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赤熊

赤熊はレッドベアと読んでください。


ナルサスがいる遺跡まであと少しというところで、ジェイルが立ち止まった。


オリバーも何か気配を感じたのか、剣に手をかけて周囲を警戒している。


「ゆっくり、静かに下がれ」


ジェイルが押し殺した声で言う。


視線の先、切り立った崖の上に、何かがいる。


赤い鋭く尖った体毛に覆われた、巨大な赤熊だった。


私たちと赤熊の間には、深い谷が走っている。


しかし、赤熊は私たちを見据えると、ひとつ吠えて軽々と谷を飛び越した。


ずしんと地面が揺れる。


「下がれ!!!」


ジェイルが鋭く叫び、剣を抜き払った。


当時に結界が発動する。


道いっぱいに展開された結界は、赤熊の突進を阻み、鈍い音を立てた。


そしてガラスが割れるような音とともに崩れ去る。


ジェイルは後退しながら結界を貼り直した。


足場が悪く、ここでは戦えない。


急拵えの結界は、赤熊の攻撃を一度弾くので精一杯だ。


私たちは邪魔にならないよう、開けたところを目指した。


少しばかり戻ったところで道が開け、オリバーが立ち止まる。


「お二人は壁際へ。絶対に前に出ないでください。万が一のことがあったら、我々を置いて来た道をもどってください」


「わかった」


エヴァンが言葉少なに返事をする。


ジェイルとオリバーが肩を並べて剣を構えた。


追って来た赤熊は悠々と立ち上がり、咆哮を上げた。


空気が揺れ、水滴がぱらぱらと降り注ぐ。


そして、赤熊との戦闘が始まった。



赤熊は、凶暴な魔物だ。


魔力量は少ない方なので魔法攻撃はあまりないが、とにかく硬い。


そして爪には強力な毒を持ち、口から触れたものを溶かす酸を吐く。


なによりも防護結界を叩き壊す圧倒的なパワーが厄介だ。


二人の剣が赤熊とぶつかる度に、火花が散る。


「っ、流石に硬いな!」


飛び退ったオリバーが悔しそうに言う。


魔法騎士はざっくりと二つのタイプに分けられる。


魔法攻撃を主体に戦う騎士と、強化魔法を使って自分の身体能力を主体に戦う騎士だ。


オリバーはどちらかというと前者の方で、筋力が必要な戦闘は苦手らしい。


ここは深い洞窟の中。


高火力の魔法を使う訳にはいかないのだ。


普段の赤熊の討伐には、高火力の炎魔法の使用が定石だ。


鉄の性質を持つ毛を炎で熱し、柔らかくなったところを一気に叩く。


それが、今は出来ない。


「これは…どうしたものかな」


ジェイルも攻めあぐねているようだ。


その時、赤熊が跳ね飛ばした拳大の石が壁にぶつかって鈍い音を立てた。


ぶつかった箇所が、ぽう、と淡く光る。


「なんだ…!?」


次の瞬間、周囲は眩い光に包まれた。


光の直撃を食らった赤熊が、苦悶の声を上げてよろける。


しかし赤熊にいちばん近いところにいたジェイルにもダメージがあったようだ。


滅茶苦茶に振り回された赤熊の腕に吹っ飛ばされ、壁に激突する。


「先輩!!」


「まて、危険だ!」


思わず身を乗り出すが、エヴァンに押し止められた。


暴れ続ける赤熊は、酸を吐き散らしながら暴れ、その度に地面が揺れる。


「オリバー!雷だ!」


エヴァンが出した水がうねり、赤熊にぶつかった。


眩しさに顔を顰めたオリバーが走り出し、その胸元に雷を纏った剣を突き出す。


感電した赤熊は叫び声を上げ、酸がオリバーに降りかかった。


「下がれ!」


起き上がったジェイルが、走り寄って渾身の力を込めて剣を叩き込む。


赤熊はよろよろと後退り、先程下ってきた道を逃げて行った。


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