転生の案内人は天使様!?
プロローグ(その3)
Angels☆Bellで叢リリーを攻略した後におそらく陸穿災害に巻き込まれた?俺はこの世とも思えない空間で目を覚ます。
俺はリリーちゃんルートの攻略で力を使い果たし寝落ちしてしまったようだ。
しかし、急な焦燥感に煽られて目覚めた、いや叩き起こされたような感じがする。
「あれ?ここどこ?」
しっかりと記憶している。
記憶しているはず?いや夢だったのか?いやそんなはずは?
「俺、リリーちゃんを攻略して、いやそれよりも確実に部屋にいたはずだ」
部屋どころか椅子すらない、地面なのかすら判らない面の上に胡坐で座っていた。
「少なくとも俺はこんな変な景色を知らない、いや世界の果てでさえこんな景色ありえないはず」
どう見てもおかしい。
水平線には360度を囲うように朝日のような輝きがあった。
見上げれば幾何学図形が星座図のように宙に浮いていて地面の先でオーロラが揺らめいている。
俺……死んだ?
いやいや、まだ諦める時ではない、リリーちゃんの攻略と関係あるような気がするけど確信もない。
しばらく、あれやこれやと有りもしない事を妄想して悶えていると不意に現れた。
「…………」
何かが意識が及ばないような小さな声を発している。
「おい童いい加減こっち向かんか」
ようやっと声を認知したが邪見に。
「今状況を整理しているんだ邪魔しないでくれ」
と突き放すように言って再び考え込む。
途端に髪を掴み上げて吊り上げられる。
「こっち向け言うとろうがっ!」
「いだだだだ」
ただでさえ中世の僧侶みたいなハゲ方している頭皮が無くなるかと思ったわ。
「痛いな……」
髪へのとんでもない仕打ちをした張本人に文句言ってやろうと振り返って絶句する。
目の前に現れたのは無数の眼が蠢きながら明滅している不可解な暗黒物質が漂っていた。
「うわ気持ち悪ッうべぇ」
言うと同時に蹄のような肉球のようなよく解らない物質に腹を怒突かれた。
SAN値下がりそうな見た目しておいて気持ち悪がられるの嫌がるとかって考えているとこの謎物質が再び話しかけてきた。
「阿の見た目についての失言については一旦忘れてやろう」
こいつ上から目線だ、くそむかつく。
と見上げる姿勢で睨みつけていると。
「阿は天使である」
一旦落ち着こう?天使?いやいや天使のイメージと全然合わない。あそうかあれか、神話時代の天使のことか?一応天使推しとしてはそういった古い文献での知識も持ち合わせているぞ。そうあれは目の集合体として表現されたり複数の鳥の羽を生やしていたり、色々な生物を複合させたキメラのような見た目だったりしていたな。天使というより悪魔と言われた方がしっくりくるような描写がされていた時代があることも知っているが……
ここまでわずか0.02秒、思考の中で早口で言っていると天使と名乗る謎物体が続ける。
「汝に異世界へ渡る権利が与えられた」
異世界に渡る権利?どういうことだ?
異世界転生ものは好んで読んでいるので歓迎しないでもないがいきなり言われてもと思っていると。
「汝に選択肢はない異世界に渡れ」
俺の意思を無視しよるっ。
しばらく沈黙が続いた。
「あの……」
静寂に耐えきれずつい口走ってしまった。
せっかくだし不満を吐き出してやろう。
「俺の時代じゃ天使はそういった邪悪な見た目はしていないんです」
すると天使と名乗る物体の眼がたぶん全部見開いてこちらを凝視してくる。
怖い。
「うむ、そうか阿らは姿形の定義がないでな」
少し間を置いて。
「しばし待っておれ」
そういうと視界が輝きに包まれる。
輝きが晴れると目の前には紛れもない天使の姿が……
おや、これは叢リリーちゃん?
