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地上に流星が落ちた日

天界を追放された私、絶賛落下中!

私は今……


  絶賛、落下中です!!!!


魔法?

無理


スキル?

無理!


翼?

機能しません!!


聖力……

あっなんとかなりそ……

いや!!

やっぱ無理!!!!!


私は!

まだ!!

天使の女の子と!!!

いちゃいちゃできていない!!!!!



見下ろす人影が良すぎる視力のせいではっきり見えてしまうが、それもかなり遠くなってきた。

天界の陸の端、絶壁の崖、転移ゲートを構成する建物や通路、これらを下から見上げる形だ。

「くそ、何で?何故?」

これは事故ではない。

それはメイガスさんの言い放った言葉からも推察できる。

何故私なのか?男の子どもは生かす?

女の子、聖水、まだ取れ……いや、もうそろそろ取れなく……


   あぁそういう事か……


おそらく、これは【追放】ではなく【処刑】なのだな。

どうもこの状況……

この場面でないと行けない理由か……

たぶん、この処刑自体に反対した人が居たな。

邪魔が入らず、私の努力さえも関係ない。

確かに確実な処刑手段なのだろう。

例え子供であれど、簡単には殺すことは出来ない。

剣を振ろうとも斧を下ろそうとも、死ぬまでする間に邪魔が確実に入る。

だから今なのか。


そろそろ、天界の底を過ぎるか。

急に視界が……


上から地上を見た際は地上がはっきりと望めた、それ故にあまり下に()るとは思わなかったが。

海に身を投げた時のように急に視界を暗い靄が覆い尽す。

身体は風により乱雑に振り回され身体が千切れそうだ。

寒い、私自身には体験した事は無いが南極などの凍土を思わせる寒さが身を絞める。

くっ......時折、身を貫く閃光により炭化したような熱みを帯びる。

なるほど、これが()()()か。

魔法は……そこら中から魔力の奔流が来て操るのは無理か。

スキルは……やはり発動しても暴力のような力に流される。

翼を広げて……ぐあぁっ……ダメだ、雷に対して的を広げるようなもんだ。


それからは為すがままに耐えた。

気が遠くなるような時間が過ぎる。


どれだけ揉まれただろう。

上下も解らなくなった。

どれだけ速くなっただろうか。

重力だけでない何らかの力を受けて音速を遥かに超えるスピードに至っている。

身体の表面を蒼い光が覆い尽す。

その光は身体を守るものではない。

音速の空気摩擦、圧縮された空気がプラズマ化した高温の(かまど)だ。

おそらく<天衣無縫>が無かったら一瞬で蒸発してしまうだろう。

それほどの高温に全身が晒されている。


脳のリソースがすべて苦痛に耐える事に割かれている。

今の自分がどの場所にいるのか。

どのようにしてこれからの衝撃に備えるのか。

そんなことさえ考える余裕がない程に。



    私……



    死ぬのかな……



天界での過酷な生活さえ生易しい。

地獄でさえ味わう事はないだろう。

<天衣無縫>が無ければすでに死んで楽になれているだろう。

そんな苦痛を受けながら、しばらく。



    あ……れ…………



ふいに色々、感じなくなった。



   ??????



そういえば、これだけの速さに至っているのに地上が遠い。

遠い?


