表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様はもっと強い  作者: ビーデシオン
前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/20

第5話 まずいこと


 お嬢様がテラス訪れる前に()()を片付け、テーブルの上にあるものがカロリー爆弾から紅茶とお茶菓子に変わったあと。私は紅茶をすすりながら、お嬢様の話を聞いていた。


 いや、正確に言うなら、お嬢様の話に相槌を打ちながら、考え事をしていた。やっぱり、気になってしまうことがあるのだ。


「そこで名乗りを上げたのがお父様! お父様は同じく盗賊の被害に対して燻る気持ちをもっていた人々に、直接声をかけにいったのよ!」

「ふむ」


 あれからしばらく経つけれど、未だに用件の見当はついていない。

 使用人さんたちがこぞって呼びかけるような用事ってなんだろうか。

 しかも、わざわざ濁して伏せなければいけない用が、私に対してあるなんて……


「ねえ! 聞いてる!?」

「はいはい。聞いてますよ」


 噓だ。聞いてなかった。

 丸テーブルの向かいに座るネリーお嬢様が、机にドンっと手を付いたことでようやく現実に戻ってくる。

 あ、ティーカップの紅茶が、衝撃でお皿にちょっとだけこぼれてしまっている。もったいない……


「つまりね! お父様の時代の騎士学校は、実際に賊をひっとらえて憲兵に突き出さないと卒業できなかったの!」

「えっ、そうだったんですか?」


 初耳だ。随分危なっかしい試験に感じるけど、昔の騎士学校って案外厳しかったのかな。


「やっぱり聞いてないじゃない!」

「あっ」


 まずい、咄嗟にそれっぽいことを言ってごまかそうとしたせいですぐバレた。冷静になってみるとこれ、だいぶ失礼なことなんじゃじゃないだろうか。


「すいません。考え事をしていて……」

「ふん! せっかくキュージが騎士学校に憧れてたっていうから話してあげたのに!」

「ああ……すいません……」


 それは本当に申し訳ないことをした。ついでにもったいないこともした。実際、騎士学校の話には興味があったのに。

 とっくに入学は諦めてしまったけど、本物の貴族様からそんな話を聞ける機会なんて滅多にないはずだったのに。


「もう知らないわ! 今日のお話はここまでよ!」

「そんな……あっちょっと! 待ってください!」

「聞こえないわ!」


 お嬢様が行ってしまう。

 引き留めようにも、お嬢様は既に全速力で走り去ろうとしている。流石に走って追いかけるわけにはいかないし……あ、ああ、見えなくなった……


「やらかした……」


 本当にやらかした。

 主従関係とかそういうのを置いておいても、人として好ましくない行動をとってしまった気がする。

 一月勤務できたからといって気が緩んでいた。

 どう弁明しよう、いや、どう謝ろう。


「あの、お嬢様が物凄い勢いでお部屋に戻っていったのですが……どうされました?」

「ああ、レニーさん。すいません……」


 タイミングがいいのか悪いのか、厨房の方から、ふくよかなコックさんが戻ってきてしまった。

 みてみると体の前にお盆を携えている。その上には、紅茶によく合いそうなお菓子の数々が……


「ああ、追加のお茶菓子……本当にすいません」

「ははあ、さてはお嬢様と喧嘩してしまいましたかな」

「はい……というか、私が一方的に失礼を……」


 ああ、まずいまずい。

 コックさんともなれば、使用人全員に顔が利くだろう。

 せっかく何かに誘ってもらえたのに、こんなところ見られたら屋敷中に私の悪名が広がってしまうのでは。

 いっそのこと、噓を付いた方がよかったかな

 いやでもそれはもっとお嬢様に失礼だし、なによりそんな噓つきたくない。


「まあ、お嬢様も繊細なお方ですからな。しょうがないでしょう」

「はい……えっ、そうなんですか?」


 意外な返答だ。

 正直なところこの一か月、お嬢様が繊細だと感じたことなんてなかった。

 むしろ底なしに元気な人だと思ってたのに……


「ふむ、やはり知りませんか……。そうですな、せっかくお菓子もありますし、早めに始めてしまいましょうか」

「始めるって?」

「先ほど申し上げた、お時間頂く用事です。簡単に言えば……あなたの歓迎会ですな」

「えっ!?」


 歓迎会? 私の?

 確かに、用事があるとは聞いていたけど、何とも唐突だ。

 嫌でも確かに、屋敷に入って一月くらいってなると、物凄くちょうどいいタイミングではあるのか……


「まあまあ、まずは付いてきてください。庭師にメイド、使用人一同食堂で待っておりますよ」

「えっ、ええ……」


 なんだろう。歓迎会といえば嬉しいはずなんだけど、さっきのがさっきのだから複雑な気分だ。

 それに、今の言い方だと、多分お嬢様はいないんだろう。

 直接謝れてもいないのに、歓迎会にだけ出席するのはどうなんだろうか。


 あと、庭師のおじいちゃんもいるなら、別件でも怒られそうな気がしてきた。嫌な予感がするなぁ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