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ある脇役の英雄譚  作者: 小元 数乃
勇者の友人編
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1話

 始まり始まり~

 のどかな朝。空にはトンビが気持ちよさそうに飛びヒュルヒュルと鳴き声をあげている。


 そんな朝には不釣り合いな、漆黒に塗りつぶされ、尋常ではない威圧感を発する城壁。


 そこに設置された小さな小屋のようなスカイズ王国南門の門番詰所には、南門警備隊長であるヴァイル・クスクが座っていた。今日も今日とて首都に出入りする商人たちや旅人達から、通行税徴税という名のカツアゲをするためである。


「……zzz」


 目を閉じながら! 鼻提灯を膨らませながら!!


「あの~。いいのでしょうか? このまま素通りしてしまって……」


「いいんだよ。もし起きていたとしてもヴァイルの旦那は金なんかとらねぇ。あの人この国の中枢が大嫌いだから『俺らから金巻き上げるくらいだったら王宮で打ち首になったほうがまし!!』ってこの前豪語していたぜ」


 そんな会話を交わしながら、見張りをしているヴァイルの目の前をベテランの商人と新人の商人と思われる人物が素通りしていく。


 しかし、ヴァイルは決して寝ているわけではない。彼らは実は彼の生き別れの兄弟で顔も素性もよく知っているから……怪しい人物ではないと知っているから、素通りさせているのだ。『王宮から提示された法外な通行料をとるのがめんどいから』とか、『昨日夜中近くまで魔物の駆除をしていたため眠たいから』とか、『法外な金とって俺が恨まれるくらいなら国が破産した方がよくね?』とか、そんなことは一切考えていない!


「「「「お世話になりまーす!」」」」


 先ほど行商人の団体が二百人ほど素通りしたが、彼らを素通りさせたのも、実は彼ら全員ヴァイルの親戚で素性を知っているからであって、決して『仕事が面倒だから』とかそういった理由はない。ないったらない!!


「働かんかこのボケナスがぁああああああああああああああ!!」


 そんな風に内心で苦しい言い訳を繰り返し、仕事をさぼりまくっているヴァイルに裁きの鉄槌は落ちないのか? いや、落ちないわけがない。


 天高くそびえたつ城壁の中からそんな怒声が聞こえてきたかと思うと、城壁にあけられた窓から赤い雷が飛来。ヴァイルが突っ伏していた机に直撃。机を炎上させた。


「ぎゃぁぁああああああああああああ!? さ、サーシャ隊長!? ち、違うんです!! これには深いわけがありまして……。先ほど素通りしたのは実は全部俺の親戚……」


 さすがに真横で小火が起きれば面倒くさがり屋のヴァイルも目を覚ます。


 いきなり発生した高温の熱量に、悲鳴を上げて飛び起きるヴァイル。慌てて怒声の主に言い訳を始めるが、当然そんないい加減な言い訳が通じるわけもなく、


「そんなわけあるかぁあああああああああああああ!! というか、門番なら親戚でも素通りさせるんじゃないのぉおおおおお!!」


 結局その怒声の主は城壁の窓から飛び降りながら、ヴァイルに向かって文字通り(・・・・)雷を降らせた。


「ぎゃぁあああああああああ!? シャレになってない!! シャレになってないです隊長ぅうううううううう!!」


 そんな風に悲鳴を上げながら逃げるヴァイルに、かなりの高さから落ちたにもかかわらず平然と地面に着地を決めたどころか、逃げるヴァイルを元気よく追いかけはじめる怒声の主。


 城壁警備隊の地味な制服をビシっと着こなし、紫の長髪を簪でまとめ、豊かな胸を揺らしながらヴァイルを追いかける彼女は、城壁総合警備隊長サーシャ・トルニコフ。ヴァイルの上司で城壁警備隊のトップである彼女のいつもの折檻風景を見て、城壁を通るためにやってきていた商人たちは『またか』と言うふうに苦笑を浮かべ、黙って門を素通りしていく……。