「これでどうじゃ?」
そういうとAngels☆Bellのリリーちゃんそのものの姿となった天使と名乗る謎物質。
これはこれで、初対面の時とは違う理由で絶句していた。
すると天使と名乗る謎物質が戸惑いだす。
「なにか変かの?」
そう言いながら手をもたげて手首で口元を隠すようにたじろぐ。
「ソノフルクサイハナシカタヲヤメテイタダケレバ」
棒読みでそういうと……
もう面倒だから天使さんでいいや。
天使さんは話し方を変えてきた。
「私の話し方がおかしかったと?ではこれでどうですか?」
「そのまま口に指を添えて『天推君大好き』と言ってください」
俺は何を口走った!?
目の前にリリーちゃんがいる衝撃で我を忘れていた。
こいつはさっきまで謎の暗黒物質だったもんだぞ。冷静になれ。
しかし、返事は意外な物だった。
先ほどの指示通りのポーズを取って。
「天推君大好き」
咄嗟に土下座する様にうずくまった。
手は心臓を抑え込むように抱えている。
もはや元が何かなんてどうでも良かった。
タブレットのスクリーンに映るリリーちゃんだってRGBの光の集合体だ。
今さら元の姿がどうだったかなんて気にしなくても良い。
「……尊い……」
過呼吸でかすれながらも小さな声を絞り出した。
「そうかそうか、ようやく私が尊い存在だと認めたか」
尊いと言われ天使さんは調子に乗り出したようだ。
「本題を忘れていましたわ」
はっと起き上がると。
「そういえばそうだった」
正座したまま天使さんを見上げる。
こほんと天使さんが仕切り直すと。
「では、あなたには異世界へ渡っていただきます」
俺は気持ちの昂りを抑えて固唾をのみ込む。
「あなたが渡っていただく世界は」
ごくり。
「魔法や異種族がいる地球に限りなく近い場所です」
やはりか、ファンタジーの定番のような異世界じゃないか。
「あ、そういえば」
ん?
直感が言っている、こいつたぶんとんでもない事を暴露する。
「この世界の天使って今のような感じでしたね」
おいいいいい。最初からその姿できてくれやああ。
心の中で絶叫する。
当の天使さんはてへぺろである。
「最初からその姿なら余計な警戒はしなかったのですが……」
「ごめんて」
最初の時の荘厳な感じはどこにいったのでしょう?
いや、話し方を直させたのは俺か。
「おほん、ひとまずあなたが異世界への転生権を得たところから説明しますね」
どうやらAngel☆Bellでの各キャラクターの最初の攻略者が異世界転生できるのだとか。
しかし、転生させるには一人分の魂では足りずに必要な分を周囲から補填しているのだという。
ん?補填?
補填ってどうしているんだ、と聞いてみると。
対象者を中心にした魂を必要な分だけ陸ごと回収しています、と帰って来た。
あの傍迷惑な災害はこいつのせいかあああ。
そこで気になったのは俺を転生させるのに必要になったリソース量だ。
聞くと「百万人分です」と答えた。
これ東京ほとんどなくなったのでは……?
消費された魂はしっかりと元の記憶を保ったまま別の世界へ転生させたと言われた。
すまん、俺のせいで日本の技術の核心や政治の中枢、海外への通信装置まで犠牲にしてしまったようだ。
「転生一つで迷惑かけすぎでは!?」
「仕方が無いのです、技術が発展しすぎた世界はいずれこういった事をしないと周りの世界を飲み込んでしまうので」
世界を飲み込む?って部分がいまいち把握できないでいると。
「ちなみに地球では二度目になります」
地球の46億年の歴史上で1回、同じような災害が起こったってこと?
思い当たるのはメソポタミアくらいか。
確か遺跡や記録自体は残っているものの実在していた証拠となる遺産などは発見されていないらしいからな。
もしかしたら、同じように陸ごと切り抜かれてしまったとなれば遺産が残っていない事には納得ができる。
後は痕跡が一切無いのにあったと信じられているアトランティスとか。
「ちなみになんとか文明とか言わない?」
「違いますわ、たしかゴリアズミャダリラ帝国とか言ってましたね」
「全然思ってたのと違った!」
しかも発音がいまいちしづらい。
「ほら昔の話とかは関係ないでしょ?」
「確かに」
俺の転生でかけた迷惑の話が気になりすぎて掘り下げすぎてしまった。
やっと本命の転生に関わる話になりそうだ。
スキル選びがやたら長くなったので話を区切ってます。




