天界の中央に邪神の影
天界の設定みたいなものです。
時間の進みはありません。
この設定が活かされるのは、かなり、かな~~り後です。
天界、そこは地上高度7000mに浮遊する大陸である。
大きさは琵琶湖ほどで地平線を観測できるほど。
なお、地上と天界の間には魔暴域があり、飛行が出来なくなるらしい。
都市は神樹のある場所と地上との転移ゲートのある場所の5か所である。
スレイプニルは東に位置する神樹の名前であり、要塞都市の名前である。
私はそこで産まれ、産まれた場所で英才教育を受けていた。
神樹は4か所あり、それぞれが「痕邪の海」を囲うように位置している。
意図して配置したならば、まるで結界のようだが、数千年生きる者でも当時の事は知らないらしい。
西はマーナガルム、北はヨルムンガンド、南はニーズヘッグ、と呼んでいる。
地上との往来は原則として転移ゲートを用いるとの事だが、このゲートを最後に活用したのは900年前であり、天界側から鍵を開けないと地上の転移ゲートが出現しない仕組みになっている。
地上に生きる多くの人種の寿命は前の世界相応、あるいは魔物の脅威により更に低いので……
つまり、今の地上の人間は天界に行く術を知らないという事である。
むしろ御伽噺とでも思われていかねない。
転移ゲートは直径5kmほどの都市まるごとを機構に組み込まれた巨大な魔法陣である。
それぞれの建物、道、水路などが陣の構成物であり、魔晶石を44カ所に配置する事で起動できる。
陣の内側ではあらゆる飛行ができない。
魔法はそもそも使えず、スキルによる飛行も封じられ、揚力などの力学的な方法を用いたとしても、まるで踏み潰されるかのように不自然な落下をするらしい。
起動方法は悪用を防ぐために秘匿されており天使の中でも一部の者しか知らない。
都市は天界の端、地上が見える場所にある。
都市の半分以上が崖際の外に出ており、陣を構成する物がない場所は足場が無く、地上を望む事ができる。
……足を踏み外せば地上への特急券を得られるだろう…………
なお、魔物たちはこの地を目指さないため防衛のための人員はほとんどいない。
痕邪の海は天界の中央にある黒い淀みである。
かつての邪神の成れの果てであり、その亡骸が変遷したものである。
神樹を襲う魔物はすべて痕邪の海から現れる。
内部へ侵入する事は難しくないが出る事は不可能と言っても良いだろう。
(何故、魔物たちは外に出られるかは謎だが)
内部は迷いの森型の結界になっており、繋がりがめちゃくちゃになっている。
方向感覚を狂わせるものではなく繋がりが狂わされる。
入口から1歩入り1歩引いた先は入口ではなく痕邪の海のどこか別の場所となる。
すなわち、一度入ればどこに繋がるか判らない場所を出口に繋がるまで彷徨う事になる。
何故出る事適わない場所の情報があるかと言うと……
決して帰って来た者がいたという訳ではなく、魔物が迷い込んだ者の遺言を偶然に運んできたからだ。
信用できる情報かは判断できないが、痕邪の海は入ったら出られない、という話の裏付けの一つとして語られている。
「邪神の亡骸……しかし、その成れの果ては迷いの森か……」
「なんだが、きな臭い裏がありそうな気がするわ」
そう一人言ちる。