理解者
テーブルに置かれたクロードの論文を、オリバーが興味深げに眺めている。
「たしかに、保護結界に欠けているところがありますね。僕でもこの結界は破れなさそうだ」
ページを隅から隅まで確認し、オリバーが言う。
そして、じっと私の瞳を見つめた。
「僕で力になれることがああれば、なんでも言ってください。これでも、結構出世したんですよ」
「はい…ありがとうございます」
私は込み上げてくる涙を押し殺すように紅茶を飲んだ。
かつて笑われた私の目標を、真剣に後押ししてくれる人がまた増えた。
あの時大笑いした先輩の研究は、捗っているのだろうか。
少し前には研究所の部屋を爆発させ、大目玉を食らっていたが。
彼が心血を注ぐハゲを治す薬は、いつ日の目を見るのだろうか。
しんみりした空気を変えるように、シフォンケーキを食べ終わったエヴァンが口を開いた。
「明日、遺跡に行く訳だが…ひとつ問題がある」
「なんですか?」
「君たちも風呂に入ってわかったと思うが…思った以上に砂が体についていただろう?」
「あぁ、確かに。頭皮がざらざらしましたよ」
「明日は頭に、タオルでも巻いておくべきだろうか」
タオルを頭に巻いたエヴァンを思い浮かべた。
まったくもって、似合わない。
「………やめておいた方がいいと思います…」
「ですね」
「そうか?いいアイディアだと思ったんだが」
ふっと肩の力が抜けていく。
シフォンケーキを口にすると、練り込まれたはちみつとバターの香りが鼻に抜けた。
食べすぎないようにしなければ。
これは、夢中になる美味しさだった。
✶
夕食時、ジェイルが姿を見せた。
連れ立ってレストランに向かい、食事を取りながら明日の予定を聞く。
その際に手渡されたのは、風の魔法がかけられたアクセサリー型の魔導具だった。
なんても、カンジャスに住む人の必須アイテムらしい。
魔力を通してみると、柔らかな風の膜が全身を覆う。
「なるほど、これで砂埃が防げるわけか」
エヴァンがまじまじと指輪型のそれを見つめて言った。
オリバーはピアス、私の分はネックレス型だ。
「ありがとうございます、助かります」
「温度を適温に保つ機能もありますが、日差しだけは防げないので、気になるようなら帽子もかぶってくださいね」
そして私たちは、運ばれてきた料理に夢中になった。
南部の料理はスパイシーなものが多く、食欲がそそられる。
本日のメニューは、野菜がゴロゴロと入った辛そうな見た目のスープに、パリッと焼かれた鳥の丸焼きだった。
スープが辛かったのか、エヴァンが涙目になっている。
私はかなりこの味が気に入った。
あとで作り方を調べてみよう。




