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ゴブリン


トランの街で一夜を過ごし、翌朝私たちは第三騎士団と翼竜に見送られて街を出た。


翼竜は飛竜の小型種で俊敏性に優れており、騎士の空の相棒として多く飼育されている。


領地を出るまで翼竜に乗った騎士が数名見送りに出てくれ、華麗なアクロバットを披露してくれた。


緑竜も機嫌が良さそうだ。


この日は追い風が吹いており、飛竜は半日ほど飛び続けた後に深い森の中にある大きな湖の畔に降りた。


「星の森だな」


周囲を見回したエヴァンが呟く。


「星の森ですか?」


「あぁ。そこに、花が咲いているだろう?それはこの森にしか咲かない、スターリオーナという花で、夜になると光る性質がある。学名は確か、リラ・グロリアだ」


その学名には聞き覚えがあった。


これを用いて作った魔法薬は、飲んだ者を発光させる効果がある。


パーティグッズや悪戯グッズとして偶に流通しているものだ。


インクの材料にもなっており、暗いところで光るインクは私もひとつ持っている。


「もっと長持ちする製法が見つかれば、用途が広がるんだがな」


「へぇ、例えばどんなですか?」


興味深そうに花を眺めていたオリバーがエヴァンを振り返る。


「今はパーティグッズが精々だが、発光する時間が長くなれば洞窟や遺跡、迷宮探査に利用できると思うんだ」


魔法薬を飲み、ほのかに光る一団が、真面目な顔で暗闇を進む。


そんな様子を思い浮かべ、私は口を噤んだ。


見ればオリバーも微妙な顔をしている。


そんな私達を尻目に、エヴァン真面目な顔で花を数本、採取した。



大きな山脈を飛び越し、ひたすら南へ。


途中の街で宿を取ったり、二度ほど野宿をした。


天候は安定しており、たまの雨も雲の上を飛ぶ私たちには影響はない。


王都を出発してから六日目。


カンジャスの街まであと少しと言うところで、私たちは放牧されていた牛を襲っている魔物に遭遇した。


小柄な体に緑色の肌をしたゴブリンの集団だった。


休憩場所から飛び立って高度を上げようとしていた緑竜は、オリバーの合図で急降下する。


「エルメラ!僕を降ろしてから上昇して空中待機!二人を守れ!」


地面が近くなり、オリバーは手網を離して立ち上がった。


「エヴァン様、アリーシャ嬢!僕が合図をするか、エルメラが安全と判断するまで降りないでください!」


剣をスラリと抜き払い、オリバーが飛び降りる。


「オリバー卿!」


思わず止めようとした私を、エヴァンが制す。


「大丈夫だ。オリバーはこの国でも指折りの騎士。あの程度の魔物に遅れは取らない」


「そ、そうですよね、すみません…」


動揺する私を慰めるように、緑竜が鳴く。


「ありがとう、エルメラ」


緑竜は大きく円を描きながら、高度を保って旋回した。


風に乗って微かに戦闘の音が聞こえてくる。


私は荷物の中の治癒ポーションを使うようなことが起こらないよう、ひたすらに祈った。


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