…†…†…………†…†…





「それで……。俺に仕事をさせることだけに全神経を費やしている隊長が、わざわざ俺を持ち場から引き離して隊長の執務室に連れて行く理由はなんですか?」


 場所はヴァイルが言ったように執務室。ヴァイルの折檻に一通りのことをやり満足したと思われるサーシャは、どういうわけか城門の見張りをヴァイルの部下に命じ、ヴァイル自身を自分の執務室に呼びつけたのだ。


 質実剛健を絵にかいたように体現した何もない執務室。そんなところに不釣り合いな、『さっさと仕事さぼりたいんですけどー』といわんばかりにだらけきった雰囲気を垂れ流しながら、(制服もかなり着崩しているためその雰囲気に拍車がかかっている)ヴァイルは皮肉を飛ばす。


 そんなヴァイルに頭痛でもおぼえたのか、サーシャは頭を押さえながら、若干の怒りをはらんだ嫌味をヴァイルにぶつけた。


「自覚しているならもっと自主的に仕事をしてほしいんだが?」


「いや、隊長には申し訳ないですけど……。ほら、俺って『仕事をさぼって居眠りしていたら、いつの間にか主人公から脱獄されてしまった牢屋の看守』的な脇役ですから」


「自分を貶めてまで働きたくはないのか、まったく……。そんなお前に朗報だ。昨日の今日で悪いがまた強制特別任務だ。といっても、今回は王宮公認だがな」


 少々面倒な仕事を押し付けられた。と、サーシャは明らかに気が進まなさそうな顔をしながら一枚の書類をヴァイルに渡す。


「これは?」


「王宮からの命令書だ。なんでもわが城壁警備隊から七百人ほど兵をかせとのことだ」


「七百も? 確かにうちは人数多いですから、そのくらいの貸出しへでもないですけど、そんなに兵隊集めて一体何するつもりなんですか? それに、俺たちのような下賤な血が入った人間を王宮にあげるなんて今までにない事態ですし……」


 あまりいい予感はしないな。と、ヴァイルは思う。


 あのプライドが高い王族・貴族が、普段は『下賤な輩』とさげすんでいるヴァイルたちに協力を求めてきているのだ。不気味なこと極まりない……。


 と、疑心暗鬼に駆られてしまっているヴァイルに小さく嘆息をしつつ、サーシャは今回の命令の原因をそっと告げてやった。


「なんでも……勇者を召喚するんだと」


 ヴァイルはサーシャの言葉を聞き、数秒の思考の後、


「え……いまさら?」


 なんだか気の抜けたような表情で、唖然とするのであった。





…†…†…………†…†…





 『勇者召喚』。それはスカイズ王国が『魔法大国』を対外的に名乗っていられる唯一のファクターである。


 この魔法は大陸東部を占領統括している『魔王』が復活したときに発動されるもので、異世界から才能ある人間を無理やり呼び寄せ、魔王と戦ってもらおうという……何ともまぁ他力本願かつ、どうしようもなくはた迷惑な魔法なのだ。


 まぁ、その勇者必ずと言っていいほどが一定の功績をあげてしまうので、この魔法は脈々と受け継がれてきてしまっているわけだが、


「まさか本当にやるとは……。歴代勇者がろくなことにならなかったのは知っているだろうに……」


 初代勇者は「明日センターテストだったのに!!」と呼び出された瞬間ブチキレて、当時の王に掴みかかったらしい。その後しばらくはおとなしくしていたが、勇者としての力を目覚めさせるための儀式を受けた後即座に国を出奔。当時この国に敵対していた他国へと逃げ、その国に彼が持ちうる知識のすべてを与え、その国に巨万の富を築かせたとか……。ちなみにその国は今ではスカイズ王国を含む三大国に数えられており『科学の国』として発展している。ちなみにその勇者がどうなったかを知る者はいない。