一つの事に思い至る。

それは走馬灯だ。

私が取得したスキル<クロック1000000>は習得条件が走馬灯を経験する事なのである。

つまり、天界で至らなかった100万倍の世界を体験していた。


いつの間にか感じなくなった熱さによって、ようやく気付いた。


 「質量耐性」を獲得しました。

 「低温耐性」を獲得しました。

 「電気耐性」を獲得しました。

 「魔暴走耐性」を獲得しました。

 スキル<クロック10000>を習得しました。

 「凍結耐性」を獲得しました。

 「雷耐性」を獲得しました。

 スキル<クロック100000>を習得しました。

 「質量無効」を獲得しました。

 「質量無効耐性」を獲得しました。

 「凍結無効」を獲得しました。

 「凍結無効耐性」を獲得しました。

 「雷無効」を獲得しました。

 「雷無効耐性」を獲得しました。

 「暗黒無効」を獲得しました。

 「暗黒無効耐性」を獲得しました。

 「加速変動耐性」を獲得しました。

 「加速変動無効」を獲得しました。

 スキル<クロック500000>を習得しました。

 「力学耐性」を獲得しました。

 「高温耐性」を獲得しました。

 「高温無効」を獲得しました。

 「高熱耐性」を獲得しました。

 「高熱無効」を獲得しました。

 「高熱無効耐性」を獲得しました。

 「熱変動無効耐性」を獲得しました。

 「魔暴走無効」を獲得しました。

 「魔暴走無効耐性」を獲得しました。

 「痛覚耐性」を獲得しました。

 「痛覚無効」を獲得しました。

 「痛覚無効耐性」を獲得しました。

 「窒息耐性」を獲得しました。

 「窒息無効」を獲得しました。

 「窒息無効耐性」を獲得しました。

 「騒音耐性」を獲得しました。

 「騒音無効」を獲得しました。

 「騒音無効耐性」を獲得しました。

 スキル<クロック1000000>を習得しました。



ログがえらい事になってました。


ひとまず、今は考える時間が与えられている。

とりあえず整理すると。

魔暴域で受けた苦痛の要因に対する耐性が『無効耐性』に至るまで。

つまり、一切の影響を受けない段階まで成長したらしい。

あと、露骨に著しいのは<クロック>だろう。

この落下の間に100万に至っている。

余裕があるのはそのおかげだ。


うーん、はて……

少し、実際には0.0001秒にも満たない間だけ途方に暮れた。


現状を打開しないとな。

まずは魔力……(MP 0/2200)

すっからかんだな。

魔暴走とやらの影響か。

魔法を用いた解決は無理か。

次は翼だけど……

健在なのは良いけど、雀の涙かな。

さすがに音速を超えてる段階で広げても影響はなさそうだ。

そもそもSTRが非力すぎて空気圧をちっとも支えられない。


  スキル<音速飛行>を習得しました。


うおっ、急に負担が無くなった。

これなら行けそう?



  って、もうほとんど地上が見えっ。



ひとまず、全力で軌道を地面突撃コースから逸らす。

しかし、対応が遅かったらしい。

角度が緩やかになったものの、速度をほぼ残したまま。



  地面とキスした。




――――

ここはフィンドルム。

白の屋根、赤レンガの壁の建物で統一された美しい街並みが海岸線に広がる港町である。


そこは今、大規模な漁から戻ったばかり漁船により市場が賑わっていた。

漁船越しに海の方を見ている人が多かっただろう。


「あっ、流れ星!」

幼い高い声が響く。

それに気付いた人たちが次々に声の先を見る。


そこには蒼い光の帯が天に伸びる星が見えた。

それは(またた)き。

しかし、消えるてしまうという儚い期待とは違う結果をもたらした。

海面付近で急に海岸線の方へ軌道を変えると水平線を埋め尽くす水柱を上げながら陸に激突した。


突然の暴風。

子供がひっくり返って転がる。

大人たちも踏ん張るので精一杯だった。

漁船は風と波に煽られて大きく揺られている。

陸に激突しなかったのは幸いだろう。


「何が起こった」

「おい、子供がいねぇぞ」

「うわああぁぁぁぁああ」

「こりゃひでぇ、骨折してるじゃねぇか」

「子供全員吹っ飛んだのか」

「おい、治療院に連れてけ」


流星がもたらした暴風によって子供たちが大けがを。

場所によっては建物への被害があったりしていた。

その喧騒を余所に。


「あの流星の落ちた場所」

「あぁ、あそこは龍神様の住まう場所だ」

「なんてこった」

「さすがに不味いな」

町の衛士たちが話していると。

「これは何の騒ぎだ」

「げっ……ごほん、領主様」

「ピッツ、状況を話せ」

「はい、突然流星が飛来、それが龍神様の住処へ落下し、その余波で子供が大怪我、他にも建物の損壊が起こった模様、現在は被害状況を確認中です」

「解った」

そうして、領主様と呼ばれた男は立ち去ろうとする。

「ピッツ、龍神の住処へ調査を行う、人を集めよ」

「御意」


ピッツと呼ばれた衛士の一人は流星の墜落地点へ調査に向かう準備を始めた。


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