番外編 1
「ハンナ!」
後ろから声をかけられて、振り返った。
「おはよう、レジーナ」
クルクルとした巻き毛の男爵令嬢、レジーナ・ロベルがぱたぱたと階段を降りてくる。
「アリーシャ、行っちゃった?」
「うん」
私の答えを聞いて、レジーナがガックリと肩を落とす。
「お見送りしようと思ってたのに!」
「レジーナはエヴァン様を一目見たかっただけでしょう?」
「たしかに、それもあるけど!」
レジーナがぷう、と頬を膨らませる。
「私だってアリーシャと仲良くしたいと思ってるのに!」
「アリーシャはそんなこと、思っていないかもよ〜?」
「えっ!そんなぁ〜…まってよハンナ!」
私は嘆くレジーナを置いて寮を出た。
レジーナは魔法局の魔導具研究室に所属している魔導具師であり、日々怪しげな研究に精を出している。
アリーシャとレジーナが仲良くなれば、研究者同士、さぞ気が合うだろう。
二人して研究に没頭してボロボロになる未来が容易に想像できて、私は肩を竦めた。
私が間に立っているくらいの距離感が、丁度いい。
レジーナが追いかけてくる足音がして、私は少し足を緩めた。
「ハンナぁ!じゃあじゃあ、ハンナがアリーシャに作ってあげたワンピース、私にも作ってよぅ!」
「え〜?どうしよっかな〜」
朝日が眩しく降り注ぐ中、私たちはじゃれ合うように職場に向かう。
アリーシャの旅の無事を祈りながら。