 先代……二代目勇者はどうしようもない泣き虫だったようで、召喚された瞬間に「おうちに帰して!!」と号泣し始め、その当時の王に『使えない』という烙印を押され外交の材料として違う国に売り飛ばされたらしい。しかし、その勇者……成長率が半端なく、あっという間に当時最強の魔法剣士をブチのめし、その称号を奪い取ったあと、二か月で魔王領を蹂躙。当時の魔王を瞬殺したらしい。その後は旅の仲間の一人だった、どこぞの姫君と結婚して新しい国を作ったとか……。ちなみにこの国も三大国に数えられており『勇王の国』として名を馳せている。現在最も軍事力が高い国である。


 つまり何が言いたいのかというと……。勇者呼び出しても、うちの役に立つ可能性は限りなく低くないか? ということである。


 とはいえ、ヴァイルはとある理由からスカイズ王国の王族とそれに連なる貴族が凄まじく嫌いだ。べつに勇者を呼び出した後その勇者が貴族に害をなそうが、国に不利益をもたらそうが、知ったことではないのだが、


「いくらなんでもこれは見逃せないだろう?」


 王宮に呼びだされ、そこの花壇の見回りと手入れを任されていたヴァイルは、その花壇の中に隠されていた魔法具を拾い上げ少しだけため息をついた。


 球体状の小石に目玉のような模様が刻印されている魔道具。確かこれは……魔法、科学、軍事力、そのすべてが謎に包まれた巨大帝国《天使の国》のもの。


 知り合いに《天使》がいるのでこういった魔道具についてもいろいろと教えてもらっているヴァイルは、これがなんなのかを知っていた。


「『セントピエトロの瞳』だったか? 魔力の収束阻害が主な効果だったはず……」


 背中から抜き放った槍でその魔道具を真っ二つにたたき割りながら、ヴァイルは首をかしげた。


「こんな妨害しかできない、悪趣味な形をした魔道具をうちのバカ貴族たちが花壇に置くとは思えないし。いったい誰が置いたんだ? 最近隊長が怪しんでいた間諜でもマジで入っていたりして」


――だとしたら、その裏切り者は一体どうしてこんなものをここに置いた? うちの王宮の奴らは宮廷魔導師ぐらいしか魔法を使える人間はいない。わざわざこんなものを置いて魔力の集中を阻害する必要などどこにもない。おまけに国も絞りきれない。天使の国では十中八九ないだろう。あそこはわざわざうちに間諜なんて飛ばさなくても《透視・遠視》の魔術でも使えば情報なんて集め放題だろうし。だとすると『科学の国』か『勇王の国』のどちらか。もしくは魔王軍……。


と、ヴァイルはそこまで考えた後で何かにひどく絶望した様子で頭を抱えた。


「って、何シリアスにきめて考え込んでんだよ、俺。俺は『わけのわからない物品を見つけた瞬間、味方に化けていた敵の間諜に殺されてしまう』感じの脇役だろ? なに真剣にこの国の行く末について考えちゃってんの……」


――隊長のせいで働き癖がついちゃったじゃないか。鬱だ……死のう。そんな風に激しく落ち込むヴァイル。だが、そんな彼の後ろから静かに危機は迫っていた。




…†…†…………†…†…




 それはひどく美しい男だった。短くきり揃えられたサラサラの青髪。顔はまるで神が作り上げた芸術作品のように整っている。そんなイケメン優男。だが、その右腰には彼には不釣り合いな大剣がつるされており、彼がそれなりの荒事をこなせることを示していた。


