表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

模擬戦


歩きながら、私たちは今回の目的をジェイルに話した。


ジェイルは私の目標である、精霊の病の治療薬の事を知っている。


しかしナルサスに用がある事を告げると、ジェイルは渋い顔をした。


「何か問題が?」


「そう、ですね…カンジャスの遺跡は正式には、カンジャス迷宮大遺跡と言いまして、とてつもなく広い上に危険な古代の罠が大量にあり…そこに公爵家の方と女性をお連れするのは…」


「ナルサス老師は街にお戻りにならないのですか?」


私が聞くと、ジェイルは呆れ果てた様子で首を振った。


「ナルサス老師が同行している遺跡調査団の隊長はケプラー殿という考古学者でして、この二人がもう、食事を放り出すほど調査に夢中で…」


「それは…大変ですね…」


私はその気持ちが少し分かる。


そしてエヴァンも同じなのか、私たちは顔を見合せ、乾いた笑みを浮かべた。


「第二王妃様が出国される時も遺跡の事を聞きたいと仰って、街まで出てくるように連絡したのですが…今はそれどころじゃないと…」


「それは…大丈夫だったのか?」


「ええまあ…ケプラー殿は第二王妃様の学生時代の恩師らしく。先生らしいと笑っておられました」


王族からの要請を無視するとは、ナルサスとケプラーの心臓には、おそらく毛が生えているに違いない。


「とまぁ、そんなわけで…ナルサス老師を呼び出すのは難しいです」


「となるとやはり、我々が遺跡に行かなければな」


「ですが…」


「心配するな。現役の騎士ほどでは無いが、私もある程度の戦闘訓練を積んでいる。アリーシャも元は魔法騎士を目指していたくらいだ。それなりに腕は立つだろう」


ジェイルはどちらかというと、私よりも公爵家のエヴァンを心配しているようだ。


背が高いが痩せぎすで、正装をしていればまさに貴公子然としたエヴァンが戦えるとは、私にも到底思えない。


「…疑っているな!?」


ジェイルとオリバー、そして私の何とも言えない眼差しを見て、エヴァンは肩を竦めた。


「仕方ない。オリバー、そこの空き地で軽い模擬戦をしよう」


「…ここでですか!?」


オリバーが目を見開く。


「仕方ないだろう。ここである程度腕が立つことを証明してやる」


エヴァンは意気揚々と荷物を置き、さっさと空き地に入っていく。


資材置き場だろうか。


隅の方に木の角材が山になって積まれていた。


渋々といった様子で、オリバーがエヴァンの背中を追う。


私もジェイルと顔を見合せ、その様子を見守った。


気乗りしない様子のオリバーに対し、エヴァンは何故かノリノリだ。


「さ、始めようか」


騎士団最強と呼ばれる騎士のうちの一人と、魔力量は国中トップクラスとはいえ、研究所に籠りきりの研究員。


勝負はあっさり着くものだと思っていた。


「これは…凄いですね!」


暫くして、オリバーが感嘆の声をあげる。


剣を構えたオリバーの前には、笑みを浮かべて立ったままのエヴァン。


その周囲には、キラキラと輝く氷の刃が舞っている。


エヴァンが手を振ると氷の刃は瞬く間に溶けて水になり、さらには水蒸気の煙になって周囲を覆いつくした。


何かがぶつかる音が中から数回聞こえてくる。


そのうちオリバーが風魔法を使ったのか、水蒸気はあっという間に消え去った。


二人の様子が見えるようになり、エヴァンが尻もちを着いたのが見える。


近くには氷の剣が落ちており、真っ二つに割れていた。


「こんなに水魔法の扱いが上手いとは!魔法騎士としてやっていけるんじゃないですか?」


「はは、私は運動が苦手だからな。あまり動かなくて済む戦い方を身につけたんだ。しかしまだ、強度が足りないな」


オリバーが差し出した手に捕まり、エヴァンが立ち上がる。


拾い上げた氷の剣はするりと溶け、地面に消えた。


「それでも中級の魔物なら一刀両断にできますよ!」


「まあ、私の腕前はわかっただろう?ある程度の自衛はできる」


埃をはらいながらエヴァンがジェイルを見た。


苦笑しながらジェイルが頷く。


「ところで…アリーシャはいいのか?さっき心配していただろう」


「アシュフォード様の手前ああ言いましたが、彼女の腕前についてはよく知ってますから」


「それならいいが…」


なぜだか、少し残念そうだ。


模擬戦をやろうと言われなかった事に少し安堵し、私は肩を竦めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