ミーティアは、髪の毛を何とかしたい
天界を追放され地上へ墜落してしまう。
墜落した先は龍神の住処であった。
住処の修繕もとい大改造により許しを得て旅に出たのだった。
が………そこで一つ、大きな大きな見落としに気づいてしまったのであった。
ミーティア。
これは龍神に向けて名乗った名前だ。
流星を由来とする。
本名の高原竜成、あだ名でリュウセイと呼ばれていた事も関係あるかな。
しかし、何故かステータスの方の名前がこれで固定されていた。
たぶん最後に龍神から名前を呼ばれた事が影響してそうだ。
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そんなことより、髪!
髪だよッ!!!!
成長するままで一度も切ったことの無い長い髪。
否、天衣無縫のせいで切ろうと思っても切れない髪。
それを持て余すように手癖でいじっていると、目に付いてしまったのだ。
あのッ
綺麗なッッッッ
瑠璃色のッッッッッッ
髪がッッッッッッッッッッッッッッ
「何故で白くなってるのっ!!!!!」
追放された衝撃。
龍神様からの猛攻。
色々あって髪に気を回している余裕がなかったのもある。
今は龍神様の住処から少し離れて人の気配のない。
もちろん、追跡技能や気配察知に魔力探知などなど、スキルフル稼働でここに人が来ない事を入念に下調べしてある。
そんな場所で一人、髪を見て狼狽えていた。
「一体、何時から……」
心当たりはある。
おそらく、魔暴域で揉まれている時、HPが0を下回ってからもダメージを受け続けていた。
それにより、欠損状態が無効になる事により失われない代わりに髪の中の何かが消費されたのだろう。
「禿げるよりはマシだけど…………」
しかし、瑠璃色の髪は譲れない要素だったため、受け入れ難かった。
「うーん………………………………」
「うーーーーーんんん………………………………………………」
「うんーーーーー……………………………………………………………………………………」
「よし、ちょっと試してみましょうか」
長い間に悩んだ末に、やはり譲れなかったので、髪が何とかならないか試してみる事にした。
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結論から言うと――。
「聖力ぱねぇな」
聖力で何とかなった。
といっても何でも出来たわけではなかった。
髪の長さ、髪型、編み込みなんかも可能だった。
でも…………
「髪の色までは自由にならないとは」
そう、髪の色だけには不自由していた。
まったく色が変わらない訳ではないが、どうしても白髪感が抜けないのだ。
老けて色が抜けた感が消えないのだ。
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色々、試した末に――。
清銀の水色に寄せた色にすることで白髪感を抑える事にした。
…………本当は瑠璃色にしたいけど。
「まぁ仕方ないか」
「聖力をもっと上手く扱えるようになれば行けるかな」
と、少しだけ未来への希望を独り言ちる。
ついでなので、ぼっさぼさに伸びに伸びた髪の長さも何とかしてしまおう。
――――。
まず後ろ髪だな。
あんまり長いと掴まれたりして面倒だろう。
と、とかく短くしてみて……
男の子……否、こう中性的なのは私としては…………
長くしたり短くしたり―――。
とりあえず、これくらいで――。
結局は肩にかかるかどうかという長さに落ち着いた。
女の子だと判る長さでかつ戦闘で不利に働かない、そんな調整である。
そして、横髪、といっても旋毛辺りから垂れ下がっている髪でさえ鳩尾あたりまで伸びている。
これはこれで可愛いんだけどね……
やっぱり長すぎるのは色々不利になる場面がありそうだ。
―――。
――――――。
色々試してみたけど――――。
何かしっくり来ない。
あっそうか。
これ前髪と一緒に調整しないとか。
横髪は顔の印象に大きく影響を与えていたのだ。
そのため、前髪が顎まで垂れている状態で調整してもアンバランスさが違和感になってしまっていた。
そうしたら前髪も一緒に調整しようか。
ぱっつん――は何か恥ずかしい気がするな。
何と言うか……こう揃った感じのアウトラインの下でおでこが露出している状態が何か恥ずかしいのだ。
長くなれば…………否、これもちょっと違う。
私が怪談が苦手なせいで、ちょっとそっちの気を覚えてしまう。
長くしすぎるのも違うな……よりホラーな感じになるし何より怠しない感じがある。
そもそも、髪の毛に対する知識が少なすぎるな……
よし、模倣ろう。
やっぱり過去にした美少女ゲームの女の子の髪型を模倣するのが丸い気がする。
前髪の左半分を編み込みながら耳の後ろへ流し、触手ヘアで上から被せる、そして残りの前髪を二つに分け中央は髪束が一つになるようにまとめ右側は耳の上へと流す、右側も同様に触手ヘアを被せる。
触手ヘアは左側は長めに喉仏に届く長さでストレートに右側は耳までの長さで頬の方向に向けて軽く巻いた。
これは星宇宙レクイエムの『青星キラメ』の髪型である。
「おお、これぞ青星キラメちゃん」
青星キラメはもちろん天使のキャラである。
髪の色は水色、つまり今の髪色と同じである。
しかし…………
「おませさん」
そう、この子供ボディに対して髪型が大人っぽすぎるのだ。
「とりあえず保留で」
没にはし難く、保留にした。
次は―――。
長さは揃えるものの、ぱっつんではなく、透き込みを入れてちゃんと髪の隙間から肌が除く。
そして、横髪を下顎の長さでストレートにし、左の一部、左眉にかかる範囲をピン留めで横髪に寄せる。
It is 清楚!これは私の一推しであり、瑠璃色の髪にするきっかけとなった『春風ルリア』だ。
だがこれは………………
気付いてしまった。瑠璃色で無いが故に。
何か違う感というか、残念感とか、そうこの水色のせいで悲壮感を覚えてしまったのだ。
「これは没で……ちょっと嫌な思いをしてしまいそうだ」
そして――――。
前髪は髪束を3つに分け、中央は鼻の上で交差させている。左右は横髪の下に流し込むようにしている。
横髪は上顎までの長さ、頬にかかる程度に抑え内側にカールさせた。
これは直近の攻略対象である『叢リリー』ちゃんの髪型である。
色は違うけども、後ろ髪のシルエットも大体同じなのでほとんどリリーちゃんの髪型と言って差し支えない。
「この髪型が一番良いって何か複雑な気分だな……」
そう思ってしまうのは転生の手引きをしたであろう暗黒物質……じゃなかった、その時は『天使さん』と呼称していた存在を思い出してしまうからである。
あの、私のステータスを見て嘲けていた『天使さん』を……
――――
ええい、あんな物に心乱されても仕方ない。
この髪型で行こう、特にアイデアが無いしな。
元が男だった故に……否、女性としての生であったとしても髪型への関心がなかったかもしれない。
なので、とりあえずはイラストレータ様が可愛いとした髪型に乗っかる外無かったが、それにケチを付けてもどうしようもないからだ。
服――――よし。
髪―――――――色以外よし。
懸念点はない…………ないはずだ。
よし、では行こうか。
「冒険者に成りに」
あ、そういえば一人称が『私』になってたけど、これも変えてみるか。
そうだな……そこで思い出すのは『叢リリー』がボクっ娘だった事を。
よし。
「ボクは冒険者になるぅう!!」
「うぅぉおおおおお!!!!」
人が居ない場所で誰にも届かない……はずの雄叫びを上げる。
この後、待ち受ける『年齢の壁』を頭の中から追い出して――。
髪の毛で遊ぶ回でした。
ここでの最後の髪型がキービジュアルになります。
しばし待たれよ。です。
余裕があれば挿絵が増えたりするかもです。