 スパイのように完璧に無音で、気配を殺して近づいてくるその人物にヴァイルは気づくことができていない。


「ふっ……」


 その人物は最後に凶悪な笑みを浮かべると同時に、足のバネを使い、一気にヴァイルへと飛びかかった。


「ふん!!」


「げぶっ!?」


 しかし、今まで完全に絶望の海に沈んでいたと思われたヴァイルは、あっさりと男の突撃に反応し、それを躱してしまう。どうやら今までの態度は全部演技だったようだ。


 変な悲鳴を上げて花壇に突っ込む男に、ヴァイルは思わず三白眼になった。


「何してんすか、ゲイル副騎士団長?」


「幼馴染なんだから敬語はやめろ、って言っただろう?」


「副騎士団長は貴族出身の騎士で、俺は平民の下っ端です。敬語を使うのは当然でげす」


「それで敬語を使えているつもりでいるお前にびっくりだよ……」


 そんなことを言いながら立ち上がり、鎧についた泥を払落し、青い髪を持ったイケメン騎士――ゲイル・ガンフォール・ウィンラートは、ヴァイルに屈託のない笑みを向けた。


 それによって跳ね上がる、空気中のイケメン度数に閉口しながらヴァイルはチッと舌打ちを漏らす。舌打ちは隠せよゲイルが注意してくるが、そこは幼馴染。無礼講としてもらおう。


――毎度毎度思うが、この幼馴染はどうしてこんなに神様に愛されているのだろうか? まぁ、俺は脇役だから今更そんなこと気にしないけど。


 と、ちょっとだけ負け犬の遠吠え的な思考をしつつも、ヴァイルは特にそのことを表情に見せることもなく、呆れたといわんばかりの声音で、ゲイルに質問をぶつけた。


「それで、どうしてこんなところにいるんすか? 今は騎士団のバカどもは忙しいんでしょうが」


 このゲイル、こう見えて騎士団副騎士団長という結構な地位についているため、勇者召喚という一大行事が行われている今、こんなところで油を売っている暇はないと思うのだが……。


「城壁警備隊の連中が来ているって聞いたから、お前はいるかな~? とは思って見にきたんだけど、ほんとにいたんだな? 王宮嫌いのお前にしては珍しい」


 近くの花壇に腰を下ろしながらそんなことを言ってくるゲイル。ヴァイルもそれに合わせて近くの花壇に腰を下ろして、久しぶりの幼馴染との語らいに付き合うことにする。


「サーシャ隊長の強制命令ですよ。じゃなきゃこんなところにはこねーです。というかそんなこと聞いていません。今は勇者召喚の式典の時間でしょうに? 副団長が抜け出して大丈夫でげすか?」


「いや……。オレとしては勇者召喚にはあんまり乗り気じゃないんだよ。うちの世界の事情にほかの世界の人間を巻き込むのは気が引けるし……。おまけになんだか魔力の集まりが悪いらしくて、儀式がかなり長引いているんだ。かれこれ二時間も呪文を聞いていたから飽きてしまって……。ちょっと気晴らしに外にでてきたというわけ」


 ゲイルの苦笑交じりの説明に、ヴァイルは納得したと頷きながら、先ほどつぶした魔法具を思い出していた。


――魔力の集まりが悪い。普段なら宮廷魔導師どもが無能なんだろうって笑ってやるところなんだが、今回ばかりはそうもいっていられないな。明らかに原因はあの魔道具だし。目的はおそらく勇者召喚……か? だとしたらあの魔法具を置いたのは魔王軍でほぼ確定だな。


 最後にはあまり考えたくはない結論に達してしまい『うわ~まじで~。間諜がいる可能性が濃厚になってきたじゃないか……。マジでウザいな~。そして、俺はまた仕事のことを考えているし!!』と、内心でげんなりとしつつも、ヴァイルはおおきくため息を一つ、


「ハァ……。ただでさえめんどくさいのに、勇者召喚なんてしやがて。勇者とかほんとこなければいいのに。あ、じゃあの魔道具こわすんじゃなかった。貴族に恥かかせられるわ、勇者は来ないわで一石二鳥だったな~」


「ん? 何か言ったか?」


 ヴァイルのつぶやきが聞こえたのか、やれ新しく入った部下が厳しいだの、妹に彼氏ができてしまったどうしよう? などと世間話をしていたゲイルは少し話をやめてヴァイルにそう尋ねてきた。


