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吾妻からの試験

ネトコン12の1次通過しました!

これを機に更新停止状態だった今作の更新を再開します!執筆頑張るぞー└( 'ω')┘ムキッ

「二葉は鹿野さんのことを嫌いになったわけじゃあないわ。でも詳しくは流石に言えないから」


「ならよかった……嫌われたらどうしようかと」


 もしも二葉に嫌われていたとしたら、一葉との距離もほぼ確実に離れてしまうだろう。壁を感じていた今朝から進展が何もなければきっとそうなっていた。いや、違う。そうなったとしたら私がきっと逃げていただろう。それでも嫌な関係になりたくないからと一歩踏み出したことで誤解だったと知れて心の底から安心した。


 しかし問題はまだ解決していない。今はもう2人の意思で入れ替わることはできなくなってしまい、なおかつ時間的に二葉になるのは約二時間後。つまりはゆっくり歩いたとしても帰宅までに二葉が出てくる保証は一切なく話もできないのだ。


 こればかりは仕方のないことではあるけれど、それでも本人になんで避けているのか聞けないのは少々困る。


 SNSでのやり取りでとも思ったが所詮はSNS。直接言うのとではわけが違って、簡単に本音を隠せたり関わりたくないからと無視することだってできる不便さがある。


 そうなるとやっぱり直接聞いた方がいいかもだけど……。


「二葉には……まだ変わらないよね」


「ええ、あと1、2時間くらいはかかるわ。……なるほど、二葉に聞きたいのね」


「よくわかったね」


「まあなんとなくそうだと思っただけなのだけど……そうね、鹿野さんがいいなら私の家で待つ?」


 実にいい提案だけどそれはそれで迷惑がかかりそう。でもここを逃せばいつ話せるかわかったものじゃないし……家に帰ってもやることはないからその話を呑んで、再び一葉たち兼吾妻さん宅にお邪魔することになった。


「吾妻さんただいま」


「おかえりーって、あれこないだの」


 リビングへと連れていかれると、そこには吾妻さんがソファーに寝転がる形でくつろいでいた。


 一葉の声につられてだと思うけど、吾妻さんが顔をソファーから出しこちらに向けて、私の顔を見るや慌てた様子に――なることはなく、まるで家族か親しい人かのようにくつろいだまま話してきた。


 この人には羞恥心というのがないんだろうか……。


「こ、こんにちは。鹿野優です」


「これはこれは、ご丁寧に。吾妻千歳だよ、よろしくね。にしてもなんで優ちゃんがまた?」


 いきなり名前呼びですか。まじですか。距離感も狂ってるんですかこの人。


 という心の声は出さないでここに来た経緯を話した。その間に一葉は私服に着替えてきていた。前も見たけど結構おとなしい印象が強いシンプルな服で、一葉らしいと思える。でも二葉の感性とは合わなそうで苦労してる様子が頭の中で簡単に浮かび上がった。


 多分この間のパジャマは二葉のだな。


「はあ、あのバカ二葉は……よいしょっと。いやあごめんねぇ優ちゃん。迷惑かけちゃって。二葉はああ見えて意気地なしだから。それと一葉と二葉と仲良くしてくれてありがとね」


「い、いえ。困ってる友人を放ってはおけませんし」


「いい友達ができたみたいだね一葉……私は泣けるわ。しくしく」


 ちゃんとした話だからか、吾妻さんはくつろぐのをやめて、私が話しやすいようにリビングテーブルを囲む椅子に座り、対面する形で私も座っていた。一葉は話を聞くのが恥ずかしいのか、入れ替わるまでの間家事をするといって聞かず、せっせとあちらこちらをうろちょろしていた。


