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不穏な影
時計の音だけが微かに響く、静かな部屋。
豪華な調度品が並べられ、部屋の主の身分の高さを物語っている。
椅子に座っていた女が口を開く。
「…エヴァン様は?」
「アリーシャ・ランベルトと共に、本日出張の為旅立たれました」
がつんと音がなり、扇が机に叩きつけられた。
「あの女…私に逆らったと思ったら、エヴァン様と出張に…?一体何様のつもりなの…ことごとく私の邪魔をして…!」
ビクトリアは立ち上がって爪を噛んだ。
「お父様は!?私の謹慎のこと、ちゃんと伝えてくれたんでしょうね!?」
「は、はい。旦那様はその、大人しくしていろ、と…」
「っ〜〜〜!!!」
投げられた扇が花瓶に当たる。
「影の者を呼びなさい」
「しかし、お嬢様…」
「いいから!早くしなさい!!!」
ビクトリアに怒鳴られ、執事は部屋を出ていった。
ビクトリアは肩で息をしながら、アリーシャのことを思い浮かていた。
アリーシャが転科してくるまで、魔法薬学科はビクトリアの天下だった。
それがアリーシャが来た初日、木っ端微塵に砕かれた、
その時に自分に向けられた屈辱的な視線の数々。
娘の醜聞を耳にし、父親の目に浮かんだ失望。
ビクトリアは拳を握りしめ、窓の外を睨みつけた。
「覚えていなさい、アリーシャ・ランベルト…!」
その背後に、黒い影がひとつ、降り立った。