「……」


 ヴァイルはゲイルにこのことを話すかどうか迷い、考え込む。


 王宮嫌いの彼としては王家が弱体化するのは望むところだ。だが、ヴァイル個人としてはそんなクソ危ない王宮の中に友人であるゲイルを置いておくのも気が引けた。


 かといって、『王宮は危ないから逃げた方がいいよ~』といったところで逃げる男でもないし……。


「はぁ~。お前って本当にウザいな~」


「敬語やめたと思ったらしょっぱなから悪口かよ!?」


 ため息交じりに友人の面倒臭さを再確認したヴァイルの言葉に、ゲイルはアイアンクローを発動した。





…†…†…………†…†…





 それからしばらく経ち、ヴァイルが花壇の世話に戻り、ゲイルが自分が突っ込んでしまったせいで荒れてしまった箇所を直し始めたときだった。


「なんだ?」


「天気が変わった……というには急すぎるな?」


 空模様が急に怪しくなり始めて、ゴロゴロと不穏な音をたてはじめたのだ。いったいなんだ、と首をかしげる二人。だが、彼らの疑問はある人物の登場によってあっさりと解決する。


「何をしておられるのですかウィンラート卿!!」


 あからさまに『怒っています!!』言わんばかりの声音でゲイルと同じような甲冑を着こんだ美女が、ものすごい勢いで怒鳴り込んできてゲイルの耳を引っ掴んだ。


「イタイイタイ痛い!! なにするんだ、シルベット!!」


「それはこっちのセリフですわ!! せっかく儀式がうまくいき始めというのに、いつのまにかあなたが消えてしまって騎士団中大騒ぎですのよ!! 騎士団長や国王陛下の顔色がもうこの世界の人間ではありえない感じになっていましたわ!!」


「え、うそ!?」


 ああ、そういえばさっき魔道具こわしたから魔力はちゃんと集まるようになったんだったな。と、いまさらながらそれに気付いたヴァイルだったが、


『まぁ、もとより関係のない話だしどうでもいいか』と自己完結。さっさとゲイルを見捨てることにする。


「いいからさっさと帰ってきてください!! もうすぐ勇者様がこちらにいらっしゃるのですから!!」


 ゲイルの耳を引っ掴んだままそういう彼女は、黙々と花壇をいじっていたヴァイルに目を向け『ふんっ』と鼻を鳴らし、


「警備ご苦労様です!!」


 傲然とそう言い放った。


(ん? あれ? これ俺に向かって言われてね?)


 てっきり無視されるものと思い、特に何の反応もするつもりはなかったヴァイル。しかし、女騎士はきっちりこちらに挨拶をしてきており、


「こ、こちらこそ!! お仕事ご苦労様です!!」


 ヴァイルはあわてて立ち上がり敬礼を返した。そんなヴァイルを満足そうに見た後、女騎士は、ゲイルの耳をつかんだまま彼をズリズリと引きずり王宮内へと姿を消した。


(珍しい奴もいたもんだ。平民にねぎらいの言葉をかけるなんて……。まぁ、態度はかなり悪かったが)


 おそらく、さきほどゲイルが話していた新しい部下であろう女騎士に、少しだけ感心しながらヴァイルは黙ってその女騎士を見送った。


途中ゲイルが、


(助けろよ!?)


 とばかりにアイコンタクトを飛ばしてきたが、


(うっさい。おとなしく仕事に戻れ)


 と、返してやった。


その後ヴァイルはすこしだけ、ゲイルが消えた王宮を見つめ、


「最近……人を連れて行くときは耳を引っ張るのが流行っているのか?」


 勇者なんてものには微塵も興味を見せることはなく、『そっちの方がどうでもいいだろ!?』といわれそうなことを気にしながら花壇の警備へと戻るのだった。

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