマリアンナの疑問に、ロベルトはため息を漏らす。
ロベルトのように勤勉なわけでもなければ、アルフォンスのようにド派手なことをしている人でもない。彼は常に陰に徹していた。
決して手柄をひけらかさず、決して自分の存在を主張することすらしなかった。
だからこそ、彼の城壁警備隊内での知名度は驚くほど低い。以前会った四天王襲撃も、事情を知るもの以外は、四天王を倒したのはあのロベルトの嵐だと思っている者の方が大多数だ。
だがしかし、
「この戦いで知ることができますよ、マリアンナさん」
「?」
「あの人も、いつまでも日陰にいられるような甘い戦場ではないでしょうし……」
そう告げたロベルトの眼前に巨大な扉が現れた。
王城に入るための最後の扉。王の威光と示す巨大な門。平民街からでもその姿を見ることができるその巨大な門は――四天王の手によって全く違う姿に変貌してしまっていた。
「なっ!?」
「なんだぁ、ありゃ!?」
驚くマリアンナとアルヴィの声に、ロベルトは思わず険しい顔になる。
その扉には、扉自体が見えなくなってしまうほどの虫の群れが、ガシャガシャとけたたましい甲殻をぶつけ合う音を響かせながら、たかっていたからだ。
更新遅れてすいません……再開です!!