 訳アリで吾妻さんのところに居候している一葉たちだけど、こうして話を聞いたりしていると本当の家族と何も変わらない。


「あ、そうだ。まだ二葉になるまで時間あるし、ちょっといくつか質問していいかな」


「なんでしょうか」


「ぶっちゃけ、二葉のことどう思ってる?」


「どうって……友達として消えてほしくはないなぁと」


「うん……それじゃあ質問を変えよう。優ちゃんは多重人格のことをどこまで知っているかな?」


 組んだ手を口元へと、何かのアニメで見たポーズで言ってきたその質問に、私の背筋に悪寒が走った。よくよく考えれば私は多重人格のことを詳しく知っているわけではない。単にゲームとかアニメとか、そういうところの知識でしかない。だからそういう風に聞かれると正直に話していいのか悩む羽目になって。


「……まあ普通そんな反応するよねぇ。別に答えられなかったからって何があるわけじゃないんだけどね。ただ、これは覚えておいて。2つ以上の人格があるとその身体はかなりの負担がかかってる。お互い抱えたくないストレスを擦り付けているからね。だから今みたいになったのもストレスが原因。そしてその原因元は……君だよ優ちゃん」


「え……?」


 少しの間を作り一葉がリビングにいないことを確認して、言ってきたその言葉が私の胸に深く突き刺さる。


 私が原因……? 一体どういうこと……?


 周囲の音が遠くなるような感覚がして、おなかから胸元にかけて不快感がこみあげてくる。

 

「どういうことなのかは私からは言わないよ。これは君に対する試験みたいなものでもあるからね」


「……つまり今の言葉をどういう風に捉えて、今後どんな関わり方をするかは私にかかっていると」


「そういうこと。さて、優ちゃん。いや鹿野さん。君の答え(かんがえ)を聞かせてくれるかな」


 私に対する試験。それに合格しなければ一葉たちと関わることも、二人の悩みの手助けをすることもできなくなる。そう言われているような気がして頭が真っ白に染まっていく。


 でも、関われなくなるのは嫌だ。二人が悩んで助けを求めてきたのに手を差し伸ばせないなんてもっと嫌だ。友達だから。じゃない、一葉だから、二葉だから助けたいんだ。


 でも私が原因というのが分からない。一葉と二葉は何を吾妻さんに話したのか、そして吾妻さんは一体何を思ってそんなことを言ったのか。


 いや、きっと吾妻さんは試験という名目で言っているだけで、本当は私を試しているんだろう。本当に一葉と二葉を想っているのか。二人の悩みを、いつかは消えてしまう人の想いや気持ちを背負う覚悟はあるのかと。もしそうだとしたらきっと私が原因っていうのは。


「私は……私が二人に消えてほしくないからってしていることはいわば延命処置なのは十分理解してます。きっと原因もこれかなって思います。本来は自然と人格が消えてしまうのにそうするってことは二人に負担をかけているようなものですから。でも、それでも……何もしないで終わるより、せめて長くいて本当に消えるその時まで私は一緒にいたいって、たくさんの思い出を作ってあげたいって心から思ってるんです。それでどんなに辛い想いをしても後悔はしません。私がしたいから、幸せにしたいからするんですから」


「なるほど……そっか。優ちゃんは名前の通り優しいね」


「えへへ。それほどでも」


「多分気づいてると思うけど、ごめんね意地悪で試すようなことして。優ちゃんなら二人のこと安心して任せられるよ。まー、一葉も二葉もここ最近優ちゃんの話ばかりだから大丈夫とは思ってたけどね」


 ならなんで試すようなことをしたんだよ。こっちは緊張と重い空気で胃がキリキリして仕方なかったのに! ていうか吾妻さんが力抜いた途端張り詰めた緊張も解けた、これが大人の力だというのか……。まあおかげで胃の痛みも引いてきたからありがたい。


 にしてもこうやって試すほど、吾妻さんは二人のことをよく思っているんだろう。いつ頃からかはわからないけどきっと長い間二人のことを見てきたんだなと想像できる。

 

「ところで()()ぁ~。いつまでそこで隠れて見てるつもり~? 優ちゃん帰っちゃうよ~?」

よく見たら13ヶ月ぶりの更新でした。

この1年で色んな作品を書いてきたので作風変わってないか心配ですが、まぁなんとかなりますよね!

次回は二葉の本音が聞ける話になります。

二葉は優のことが……


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