表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推し事は有給休暇として認められません  作者: 葉方萌生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/9

□同僚・中山壮太へのインタビュー(2025.11.20)

 これって匿名にしてもらえるんですよね? お願いしますね。職場とか学生時代の友人にあんまり知られたくないんで。いやべつに……後ろめたいことがあるわけじゃないんです。学生時代の友人のみんなが大企業に就職する中、俺だけ中小規模の会社に就職したから、あまり知り合いには会社名を伝えてないんですよね。まあ、今更気にすることでもないかもしれないんですけど、無駄なプライドが邪魔して。ああ、すみません、話が逸れてしまって。


 で、秋葉菜月(あきばなつき)のことですよね。あいつは同期なんです。て、知ってて俺に取材してるのか。すみません不慣れなもので。秋葉さんが会社に来なくなったのはちょうど一週間前のことですね。え、彼女の家を訪ねたひとはいるかって? うーん、たぶんいないと思いますよ。うちの会社、勤怠システムを使って出欠状況を管理しているんですけど、一週間前に彼女自身が『欠席』の連絡を入れているんです。理由もちゃんとありましたよ。病欠だって。治ったら出勤する予定だと思うんですけど、長引いてるみたいで。11月13日から毎日『欠席 理由:病気』って申告があります。あ、システム見ますか? そうそう、[勤怠ねっと]っていうのがシステム名です。ここに書いてあるでしょ、ほら。上司も12日の夜に連絡を受けたそうで、治るまで来なくていいって伝えたみたいです。もちろん有給ですよ。さすがにそこはね。だから俺も他の同僚たちも彼女は病気で欠席していると思ってたんですけど、いなくなったって本当ですか?


 ……すみません、ちょっと動揺してしまっていて。

 同期が失踪って、ちょっと信じられないです。

 それも秋葉さんが……。彼女、すごく真面目で仕事熱心なひとなんです。営業部で女性は彼女ともうひとり一つ上の先輩だけなんですけど、『男性メンバーに負けてられないから』っていうのが彼女の口癖でした。学歴もそこそこですよ。なんでうちの会社に来たんだろうってびっくりさっれるぐらい学もあるし、実力もある。まあ、学歴と仕事ぶりが比例するかどうかはさておいて、彼女自身はとても優秀な営業マンでした。


 俺も同じ営業部として彼女とは親しくさせてもらってます。同期は全員で十人いたんですけど、今年入社三年目で、すでに三人辞めてますね。みんな、他にやりたいことができたとかなんとかって。まあどこの会社もそういうもんですよね。俺も、いつまでここにいるか分からないし。ああ、すみません。これはオフレコでお願いしますね。同じ会社のメンバーに知られたら気まずいので……。

 

 秋葉さんに変わったことはなかったかって?

 変わったこと……どうだろう。あ、そういえばひとつだけあったかも。


 うちの会社は定時が18時なんですけど、彼女、いつもは20時ぐらいまで仕事してるんです。営業部は大体みんなそれぐらいまで残ってますね。なんですけど、一か月前くらいからかな。木曜日だけ、きっちり定時で上がるようになったんです。何かあるの? って聞いたら、『推しに会いに行くんだ』って言ってました。彼女がいわゆる推し活をしてるって知らなくて、いろいろ聞いてたら、木曜日に推しのライブが定期開催されているそうで。目をキラキラさせて語ってました。『そんなに好きなら有給使って行ったらいいじゃん』ってツッコんだんですけど、その時にですね、ものすごい嫌悪感の滲む表情を浮かべてこう言ったんです。『上司から“推し事は有給休暇として認められないって言われたの』って。


 その話を聞いておかしいと思ったんです。有給を何に使うかなんて、そのひとの自由じゃないですか。ある程度世間話で何をするのかって聞くこともあるかもしれないですけど、基本的には有給を使う理由には上司もノータッチなはずなんです。なんとかハラスメントになりそうですし。それなのに、秋葉さんは愚痴をこぼしていたんです。普段から驚くほど愚痴なんて言うひとじゃなかったんですよ。同期の俺たちがそれぞれに仕事の愚痴を吐いているのを聞いても、『まあまあ、みんなで頑張ろうよ』って鼓舞してくれるタイプだったんです。そんな彼女が、どうしてそんなおかしな上司のセリフに過敏に反応していたんでしょうかね。そもそも、“推し事が有給休暇として認められない”なんて、本当にうちの上司が言ったんですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